ECサイトを作って、自社の製品やサービスを広げたいと考えている方は、まずECサイトのさまざまなビジネスモデルについて調べているのではないでしょうか?
ECサイトが世に出て20年近くが経過し、単なるECサイトから、複数のショッピングモールを連携して、チャネルを拡大するビジネスモデルから、リアルとオンラインの垣根を超えたO2Oや、オムニチャネルなど複雑なシステム連携が必要なビジネスモデルも生まれています。これらのビジネスモデルが生まれた背景は、売上のさらなる拡大と効率化のためです。
しかし、どのECサイトのビジネスモデルにも、メリットとデメリットがあります。
本日は、ECサイトを各ビジネスモデルのメリットとデメリットをebisumart(インターファクトリー)でWEBマーケティングを担当している筆者が詳しく解説いたします。
ECサイトにおける6種類+1のビジネスモデルを解説
まず、ECサイトのビジネスモデル6種類と1つを下記に定義してみました。
①ECサイト
②実店舗(リアル)からECサイトを展開
③モール連携
④O2O
⑤オムニチャネル
⑥越境EC
EDI
7種類としなかったのは、最後に解説するEDIが、ECサイトとしてはなじみが薄いことと、システム色が強いため、”+1”という形にさせていただいております。それでは各ビジネスモデルについて解説いたします。
①ECサイト
ECサイトの強みは、全国に商圏を広げられることです。また実店舗を持つ必要がないため、経費も圧縮できるので、すぐにビジネスを開始し、利益を上げやすいのが強みです。
一方で、自社ECサイトの場合は、集客を行う必要があるため広告費を使いますし、WEBマーケティングのノウハウが必要になってきます。
集客力をカバーできる方法としては、楽天やAmazonなどのショッピングモールに出展する方法もあります。しかしモール出店は大きな集客力を持つ反面、モールに多額の出店料や広告費を払わなければならず、コストがかかります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
自社ECサイト | ・自由にECサイトを作れる ・自由に広告活動ができる |
・自社で集客の必要あり ・集客費用がかかる |
楽天等のショッピングモール | ・強力な集客力がある | ・出店費用が高い |
これからはじめる方は、自社ECサイトをつくるのが良いのか?楽天やAmazonへの出展がよいのか?悩むポイントだと思います。そして自社ECサイトの場合の悩みが
「自社でECサイトをつくるには、ITの知識もないし~、難しそうだ・・・、それに高そう。。」
と思われている方も多いと思いますが、実は自社ECサイトを始めるのは、非常にカンタンです。※興味あるかたは下記記事で詳しく解説しております。
ECサイト構築の解説記事:【全方式】ECサイトの作り方|個人から企業ECサイトまで
ASPを使えば無料ブログを作る程度の知識で、すぐにECサイトを開始することができます。月額数千円ではじめることが可能ですから自社ECサイトを構築する手間は、楽天などのショッピングモールと変わりがありません。
自社ECサイトかモール出店かの判断基準は以下の点になります。
・WEBマーケーティングのノウハウがあるなら自社ECサイト
・自社のブランディングを大切にしているなら自社ECサイト
・ECサイトの知識が全くないならショッピングモール
・手厚いサポートが欲しいのならショッピングモール
ECサイトの経験が少ないうちは、楽天などのショッピングモールからスタートし、そこでECの運営のコツをつかみつつ、将来的には自社ECサイトに移行するのが良いでしょう。なぜなら全くノウハウがなくECサイトの運営は困難だからです。
②実店舗(リアル)からECサイトを展開
実店舗の製品の商圏を全国に広げることで、売上は飛躍的に伸ばすことができます。例えば、地方の銘菓や名物で有名な商品であれば、知名度があり最初から集客もカンタンです。
このように、知名度やブランディングがあれば店舗の商圏を超えて、全国に販路を拡大し、売上を拡大することは容易です。ただし、その際、注意する点は、ECの売上が上がったため、店舗の売上が下がる”カニバリズム”です。
店舗担当者「ECサイトが立ち上がったから、実店舗に来てくれる人が減った!」
事業部が異なれば、こういった問題はよくありますから、店舗やECサイトを限定的にとらえるのではなく、会社全体の売上としてとらえる必要があります。
そして、すでに実店舗での知名度やブランディングがある場合は、自社ECサイトの弱点である集客の問題がないため、楽天やAmazonによるショッピングモールよりも、自社ECサイトの方が良いでしょう。
③モール連携(ECサイトやショッピングモール(楽天など)を複数同時に展開)
ECサイトの売上が1億を超えるようになると、さらなるチャネルの拡大して、売上の拡大を検討するフェーズにはいります。それが自社ECサイトと、ショッピングモール、あるいは楽天とAmazonを同時に運営するのが、モール連携です。
下記の図をご覧ください。自社ECサイトを含めて、下記のようにチャネル(販路)を増やすビジネスモデルこそ、モール連携です。
◆モール連携
モール連携を行えば、チャネルを拡大し売上を拡大できるメリットがある一方で、下記のデメリットが存在します。
◆モール連携のデメリット
・各モールへの出店料コストが高い
・オペレーションが大変
ですから、複数モール出店による売上拡大見込みと、モールを束ねる、モール連携のシステムを導入する必要があります。
またモール連携には、システムのリスクヘッジができるメリットもあります。下記はニトリの例ですが、ニトリは2015年6月に大きなシステムトラブルがあったため、自社ECサイトが7日間停止しました。
しかし、ニトリはショッピングモールにも出店していたため、損失を半分程度で止めることができたのです。
ニトリのシステム障害の記事:ニトリのリニューアル失敗から得られる教訓。リスク分散としての多店舗展開は重要だ
このようにECサイトの多店舗展開は、売上の拡大とともに、システムトラブルのリスク分散を行うことができるのです。
④O2O
O2O(オンライン トゥー オフライン)は、ECサイトから実店舗に誘導する施策や仕組みのことです。(ECサイトに限った話ではありません。)下記にO2Oの事例をあげます。
◆O2Oの事例
・ECサイトと実店舗のポイントを連携
・スマートフォンで、各店舗の在庫状況がわかる
・クーポンコードをWEBで発行し、店舗で使う
など、店舗へ新規顧客の誘導を促進し、売上を拡大するのがO2Oです。ECサイトの店舗を運営する場合のデメリットは、「ECサイトに売上がとられる」ことですが、そのデメリットを克服しています。
◆O2Oのデメリット
・その効果が限定的なこと
クーポンなど発行すると、その期間は売上が増えますが、終わってしまうと売上が下がります。だからといって年中クーポンを発行するのは景品表示法に触れますし、効果も持続しません。
O2Oが短・中期的施策とすれば、長期的に売上を拡大するビジネスモデルが、次に紹介するオムニチャネルです。
⑤オムニチャネル
オムニチャネルとは、莫大なコストをかけて顧客情報、在庫情報、ポイントなどすべてのデータベースを統合(もしくは連携)させ、実店舗とECサイトの垣根を完全になくして、顧客満足度をあげて、リピーターに販売促進させる究極のビジネスモデルです。
◆オムニチャネルの事例
・ECサイトで購入した製品を実店舗で受け取る
・実店舗にない商品を、店舗内でECサイトで購入させる
・実店舗で買った商品を、オンラインや電話から返品処理する
つまり、オムニチャネルとは購入場所・受け取り場所、返品の自由なビジネスモデルであり、ユーザーの利便性が高く、顧客満足度が高まり、リピート率あげて、売上が伸ばします。
しかし、究極のビジネスモデルのオムニチャネルにもデメリットが生じます
◆オムニチャネルのデメリット
・実店舗とECの部門でセクショナリズムが拡大し、社員のモチベーションが下がる
具体的に説明しますと、下記のようなことがよくおきます。
実店舗担当の不満「店舗内にない商品を、ECサイトで買わせても、私の評価につながらない!」
つまりオムニチャネルで、顧客の利便性が高まり、売上が拡大する一方で、実店舗の売上が下がり、ECサイトの売上比率が高まり、実店舗社員のモチベーションが下がったり、あるいはECの売上が拡大しつづけると実店舗の閉鎖などが起こります。そうすると、社内で店舗とEC部門のセクショナリズムが拡大してしまうのです。
このようなことがないように、企業のトップが「オムニチャネル宣言」を行い、全社の方向性を社員に浸透させ、またオムニチャネル担当は、店舗とECサイトの双方を束ねる形をとってセクショナリズムを無くさなくてはなりません。
⑥越境EC
越境ECとは、ECサイトに多言語対応を行い、日本から全世界に商圏を広げて売上を拡大する施策です。しかし越境ECはECサイトを英語や中国語対応しても、大きな課題があります。
◆越境ECの課題
・海外集客が難しい
・物流や配送に時間や手間がかかる
・相手国になじみのある決済が使えない
例えば、中国向けに越境ECを構築するとなると、中国のメインの検索エンジンは百度(バイドゥ)であり、Googleではないため、SEO施策には、現地法人であることが百度のSEOには重要な要素であったりと、日本で常識的なSEO対策が講じれません。
また、中国国内ではクレジットカード決済は一般的ではなく、決済方法も考慮せねばなりません。物流や配送に手間や時間がかかるものネックです。
越境ECは、多くの需要を取り込める反面、自社のブランディングや認知度が海外においてもないかぎり、難しいビジネスモデルで、カンタンではなく、日本国内では越境ECに成功している会社はまだ、限定的です。
EDI
EDIとは、Electronic Data Interchange の略語で、電子データ交換のことです。特にBtoBで使われるシステムのことです。もう少しわかりやすく説明すると、企業同士の取引には、発注書、請求書、納品書など一つのやり取りに際しても多くの文書やコミュニケーションのやり取りが発生します。
しかし、多くの取引のある企業同士が、いちいちこれらの文書を起こすのはお互い大変です。そこで双方にEDIを導入し、それらの文書をデータベースに構築し、すべて自動化することがEDIです。
EDIもECサイトの一種ですが、世間には馴染みが少ないため、ビジネスモデルを分けて紹介しております。
◆EDIの課題
EDIの歴史は古いため、レガシーシステムが多く普及しています。いまだに多くは公衆交換電話網を使っている会社が多く、インターネットEDIや、あるいはECサイトへのリプレイスが課題になっています。
また、EDIは取引先の企業同士で双方に同一の規格を導入することで業務効率を上げる仕組みです。しかし、例えば自社とA社間で導入した規格が、自社とB社間で導入する規格と同じとは限りません。つまり、複数の取引先との間でEDIを導入する際は、各取引先に合わせた規格でEDIを使用しなければいけないのです。(※下記イメージ)
このような場合の管理体制を事前に敷いておかなければ、業務効率の向上のためにEDIを導入したのに、かえって手間が増えるだけで業務が非効率化してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
ECサイトのビジネスモデルのまとめ
本日は6種類+1のECサイトのビジネスモデルを紹介させていただきました。企業の成長によって、最適なモデルは変わってきますし、時代の流れによっても変わってきます。
しかし、本日紹介したように、どのビジネスモデルにもメリットもあれば、デメリットもありますから、ECサイトのビジネスモデルのを検討する際には、参考にしてください。