店舗での対面接客に比べて、ECサイトでのお客様とのコミュニケーション方法に課題を持つEC事業者様は多いのではないでしょうか。
最近では、さまざまなWEB接客ツールが開発され、ECサイト上での顧客の購買状況や行動履歴などの顧客データを収集するWEBマーケティングが可能となりました。しかし、表情や感情までを読み解くことは難しく、各EC事業者様においてさまざまな工夫をされているかと思います。
東京都・神奈川県を中心に、オーガニックスーパーマーケットを展開し、顧客とのコミュニケーションを重視するビオセボン・ジャポン株式会社の皆さまにお話を聞きました。
※インタビューは新型コロナウイルス対応として、リモート対談、マスク着用、換気といった感染予防対策を徹底した上で実施し、写真撮影時のみマスクを外しています。
<対談プロフィール>
ビオセボン・ジャポン株式会社
経営企画部
部長 北川 亮介 様
EC担当 吉田 晴佳 様
株式会社インターファクトリー
取締役CMO 三石 祐輔(インタビュアー)
国内オーガニック市場の発展のためにフランスより進出。オーガニックスーパーマーケットのパイオニア、ビオセボン・ジャポン
ビオセボン・ジャポン株式会社 北川様(以下、北川様):
ビオセボン・ジャポンはオーガニックを専門に扱うスーパーマーケット事業を行っています。
「Bio c’ bon」は2008年にフランスのパリ市内にて、オーガニックスーパーマーケットとして誕生し、ヨーロッパでは約140店舗以上展開しています。2016年に、日本におけるオーガニック市場の拡大をけん引するため、イオン株式会社とBio c’ bon社の合弁会社としてビオセボン・ジャポン株式会社を設立しました。
麻布十番に日本初上陸1号店としてオープンして以来、現在では東京都と神奈川県を中心に27店舗を展開しており、“鮮度の良い生鮮商品”と“日常使いできるお求めやすい価格”を強みに成長を続けています。(2021年9月末の情報)
▲ビオセボン・ジャポン株式会社 経営企画部 部長 北川 亮介 様
―日本はオーガニック後進国と言われている現状がありますが、御社が発信する「オーガニックを日常に。」というメッセージをもとに、オーガニックを消費者の日常に広げるために行っている施策や活動をお聞かせください。
北川様:
おっしゃる通り、オーガニックという分野では、日本は後進国です。
消費者の皆さまにおいては「オーガニック食品をどこで買えば良いのか?」「どうやって使うのか?(調理するのか?)」「何を買ったら良いのか?」といった3つのお悩みから、オーガニック食品を漠然とよく分からないものだと捉えている方も少なくないのではないかと考えています。
私たちは決して添加物が入っていることがいけない、オーガニック食品でないと体に悪い、といったメッセージを発信したいわけではありません。私たちが目指すものは、「おいしいこと、安全安心なこと、心と身体に心地いいこと」がオーガニック食品に凝縮されていることを皆さまに伝えることだと考えています。
そのためには普段の食事に取り入れていただき、日常から慣れ親しんでもらうことが重要であると考えています。日本だけではなく海外で人気の高いオーガニック食品を入荷することや、初めて店舗に来店されたお客様には積極的にお声掛けをすることで、商品の食べ方や使い方をお伝えし、お客様の日常にオーガニックが浸透するよう心掛けています。
ECサイトを通して購入していただく、実際にお会いできないお客様に対しては、公式SNSやECサイトのコンテンツなどを通じて、生産者様とのつながりや商品の説明などをお伝えすることで、一方的な発信とならないように意識しています。
店舗やECサイトなどの販売形態に応じた取り組みを行っていくことで、先ほど申し上げたお客様の3つのお悩みを1つずつクリアしていくことが私たちのミッションだと感じています。
「おいしいこと・安全安心なこと・心と身体に心地いいこと」お客様とのコミュニケーションを重視し、オーガニックの魅力を伝えるビオセボン・ジャポン。特別感というハードルをあえて上げない取り組みが消費者の日常にオーガニックを浸透させる。「ビオセボンとは」
―御社では外国のオーガニック食品だけではなく、日本で生産されたものも多く取り扱っている印象があります。日本のオーガニック食品を作る生産者様への取り組みもあるのでしょうか。
北川様:
はい、やはり日本のオーガニック市場を発展させるためには、お客様(買い手)だけではなく生産者様(作り手)との関係づくりも必要だと考えています。
例えば、オーガニック先進国であるヨーロッパではナショナルブランドの食品とオーガニック食品の価格を比較した際、1.1倍~1.2倍程度と、あまり価格差はありません。しかし、日本の場合だとおよそ1.5倍~2倍、商品によってはそれ以上の価格差が生まれることがあり、この原因の一つは生産者数の差であると考えています。
国内で生産された有機JAS認証を取得している農産物は、総生産量に対して1パーセントを満たしません。果たして売れるだろうかという懸念を感じ、オーガニック市場への参入を足踏みする生産者様がいらっしゃるのが日本の現状です。
このような背景で、日本のオーガニック市場を発展させていくためには、お客様への情報発信だけではなく、生産者様が安心してオーガニック食品を作ることができる市場作りが不可欠です。鮮度が重要視される生鮮食品を取り扱う生産者様が、安心してオーガニック食品を作るためには、当社が継続的に契約数量の商品をきちんと仕入れることが使命だと思っています。
さらに、店舗やECサイトの事業を拡大していくことによって、新しくオーガニック市場に参入する生産者様が増え、結果的に適正な価格競争が生まれ、お客様にお求めやすい価格でおいしいオーガニック食品をご購入いただく。—このサイクルを日本のオーガニック市場において上手く作用させていきたいと考えています。
▲「作ったオーガニック農産物をきちんと仕入れてくれる」
生産者とビオセボン・ジャポンのこうした信頼関係からおいしくて求めやすいオーガニック食品が生まれる
―店舗と自社ECサイトにおいて、お客様の購買行動などの違いがあれば、お聞かせください。
北川様:
店舗とECサイトにおける、お客様の購買行動の特徴の一つに、お買い上げ点数の差があります。
店舗は「日常的に来店できる」という特徴から、4・5点など比較的少量をご購入いただくお客様が多いのですが、ECサイトでは「せっかく注文をするならば」という理由で、その倍近くの点数をご購入いただくことが多いです。
ビオセボン・ジャポン株式会社 経営企画部 EC担当 吉田様:
また、ECサイトは「商品を自宅の玄関まで届けてもらえる」という特徴から、重たいものをまとめてご購入いただくケースが見受けられます。
その他、直輸入商品など、ビオセボンのECサイトでしか買えない限定商品を購入していただく傾向があります。
▲ビオセボン・ジャポン株式会社 経営企画部 EC担当 吉田 晴佳 様
―先ほど、店舗やECサイトにおいて、お客様とのコミュニケーションを重視しているとお聞きしましたが、リピート顧客の獲得やファンの育成のために行っている施策はありますか。
北川様:
特別なことを行っているつもりはありませんが、ECサイトに来ていただいたお客様ががっかりすることのないようにしようということは、日々部署内でも認識を合わせています。
例えば、テレビや雑誌などのメディアにて紹介された商品が品切れになっていたりすると、ECサイトに来ていただいたお客様の期待を裏切ってしまうことになりますし、もうECサイトに来ていただけないかもしれません。
また、梱包作業においても商品の詰め方によってお客様にご迷惑をおかけしてしまうことがあってはいけないと考えています。商品を直接お客様に手渡しできるわけではないのですが、一人一人のお客様の食材を取り扱っているという気持ちは、常に持つべきだと意識しています。
先ほども申し上げたように、ECサイトでもお客様とのコミュニケーションは非常に重要視しており、その他にも、Instagramなどの公式SNSの運営やサステナブル方針の制定および活動にも注力しています。
最近では、オーガニックとサステナブルの相関関係を非常に強く感じており、当社SNSをフォローしていただくお客様は、同様にサステナブル商品もフォローしていらっしゃることが多く感じます。そのため、決してオーガニックというワードだけに固執するのではなく、多方面からビオセボンを知っていただけるような導線づくりを心掛けています。
▲ビオセボン・ジャポンが運営する公式Instagramでは
店舗情報だけでなく季節に合わせたオーガニック食品のレシピなども紹介しており、
コメントするファンも多い
時代のニーズに応えるため、アーリースタートを切れるECシステムを検討
北川様:
元々、社内では2022年~23年にECサイトをオープンさせる想定で計画を徐々に進めていました。
しかし、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症拡大によって市場の需要が変わり、外出を極力控えているお客様が増えたため、早急な対応が必要であると感じ、オープン計画を前倒しにして、ECシステムを検討しました。
ECシステムを検討する段階で重要視していたことは、早くECサイトをオープンさせてほしいというお客様の声に応えるために、アーリースタートを切ることでした。ebisumartは自動アップデートの恩恵を受けられるASPと独自カスタマイズができるパッケージの両方のメリットを兼ね備えているECシステムとして、システム担当者が以前より注目していたため、真っ先に採用候補として挙げさせていただきました。
最終的には3つのECシステムでの比較となりましたが、弊社が作成するRFP(提案依頼書)への回答と予算感が合っていた点を評価させていただき、選定いたしました。
―機能では、締め業務に関する管理機能についてカスタマイズされたとお聞きしました。
北川様:
はい、現状では少数精鋭で出荷作業を行わなければならず、これを実現するためには弊社の在庫システムとしっかり連動させておく必要がありました。
弊社は複数の店舗が主動するかたちでオペレーションを行っていますので、店舗の在庫とも合わせていかなければなりません。1日あたりの出荷数設定を可能とした上で、締め作業を行う部分に関してはこだわりを持って実現できたカスタマイズ機能の一つだと考えています。
サイトオープン後に再認識した、店舗と自社ECサイトを併用するビオセボンファンの存在
北川様:
ECサイトをオープンした際、公式SNSでは「オープンを待っていました!」とおっしゃっていただくお客様が想像以上に多く、反響が大きかったのを今でも覚えています。
おかげさまで2021年6月にオープンして約3か月、当初計画していた月別売上や会員数などの目標項目は全てクリアしており、成長を続けています。当初の想定では、店舗にご来店いただくことが難しい遠方のお客様がユーザーの多くを占めるのではないかと想定していましたが、実際は首都圏に住む、特に店舗の近くに住んでいらっしゃるお客様の登録が非常に多かったことが驚きでした。
先ほどの店舗とECサイトの特徴でもあったように、肉や魚介、野菜などの生鮮食品は店舗で購入し、米や飲料などの重たいものやストック品はECサイトで購入するという使い分けをされているお客様が多いようです。
もちろん、今後は遠方のお客様に向けた施策も積極的に行っていきたいと考えています。初めてビオセボンのECサイトへ来ていただいたお客様に向けて、オンライン限定のセット商品なども豊富に取りそろえていきたいと思っています。
▲オンラインストアでは、ビオセボン人気のオーガニックオーツミルクを
セットで購入することができる。シーンに合わせたオンライン限定セットも人気だ
オーガニックを日常使いする社会を構築するため、店舗とECサイトの両輪で事業拡大を目指す
北川様:
2021年6月にECサイトをオープンして約3か月で見えてきた、運用面や商品の品ぞろえ面などの課題は、このアーリースタートの段階で解決してしっかりと力を蓄えていきたいと考えています。
また、「オーガニックを日常化に。」という私たちの掲げるミッションにおいては、店舗においてもEC事業においても、まだまだ全国的に展開できる伸びしろがあると考えています。商品の品ぞろえやECサイト限定サービスを拡充し、店舗とECサイトの両輪で事業を構築していきたいと考えています。
最近では、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」として、オーガニック市場の活性化を推奨しています。すでに、オーガニック先進国と呼ばれるヨーロッパでは、化学農薬の使用及びリスクの低減とオーガニック農業の拡大に関する目標を掲げており、やはり国の総力を挙げての推奨が必要不可欠であると考えています。
オーガニック食品を食べるということは、健康な生活を目指すという認識を持たれる方が多いと思いますが、その他にも生物多様性を保全したり、水や土、大気などの環境を保全したりという側面もあり、昨今注目されているサステナブルやSDGsとの相関性も非常に高いと言われています。
私たちはビオセボン・ジャポンとしてEC事業を拡大することで、日本のオーガニック市場を活性化させていきたいと考えています。
SDGsや環境を重視する国内外の動きを受け、2021年5月に農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定。オーガニックへの取り組みも期待される
ビオセボン・ジャポン様
お忙しい中 ありがとうございました。
(取材日:2021年9月)
PROFILE
会社名:ビオセボン・ジャポン株式会社
本社:東京都中央区
SITE PROFILE
サイト名:「Bio c’ Bon」オンラインストア
https://www.bio-c-bon.jp/
ビオセボン・ジャポン株式会社様が運営するオーガニックスーパー「Bio c’ Bon」のオンラインストアです。「オーガニックを日常に」をミッションに掲げ、サイトでは、店頭でも人気が高い量り売りバルクをはじめ、輸入品やオンライン限定セットなど、ビオセボンでしか買えないオーガニックアイテムを豊富に取りそろえております。当サイトではPWAの実装、ポイント・送料の独自要件適用、関連システム連携を行いました。
「ebisumart」について
提供会社:株式会社インターファクトリー
https://ebisumart.com
「ebisumart」はECパッケージとASPの両システムのメリットを兼ね備えており、常に最新・最適化されたクラウドコマースプラットフォームです。
サイトリニューアルやオムニチャネル、BtoB-ECなど、業界業種問わず累計750サイト以上の構築実績があり、お客様のニーズを迅速に反映しながら、EC事業の成長をお手伝いさせていただきます。