ECに携わっている人なら「ECマーケティング」という言葉をよく目にすると思います。インターネットで調べてみると、サイトによって説明が情報がまちまちで、ECマーケティングをしっかり説明しているサイトはあまりありません。
では、ECマーケティングとは経営学者や企業のマーケティング担当が言うマーケティングと何か違うのでしょうか?
ピーター・ドラッカーは、「マーケティングの目的は、販売を不要にすることなのである。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客にあった製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ」と紹介しています。
つまり、「マーケティングとは顧客を理解し、顧客に選ばれるようになるための様々な施策を計画して実行すること」と言えると思います。
では、ECマーケティングとはどのようなものなのでしょうか?ECはインターネットの世界のビジネスですから、ドラッカーが定義するマーケティングに、「EC固有の要素を考慮し、ECに適したマーケティング」を行う必要があります。そのEC固有のマーケティング要素を下記の3つに定義してみました。
(1)全世界が商圏
(2)PC・スマートフォンでの接客
(3)アクセスデータ分析
本日はこのEC固有の3つのマーケティング要素について、株式会社インターファクトリー(ebisumart)でWEBマーケティングを担当している筆者が解説いたします。
1.全世界が商圏
当たり前ですが、マーケティングはECが存在しない時代から研究されていますので、実店舗を前提にマーケティングが研究されていた歴史があります。実店舗の場所を中心とした商圏に効率的に販売する方法や、代理店を使って広域に販売する方法が研究されてきました。
しかし、ECはインターネットでアクセスさえ出来れば、世界を相手に商売をすることが可能です。つまり、全世界が商圏になったということです。ターゲットを国内としても商圏が大きく広がったことになります。
例えば、昔はお取り寄せ商品は、百貨店などの大手小売店で取り扱ってもらうことで全国に広めることが出来ました。良い商品であっても百貨店などの大手に取り扱ってもらえなければ、世の中に知られることはありませんでした。
もし、自社努力だけで自社製品を全国に広めようとしても膨大な広告費用が発生しますので、予算がない場合は、地道に商圏を広げていく努力をするしかありませんでした。
しかし、現在はECを容易に立ち上げることが可能となり、零細企業でもECサイトで全国展開できるようになりました。また自社のサイトを英語や中国語に対応し、越境ECを実現させれば海外の市場も視野に入れることができます。
しかし、越境ECで世界に市場を広げていくには、言語対応だけでなく
① 海外への物流・配送
② 商品金額の通貨レート
③ 国ごとに異なる文化・マーケティング手法
を考慮する必要があります。
単純に英語表記や中国語表記をしたからといって、いきなり海外からの注文が増えるわけではありません。しかし昨今、日本製品の品質の高さはあらゆる分野で世界中に注目されており、日本語表記のサイトでも海外から注文するユーザーがいることがTVに取り上げられています。世界にマーケットを向ければ、日本国内ではさほど注目されない製品もニーズがある可能性があるのです。
下記は、日本から海外へ向けた通販サイトを運営する企業の流通総額推移を示したグラフですが、これを見てわかる通り、年々海外への出荷が加速してきています。
◆日本から海外へ通販サイトを展開している企業の流通総額推移
このように、ECサイトを持つことで、大手企業に限らず世界中をマーケットにする事が可能になってきました。
2.PC・スマートフォンで接客
ECサイトではPC・スマートフォンを介して接客することになります。実店舗では直接お客様と会話をして接客をしますので、接客マニュアル、POP、店舗内における顧客導線による商品配置などが、マーケティング施策として取り上げられてきました。
ECマーケティングでは、直接的にお客様の様子を見る事はできませんので、当然サイト内のページ遷移とユーザビリティが極めて重要になってきます。
PC・スマートフォンのユーザービリティーの向上
企業がWEBサイトをリニューアルするのは、単にサイトが古くなってきたからリニューアルするのではなく、ユーザービリティーを向上させCVRの向上につなげるという明確な目的があるのです。
そしてECサイトを、PCにはPCに、スマートフォンにはスマートフォンに最適なデバイス対応することにより、製品注文画面までの画面遷移をユーザーに負担をかけずスムーズにすることができます。
例えばわかりやすい例として、スマートフォン対応はPCに比べて以下の点が重要になってきます。
① スマートフォンサイトはページ数を少なくまとめる
スマートフォンはデバイスの特性上、利用環境が様々であり、通信環境が常に良いとは限りません。またスマートフォンはページを遷移するよりも、下に下にスクロールされやすいデバイスです。したがってスマートフォンサイトはPCよりもページ数を少なくする分、コンテンツを1ページに詰め込んだ方が、ユーザーの負担をかけずに情報を伝える事ができます。
② 文字数を少なくする
スマートフォンはPCに比べると画面が小さく、上下のスクロールが極めて速い傾向にあります。多くの文字テキストを用意しても、PCに比べて読まれない傾向があります。ほとんどのユーザーが斜め読み、あるいは特定のキーワードにしか興味をひきません。
したがって、ECサイトをスマートフォン対応する場合は、PCの文言をそのままスマートフォンに移植するのは厳禁です。強調したいキーワードを太字にしたり、情報に関連するピクチャーを使ってユーザー上下のスクロールを止めて、コンテンツを読ませる工夫が必要になります。
もし、レスポンシブ構築など構造上あるいは運営上の理由により、やむを得ずデバイス共通のテキストにする場合は、以下のように、通常はテキストを隠しておき任意で展開できるようにするのが良いでしょう。(アコーディオンUI)
◆アコーディオンUIでコンテンツを展開
参考:ヨドバシ.com
ニュースサイトなどでよく見る「続きを読む」のような仕様も、同様の理屈になります。
③ 文字の入力負荷が高い
可能ならば、スマートフォンの入力フォームは最低限の項目にしぼり、ユーザーの入力負荷を下げる取り組みが重要です。見込度の低いユーザーほど入力フォームからの離脱が大きいです。
下記は、デジタルマーケティング支援サービスを展開している株式会社ニュートラルワークスが独自に行った調査結果ですが、お問い合わせ・資料請求フォームの入力中の離脱理由で最も多いのが、「入力必須項目が多かった」となっており、「個人情報の入力」「手入力が面倒」と続いています。
◆お問い合わせ・資料請求フォーム入力中の離脱理由
出典:【調査レポート】75.5%がフォーム入力中に離脱を経験。その理由は?入力フォームにおける課題を調査(株式会社ニュートラルワークス)
これはPCにも言える事ですが、スマートフォンの方が文字入力負荷が強いため、この傾向は強くなります。
またEFO(Entry Form Optimization 入力フォーム最適化)という施策はユーザーのフォーム入力をサポートしてくれますので、フォームの離脱を下げるのに有効です。
EFOツールの導入から入力項目数の見直しも含めて、ユーザーの負担を少なくすることでカート離脱率を防ぎます。
ユーザビリティ向上のまとめ
このようにPCにはPCの、スマートフォンにはスマートフォンの最適な見せ方があり、各デバイスの特性を把握した上でお客様を接客することで、企業はECのマーケティングを行っていくのです。
ただしBtoBのWEBサイトは、お客様が法人であることからPCによる閲覧がほとんどです。スマートフォンからの流入があまりないので、スマートフォン対応の重要性はそれほど高くありません。スマートフォン対応する前に、Googleアナリティクスなどで自社のデバイス別流入数を分析しておきましょう。
それでは次にインターネット広告を説明いたします。
インターネット広告
ECのマーケティングの代表的な広告として、様々なインターネット広告が存在し、広告の種類によって効果が高い広告や、目的も変わってきます。ここでは代表的なインターネット広告を解説していきます。
・SEO対策
厳密に言うとSEO対策とは広告ではありません。Googleの検索エンジンの動向を汲み取って自社商品の購買に紐づく「キーワード」を検索結果の上位にする対策です。
また当然Yahoo!の対策も必要ですが、Yahoo!JapanはGoogleの検索エンジンを使っているので、GoogleのSEO対策はYahoo!の対策にもなります。※検索結果が完全に同じではありませんが、ほぼGoogleと同じ検索結果となります。
例えば、大手英会話スクールのSEO対策の場合、Google検索で「英会話教室」あるいは「英会話スクール」といったキーワードの検索結果に自社のサイトが上位にくるように施策することは、売上に直接結びつきます。
昨今、Googleの検索エンジンの質の向上により、ユーザーにとって「本当に良いコンテンツ」が提供できないとSEO対策ができなくなってきています。2024年の現在では、SEO業者にお金を払って自社サイトを特定のキーワードで検索結果の上位にするのは極めて困難です。SEO業者もGoogleの検索エンジン施策ができないため、廃業する会社が増えています。
単に順位を上げるという取り組みではなく、「自社製品がユーザー課題の何を解決できるのか?」を明確にし、検索エンジン対策ではなく、ユーザーにとって120%満足できるコンテンツを提供することが最新のSEO対策になっています。
昨今、よく「SEOは文字数が〇文字以上書かないと上位に行かない!」と言われておりますが、それも間違いです。Googleの検索ロジック自体が、人間がコンテンツを読みとる感覚にかなり近くなってきています。ただ単に文字数だけ増やしてキーワードを不自然にいれても、検索順位を上げることはできません。
本当のSEOとは人々の生活を豊かにする事、具体的に言えば「あるキーワードで検索してきたユーザーの課題を120%解決してあげるコンテンツを用意すること」が真のSEOです。
ですからSEO施策とはGoogleのロジックを分析することではなく、ユーザーの課題を解決する事なのです。
・リスティング広告
あらゆるインターネット広告で、最も獲得効率が高いインターネット広告がリスティング広告です。リスティング広告とは、GoogleとYahoo!の検索結果上部などに広告を出す事です。PPC広告やSEMとも言われますが同じ意味です。
昨今、PCよりもスマートフォンでインターネットを見る人の割合が増えており、スマートフォンの画面がPCに比べて小さいことによる検索画面の広告スペース面の減少や、アプリを利用するユーザーが増えたため検索する人が減っており、リスティング広告の成果も年々下がってきています。しかし今現在もインターネット広告で最も獲得単価が低く効果のある広告である事は間違いありません。
インターネット広告を何から手をつけていいのかわからない会社は、まずリスティング広告に予算の大半を投入します。それはリスティング広告が「獲得が計算できる広告」だからです。獲得単価が1万円の製品があった場合、「今週は100万円予算とったから、100件は注文がとれるだろう」といった具合に、リスティング広告は他の広告よりも獲得予測にブレが少なく、成果予想が立ちやすいのです。
広告代理店にリスティング広告をお願いすると、相場としては予算の20%が運用費用としてとられますので、会社の規模が大きくないうちは、自社でリスティング広告を行うとよいでしょう。もちろんリスティング広告の運用は簡単ではありませんので、しっかり学習する必要があります。
・ディスプレイ広告
Yahoo!やブログ記事などに出てくるバナー広告です。バナー広告はPUSH型の広告であり、PULL型(ユーザーが情報を取りに行く広告)のリスティング広告と比べると数が取れる広告ではありません。ですから新製品を認知させるのに向いている広告です。
認知させることには向いているメディアですが、獲得効率はリスティング広告の10分の1以下です。※筆者の感覚値です。
しかし、ディスプレイ広告にも例外はあります。それはリマーケティング(自社サイトに訪問した人に対してのみ、バナー広告を出す仕組み)と言われる手法で、リスティングに次いで数の取れる施策です。ほとんどの企業はリスティング広告とリマーケティング広告を行って問い合わせ数を増加させています。
インターネット広告のまとめ
SEO、リスティング広告、ディスプレイ広告なとのインターネット広告をバラバラに実施するのではなく、マーケティング戦略全体に組み込んでいきWEB広告を展開していかなくてはなりません。
戦場をイメージしていただくとわかりやすいのですが、戦車や歩兵隊が各々ばらばらに戦場を動いては勝てる戦にも勝てなくなります。勝てたとしても勝つまでの時間がかかりすぎてしまい、効率が良くありません。
ですから本部の戦略に従って各隊が動くように、インターネット広告においてもマーケティング施策全体の中にインターネット広告を入れてPlanしなければなりません。
マーケティング施策を立案するにあたり、インターネットには最大の利点があります。それはデジタルだからこそ取得できる膨大なデータからお客様の分析を行うことができる点です。それではつぎにアクセスデータ分析について解説します。
3.アクセスデータ分析
マーケティングは、顧客セグメントに対してリサーチし、リサーチ結果を元にマーケティング理論を利用して、具体的なマーケティング施策を計画します。それに対してECマーケティングでは、アクセスログなどのデータを分析し、マーケティング施策を検討していくのです。
歴史的にマーケティングは少ないデータから推論することが求められてきましたが、デジタル時代になり測定できるデータが格段に増えております。ECサイトではGoogle Analytics(GA4)などのWEB解析ツールで、高度な顧客行動分析ができるようになりました。
「関西からのアクセス数が多い」
「どのページが平均で何秒見られているのか?」
「どのようなページ遷移をして、問い合わせに至ったのか?」
「どのサイトを見て、自社サイトで注文するに至ったのか?」
など、アクセス解析ツールを使えばあらゆるデータを取る事ができます。しかしデータはただのデータに過ぎず、ここから仮説を導き出しActionして効果検証をしていくプロセスをとらないとデータの意味はありません。
昨今は、高価なデータマイニングツールを導入すれば高度な分析を全てツールが行ってくれますので、マーケティングも年々進化してきていますが、意外に見落とされがちなのがお客様の生の声です。
マーケティングの精度を高めるためには、デジタルデータで仮説をたてつつ、顧客インタビューを行って仮説が正しいのか検証し、マーケティング戦略を立案していくことで、デジタルデータ資産を最大限に活かす事ができるのです。
ECマーケティングのコツは「初回購入」をどうやって成功させるか?
ここまで、抽象的な話として「マーケティング」と「ECマーケティング」の解説をしてきました。しかし、ECのマーケーティングで最も大切なコツとは何でしょうか?
それは、初めてECサイトを訪れたユーザーに対して「初回購入」をいかに成功させるか?という点に尽きます。なぜなら現在は
・Amazon
・楽天市場
・Yahooショッピング
・ZOZOTOWN
など、有名ECサイト(競合)が多数存在し、多くのユーザーがこれらのECサイトで買い物するため、なかなか一企業が作るECサイトではユーザーは購入してくれません。そんな状況で、自社のECサイトに来てくれたユーザーが、商品の注文時に
「クレジットカード番号入力がエラーになる」
「どうやって注文するかわからない」
という要因などで、初回購入に失敗し離脱すれば、二度と自社サイトで購入してくれなくなります。しかし、逆に初回購入に成功すれば、再びリピーターとして利用してくれる可能性があり、売上を伸ばすことにつながります。
◆初回購入の失敗と成功の違い
初回購入失敗==>ユーザーは二度と買い物をしてくれない
初回購入成功==>リピーターになってくれる可能性あり
つまり、初回購入の成功を積み上げることで、年間を通してみると大きな売上の違いとなり、ECサイトのマーケーティングにおいては初回購入を成功させることが最も重要なのです。
◆初回購入を成功させるための施策例
・初回購入者限定のクーポンを配布
・注文時にチャットを設置し、購入を上手くできないユーザーのアシスト
・決済手段を広く提供する
・配送日時を指定できるようにする
ECのマーケーティングにおいて、多くの有名ECサイト担当者はこのことを意識して、日々初回購入を成功させるための施策を考えており、この点はECのマーケーティングを把握する上で最も大切な要素となります。
まとめ
このようにECマーケティングにおけるマーケティングとの最大の違いはインターネット環境である事ですが、ECマーケティングもマーケティング活動の中の1つにすぎません。
ECマーケティングを実行するには、目先のテクニカルなインターネット施策を実施する前に、コトラーやドラッカーが言うマーケティングを理解したうえで、ECの独自性を考慮し、全体視点で計画することが重要です。そして、計画したECマーケティングをもとに、最適な施策を実施していくことが、成功するECマーケティングといえるでしょう。
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