「ECサイトにチャットボットを導入して、離脱率を下げたい!」
「ユーザーからのお問い合わせ対応をチャットボットで自動化したい!」
ECサイトを運営している事業者なら、上記のように一度はチャットボットの導入に興味を持ったことがあるのではないでしょうか?
チャットボットは便利なツールではありますが、明確な目的を持って導入しないと、なかなか効果を出すことはできません。なぜならチャットボットは導入しただけで効果が出るわけではなく、目的によって設置場所や連携させる機能を考えるべきツールだからです。
本日は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、ECサイトにチャットボットの導入を検討している事業者向けに、詳しく解説いたします。
ECサイトにチャットボットを導入する目的は主に3つ
チャットボット(chatbot)とは、リアルタイムでメッセージをやり取りする「チャット(chat)」と、ロボットを意味する「ボット(bot)」を組み合わせた言葉です。ECサイトに訪れたユーザーからの質問に、自動で返答するプログラムが該当します。
ECサイトの全てのページにチャットボットを表示させることもできますが、常にチャットボットが表示されていると画面デザインに溶け込んでしまい、チャットボットが目に留まりにくくなると考えられます。
そのため、ECサイトにチャットボットを設置する際は、ユーザーが必要とするときに表示させる方がメリハリがつき、チャットボットに気が付きやすくなるため、利用率が高くなることが多いです。
ECサイトにチャットボットを導入する目的は、主に以下の3つです。
目的①CVR向上
目的②業務効率化
目的③ユーザーからのフィードバックを受けるため
それではチャットボットを導入する目的別に、設置場所について解説します。
目的①CVR向上
チャットボット導入により、ユーザーの離脱を減らしてCVR向上につなげることが目的の場合です。
ECサイトを訪れたユーザーが、商品を購入せずに離脱する要因はいくつかあります。特に商品をカートまで入れたにもかかわらず、購入に至らなかったユーザーをフォローすることができれば、売上に直結すると言えます。購入までの不明点を解消できるよう、チャットボットを活用すると良いでしょう。
チャットボットでは主に以下のような場面でフォローができます。
◆チャットボットで対応できること(目的がCVR向上の場合)
・決済サービスのサポート対応
・商品や在庫に関する問い合わせ対応
・色やサイズに関する問い合わせ対応
・配送日や送料に対する問い合わせ対応
主に、ECサイトでの購入に慣れていないユーザーからのお問い合わせをチャットボットが対応し、注文までサポートすることで、CVR向上が期待できます。
ECサイトにチャットボットを設置して、CVRを高めるためには以下のようなシステムと連携するのが良いでしょう。
・商品管理システム
・在庫管理システム
・出荷管理システム
これらのシステムと連携していない場合、ユーザーから「商品の色やサイズ」あるいは「配送日」などに関する質問があった場合、チャットボットが答えられない、もしくはあいまいな回答しかできず、満足度向上にはつながらないからです。
CVR向上が目的のチャットボットの設置場所とは?
CVR向上が目的の場合は、以下のページにチャットボットを設置すると良いでしょう。
・商品詳細ページ
・カートページ
・決済ページ
商品詳細ページにチャットボットを設置する理由は、
・欲しいサイズや色がない
・在庫や再入荷予定の確認をしたい
・もっと詳細な商品情報が知りたい
というユーザーからのお問い合わせに対応するためです。
商品詳細ページにチャットボットを表示することで、上記のようなユーザーが求めている情報を提供できるので、購入への後押しができます。ユーザーが求める商品の在庫がなかった場合でも、代替商品を提案することもできます。
カートページ、決済ページにチャットボットを設置する理由は、商品購入の一歩手前まで来たユーザーが、下記のような理由で注文完了できないケースを防ぐためです。
・ログイン情報が分からない
・クレジットカード決済がうまくできない
・配送日を指定したい
カートページ、決済ページにチャットボットを表示して、上記のようなユーザーをサポートしましょう。特に初回購入のユーザーはサイトに慣れていないと考えられるので、チャットボットでのサポートは有効と言えます。
目的②業務効率化
業務効率化を目的に、チャットボットを導入する場合です。
一日100件以上の注文があるような人気のECサイトでは、商品を購入したユーザーからのお問い合わせも件数が多くなり、個別に対応しようとすると大変です。特に、返品対応や商品交換などはさらに労力がかかります。
しかし、それらのお問い合わせは、似たような内容が多いため、チャットボットに対応させることが可能な場合がほとんどです。それにより、EC担当スタッフの業務効率化を実現することができます。また、営業時間外のお問い合わせについても、チャットボットであれば、24時間365日対応することもできます。
チャットボットで対応できない内容のお問い合わせがあった場合は、スタッフが対応しなくてはなりませんので、チャットボットから有人対応に切り替える機能を備えておけば、顧客満足度を下げずに対応できるでしょう。
また、業務効率化が目的の場合は、チャットボットにインストールする「FAQデータ」の更新を頻繁に行って、正答率を上昇させる必要があります。
業務効率化が目的のチャットボットの設置場所とは?
業務効率化が目的の場合は、以下のページにチャットボットを設置すると良いでしょう。
・FAQページ
・トップページ
FAQページは、ECサイトやサービスに疑問や不安があるユーザーが訪れるページなので、FAQを見ても、回答を見つけることができなかったユーザーがチャットボットに質問することができます。
トップページに配置する理由は、ユーザーが受け取った商品に対して質問がある場合、ECサイトに訪れてすぐにチャットボットが目に入り、利便性が高くなるからです。お問い合わせをしようとECサイトに訪れたユーザーがすぐにチャットボットを見つけることで、チャットボットを利用する可能性が高くなり、お問い合わせ数を減らすことができると考えられます。
目的③ユーザーからのフィードバックを受けるため
ECサイトの場合は、ユーザーからのフィードバックを得る機会が少ないというデメリットがあります。反対に、実店舗で実際に接客した場合、商品や店舗に対する意見・感想を聞くことができます。また、店舗に訪れたユーザーの行動を観察することで、改善点を見つけることもできるでしょう。
アンケートへの協力を依頼するメールを送る、という方法もありますが、積極的に回答するユーザーはそもそもECサイトに対して満足していることが一般的なため、フィードバックではなく良いコメントばかり集まってしまう、という結果になりがちです。
チャットボットに自由入力欄を設けてユーザーがチャットボットに送った内容を分析することで、求める商品や、よくある疑問などの情報を得ることができます。
自由入力欄はカンタンな機能実装に感じるかもしれませんが、選択肢のみのUI(ユーザーインターフェース)に比べて、自由入力された単語からチャットボットが適切な回答を行えるように、AIを搭載して会話の精度を上げる必要があります。
フィードバックを受けることが目的のチャットボットの設置場所とは?
フィードバックを受けることが目的の場合は、以下のページにチャットボットを設置すると良いでしょう。
・商品詳細ページ
・カテゴリーページ
・FAQページ
上記のようなページは、ユーザーが目的の商品を見つけられなかったり、商品に疑問が生じたりしたときに訪れている可能性の高いページなので、ユーザーの求める商品や、疑問をチャットボットを通して知ることができると言えます。
チャットボットは途中から表示されるとユーザーが気が付きやすい!
ECサイトのTOPページや商品ページに訪れたユーザーに対して、最初からチャットボットを表示させるよりも、ページ内で立ち止まっているユーザーなどに対してチャットボットを表示させるべきです。
なぜなら、最初からチャットボットを表示させてしまうと、チャットボットに気が付かないことがあるからです。チャットボットは管理画面で、いろいろな条件で表示させることができます。例えば下記のように設定することが可能なのです。
◆チャットボットの例
・30秒同じ画面に滞在しているユーザーに対してチャットボットを表示させる
・画面スクロールが50%を超えたユーザーに対してチャットボットを表示させる
・一定の行動をしたユーザーに対してチャットボットを表示させる
どのようなチャットボット表示方法が良いのかは、サイトのジャンルやターゲットユーザーなどにより一概に言えませんが、工夫して設置しないとチャットボットの利用率が高まりません。
ただし、FAQページなどは例外です。FAQページは、ユーザーのマインドが回答を探しに行っているので、そのようなページにチャットボットを設置する場合は最初から設置しておきましょう。
チャットボットの種類は主に3種類
チャットボットには以下の3種類があります。
◆チャットボットの種類
①ASP型
②オープンソース型
③スクラッチ型
①ASP型
ASP型(アプリケーションサービスプロバイダ)はクラウド環境を利用するタイプのチャットボットです。3種類の中では費用負担が少ないタイプです。
ただし費用だけで選ぶと、チャットボットの設定を全て自社で行う必要がある場合もないとは言えません。それではチャットボットの機能を使いこなすことができず、本来のパフォーマンスを発揮できない可能性もあるので、費用だけではなく、導入するときや運用中のサポート体制も重視して検討すると良いでしょう。
②オープンソース型
主に海外製が多いですが、チャットボット用のオープンソースが提供されています。自社に技術者がいる場合、オープンソースを利用すればゼロからチャットボット機能を作る必要がないため、開発期間やコストを大幅に圧縮することができます。
ただし、オープンソースには
・カスタマイズをしてしまうと、バージョンアップができないケースもある
・ソースが公開されているため攻撃を受ける場合がある
・重大な問題が発生した場合、責任の所在は自社にある
というデメリットがあります。
このためチャットボットの導入を完全に自社の責任で無料で行いたい、という場合には有力な選択肢となりますが、技術力があまりない企業の場合は、導入は困難です。最近ではプログラムレスのチャットボットもありますが、その場合でも、チャットボットを構築するためには技術力が必要とされます。
③スクラッチ型
自社、もしくは開発ベンダーに依頼して、完全に自社の要望どおりのチャットボットを作る方式です。費用を抑えてチャットボットを導入する方法もある中、あえて多大な費用をかけてスクラッチ型にするメリットは以下の3つです。
◆スクラッチ型のチャットボットを導入するメリット
①在庫システムや顧客システムと柔軟に連携可能
②自社のセキュリティ基準に合わせられる
③自社が指定するAIを使用できる
このように、スクラッチ型は完全に自社の仕様に合わせることができます。しかし、以下のような基本機能であれば①ASP型でも実装可能な場合がほとんどです。
◆チャットボットの基本機能
・ユーザーとの会話機能
・有人対応への切り替え
・会話ログのダウンロード
・FAQデータの更新
・チャットボットデザインの変更
またASP型にもAIを実装しているチャットボットはあるため、多大な費用をかけてスクラッチ型のチャットボットを導入するメリットはあまりありません。
また、開発者が要件通りのチャットボットを作った場合でも、チャットボットデザインや設置場所が原因で利用率が上がらない可能性もあるので、そうなった場合、コストを回収することはできません。
このような理由から、筆者は初めて導入を検討している事業者には、スクラッチ型でチャットボットを作ることはあまりおススメいたしません。
ECサイトに設置するチャットボットのまとめ
自社ECサイトにチャットボットを設置する場合は、まずは費用負担の少ないASP型から始めるのが良いでしょう。無料トライアルを実施しているサービスもあるので、いくつか比較してみることをおススメします。ECにはECのノウハウがあるように、チャットボットにはチャットボット独自のノウハウがあるので、ASP型でも、サポートが手厚いベンダーを選択すると効果が出やすいのではないでしょうか。
自社でチャットボットを作ると、労力も費用もかかることから、まずは安価に提供されているASP型を上手く利用することから始めてみましょう。