新規開拓に効く「製造業のマーケティング手法」9つの要点を解説

製造業におけるマーケティングでは、どれほど優れた技術や高品質な製品を保持していても、ただ製品を開発しているだけでは新規顧客の獲得や事業成長にはつながりません。

自社や製品の存在を顧客に見つけてもらい、その技術的価値を理解してもらった上で、継続的な接点を構築する組織的な仕組みづくりが必要不可欠です。

そうした成果を生む仕組みを構築するため、現在の製造業マーケティングにおいては主に以下のような「9つの手法」が活用されています。

◆製造業で活用できる9つのマーケティング手法

① 展示会で製品や技術を直接見せながら見込み顧客を獲得する
② Webサイトで製品や技術の情報を発信し問い合わせにつなげる
③ SEO・コンテンツマーケティングで顧客の課題から自社を見つけてもらう
④ Web広告で特定の製品や技術を探す顧客にアプローチする
⑤ SNSで製品や展示会の情報を発信し継続的な接点を作る
⑥ 動画で製品の動きや使い方を視覚的に伝える
⑦ ウェビナーで専門的な技術情報を伝えながら見込み顧客との接点を作る
⑧ メールマーケティング・MAで見込み顧客との接点を継続する
⑨ カタログ・ホワイトペーパー・技術資料で検討に必要な情報を届ける

また、これらの各種マーケティング施策を中長期的に継続するためには、情報発信の根幹となる「製品データ」を常に正確かつ最新の状態に保持し続ける管理体制が欠かせません。

自社Webサイト、製品カタログ、展示会パネル、営業提案資料など顧客との接点が増えるほど、製品情報を効率的に一元管理し、すべての媒体で正しいデータを供給できる基盤づくりが重要となります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、製造業における効果的なマーケティング戦略について、実際の先進企業事例や製造業で成果を上げる9つの具体的マーケティング手法を、製造業のマーケティング担当者様に向けて分かりやすく解説します。

製造業のマーケティングにおける3つの企業事例

まずは、戦略的なマーケティング施策の導入によって、見込み顧客の獲得数や新規案件金額の増加といった具体的成果を出している製造業3社の成功事例を紹介します。

事例① ヤマハファインテック株式会社:製品の価値を明確にして展示会のリード数が5倍に

ヤマハファインテック株式会社は、自社が開発した超音波式ヒートシール検査機「ULTRASONICA(ウルトラソニカ)」を既存のシール検査機市場へ投入するにあたり、競合他社が既にひしめくレッドオーシャン市場へ「最後発プレイヤー」として参入するという厳しい課題に直面していました。

そこで同社は、市場環境や顧客のニーズを調査・分析した上で自社が提供できる独自の差別化価値を整理し、「超音波=音の波」というヤマハグループならではの認知度と強みを生かして「音のヤマハが作った超音波検査機」という明確なブランドメッセージを打ち出しました。

さらに、「音でしか見えないものがある」という印象的なタグラインを設定し、製品の内部機構や技術的優位性を直感的に理解できるフル3DCG動画を制作するなど、認知拡大施策を多角的に展開しました。その結果、業界展示会で獲得した見込み顧客の獲得数が従来の5倍に跳ね上がるという成果を達成しました。

本事例で重要なのは、製品の高度な技術仕様やスペックをそのまま伝えるのではなく、市場や顧客課題を分析した上で「自社ならではの独自の価値」として構築して発信する点です。

製造業マーケティングにおいては、単に技術力が高いことを誇るだけでなく、その技術が顧客にどのようなメリットをもたらすのかを誰もが理解できる言葉とビジュアルで定義し、広告や展示会といった顧客接点へ落とし込むことが成功条件となります。

出典:ヤマハ株式会社「『NIKKEI BtoBマーケティングアワード2022』でヤマハが初受賞」

事例② 山洋電気株式会社:マーケティングと営業の連携により案件創出金額が6億増

山洋電気株式会社は、冷却ファン、サーボモータ、無停電電源装置(UPS)などを開発・製造・販売する大手電気機器メーカーです。同社では、継続的に新規案件を創出し続けるため、マーケティング活動で獲得した見込み顧客を営業部門へつなぐ「マーケティング・営業連携プロセス」の抜本的改革を推進しました。

まず、展示会や技術セミナーに加え、自社Webサイト、SNS、公式YouTubeチャンネルなど複数のチャネルから見込み顧客を多角的に獲得します。その後、ターゲット層に応じたメールマガジンによる情報提供やインサイドセールスを通じて顧客の具体的導入ニーズや検討時期をヒアリングし、商談化の確度が高い案件についてプレセールスを実施した上で営業部門へスムーズにバトンタッチする一連のプロセスを構築しました。

このような組織的なプロセス改革によって、2022年度から2023年度にかけて、新規案件創出件数は50件から118件へ約2.4倍に増加し、新規案件創出金額は1.5億円から7.5億円へと「約6億円増(5倍)」という成長を遂げました。

同取り組みは、BtoBマーケティングにおける優れた成果と構造改革が評価され、「日経クロストレンド BtoBマーケティングアワード2024」のプロセス改革部門賞を受賞しています。

本事例が示すのは、マーケティング施策で見込み顧客を獲得して終わるのではなく、その後の継続的な情報提供、顧客ニーズのヒアリング、そして営業担当者への引き継ぎまでを「一連のシームレスなパイプライン」として全体設計することの重要性です。

特に高額・複雑な製品を扱う製造業においては、導入検討から商談・契約締結に至るまでに営業担当者による専門的な提案や対面フォローが不可欠となるケースが多いため、マーケティング施策と営業現場の連携体制を築くことが売上最大化の鍵となります。

出典:Web担当者Forum「山洋電気のBtoBマーケ改革で、新規案件創出金額が5倍に! その秘訣とは?」

事例③ 株式会社ミスミグループ:YouTube動画で顧客接点を大幅に拡大

機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy(メビー)」を展開する株式会社ミスミグループ本社は、サービスの認知度拡大と初回利用ユーザーの獲得に向けて、YouTubeを活用した「動画コンテンツマーケティング」を展開しました。

同社では当初、認知獲得の手法としてオンラインウェビナーを実施していましたが、1回あたりの参加者数が伸び悩みやすく、多岐にわたる顧客の業界・用途に合わせて多種多様なコンテンツを量産することにも限界があるという課題を抱えていました。

そこでアプローチを転換し、meviyのコア機能、最新のアップデート情報、実際のWeb操作手順、設計データのアップロード方法などを短時間で直感的に理解できる解説動画やショート動画を制作し、公式YouTube等で継続的に配信しました。その結果、従来のウェビナーと比較して接触ユーザー数は12.2倍、サービスの初回利用ユーザー数は5倍に増加しました。

本事例では、単に流行に乗って動画コンテンツを配信すること自体を目的にするのではなく、「顧客が知りたい製品・サービスの本質的な特徴や実際の操作感」を顧客目線のコンテンツとして分かりやすく提供し続けた点が高成果につながっています。

専門性が高く構造が複雑になりがちな製造業の製品・サービスにおいては、文章や営業担当者の口頭説明だけでなく、動きや実際の操作手順を「動画」で視覚的に伝える手法が強力なマーケティングの武器となります。

出典:ミスミグループ本社「日経クロストレンドBtoBマーケティング大賞2024『コンテンツ部門』部門賞を受賞」

製造業と他業種のマーケティングの違いは「技術の伝え方」と「顧客接点の作り方」

製造業におけるマーケティングであっても、顧客のペルソナや課題ニーズを把握し、自社の製品やサービスの価値を届けるという基本的なマーケティングフレームワーク自体は他業種と共通しています。

しかし、特にBtoBを中心とする製造業においては、提供する製品スペックや要素技術の専門性が高いことに加えて、営業担当者や技術営業による専門的な説明・提案、ならびに展示会などの対面における顧客接点が購買意思決定において決定的な役割を果たします。そのため、製造業マーケティングの現場では、特に「技術の伝え方」と「顧客接点の作り方」の2点を意識した戦略設計が求められます。

製造業においては、主に以下のような特有の構造的特徴が見られます。

◆製造業のマーケティングの特徴

観点 製造業で見られる特徴 マーケティングで意識すること
製品・技術 専門的な仕様や技術情報が多い 顧客の課題や用途に置き換えて伝える
説明・提案 詳しい説明や個別の提案が必要になることがある 営業・技術担当者との連携を考える
顧客接点 営業や展示会など対面での接点も重要 Webとオフラインを組み合わせる
情報発信 複数の部門や媒体で製品情報を利用する 正確で最新の製品情報を共有できる状態にする

製造業においては、自社製品の優れた性能をそのまま説明するだけでは、顧客側が「それが自社の製造現場や製品開発におけるどの課題解決に役立つのか」を正しくひも付けて理解できないケースが発生します。

そのため単に「どのような技術・設備を保持しているか」というメーカー視点の発想だけでなく、「その技術によって顧客のどのような具体的な課題を解決できるのか」「どのような用途に最適なのか」というベネフィット視点へと分かりやすく伝えることが成功の鍵となります。

このように「難解な専門用語や技術仕様を、顧客が日々抱えている切実な課題や具体的な活用用途へ置き換えて発信する」というアプローチは、SEO対策やWebサイト構築、コンテンツ制作を進める上でも重要な基本原則となります。

また、専門性や導入金額が高いBtoB製造業の製品においては、Webサイト上の情報閲覧だけで検討から最終的な商談・契約締結までが完結することは稀です。営業担当者による提案や、展示会といったリアルなオフライン接点も活用しながら、Webと対面を断絶させることなく、スムーズにつなぎ合わせる顧客接点設計が不可欠です。

既存の対面営業や展示会出展といった従来のマーケティング活動に対して、Webサイト、メールマガジン、Web広告などのデジタル施策を効果的に掛け合わせるという思考法によって、それぞれの顧客接点の弱点を補い合い、機会損失を最小限に抑えることができます。

そして、Webサイト、総合カタログ、展示会パネル、営業提案書など顧客とのタッチポイントがマルチチャネル化して増えるほど、それぞれの媒体で掲載されている製品仕様や価格データの「整合性」が企業の信頼性を左右するようになります。

社内のあらゆる関係部門が常に正確かつ最新の製品マスタデータを迷わず参照できる環境を整えておくことも、製造業マーケティングを精度高く推進するための強固な土台となります。

製造業で活用できる9つのマーケティング手法

製造業で活用できる代表的なマーケティング手法としては、以下の9つが挙げられます。

◆製造業における9つのマーケティング手法

① 展示会で製品や技術を直接見せながら見込み顧客を獲得する
② Webサイトで製品や技術の情報を発信し問い合わせにつなげる
③ SEO・コンテンツマーケティングで顧客の課題から自社を見つけてもらう
④ Web広告で特定の製品や技術を探す顧客にアプローチする
⑤ SNSで製品や展示会の情報を発信し継続的な接点を作る
⑥ 動画で製品の動きや使い方を視覚的に伝える
⑦ ウェビナーで専門的な技術情報を伝えながら見込み顧客との接点を作る
⑧ メールマーケティング・MAで見込み顧客との接点を継続する
⑨ カタログ・ホワイトペーパー・技術資料で検討に必要な情報を届ける

それぞれの役割や活用方法について解説します。

手法① 展示会で製品や技術を直接見せながら見込み顧客を獲得する

リアルな業界展示会は、製品の現物・実機、サンプル品、あるいは自社独自の加工技術などを来場者へダイレクトにお披露目できる強力なオフライン・マーケティング手法です。

専門の営業担当者や技術者がその場で対面説明できるため、Webサイトの画像やカタログテキストだけでは伝えきれない複雑な構造や技術的優位性を深く理解させることができます。

また、展示ブースでの来場者とのリアルな対話を通じて、自社製品に対する反応だけでなく、「顧客が現在現場でどんな課題に頭を悩ませているのか」「どのような仕様の製品や代替技術を探しているのか」といった生の情報を直接ヒアリングできる点も展示会の大きなメリットです。

日本の製造業向けにおける代表的な大規模展示会としては、東京ビッグサイトやインテックス大阪等で開催される「ものづくりワールド」が挙げられます。

本展は機械要素技術展、設計・製造ソリューション展、製造業DX展などの専門展示会群で構成され、各種部品、生産設備、IT・DXソリューションなどの先端製品・技術が一堂に出展されています。同展は年間を通じて東京、大阪、名古屋、福岡の4都市で定期開催されています。

◆ものづくりワールドの様子(第28回 ものづくりワールド 大阪)

ものづくりワールドの様子

出典:ものづくりワールド公式サイト

ただし、展示会マーケティングは単に出展して名刺を数多く回収して終わる単発のイベントではありません。獲得した大量の見込み顧客を実際の商談へつなげるためには、会期終了後のスピード感あるアフターフォロー体制までをあらかじめプロセス設計しておくことが重要となります。

◆展示会後の主なフォロー例

・製品カタログや技術資料を送付する
・Webサイトの製品ページや導入事例へ案内する
・メールで新製品やセミナーなどの情報を届ける
・関心度の高い見込み顧客を営業部門へ引き継ぐ

展示会を出展して終了する「点の施策」で終わらせず、Webサイト、メール、対面営業活動と密に連携させることで、中長期的な商談・案件化へと実を結ぶ顧客接点として活用できます。

手法② Webサイトで製品や技術の情報を発信し問い合わせにつなげる

製造業における公式Webサイトは、単に会社概要や製品ラインナップを掲載しておく「会社案内」にとどまらず、見込み顧客が自社の技術や製品を知り、他社比較・検討を行い、最終的に問い合わせや見積もり依頼へと踏み切るための重要なデジタル顧客接点です。

特にBtoBの新規開拓においては、顧客が自社の営業担当者と直接接触する前段階で、まず公式Webサイトを閲覧して企業の信頼性や製品スペックを精査するケースが大半を占めます。

そのため、単なる型番や物理スペックだけでなく、「自社のどんな用途に適合するのか」「自社の抱える課題をどう解決してくれるのか」といったユーザー視点のベネフィット情報まで網羅しておくことで、顧客側が自社との適合性を判断できるようになります。

例えば、直動案内機器・機械要素部品大手のTHK株式会社では、会員登録ユーザー向けに電子カタログ、2D・3D CADデータ、取扱説明書、FAQなどをWeb上でワンストップ提供しています。さらに、自社製品の多様な産業分野における導入事例や最新の技術情報を発信するWebコンテンツを豊富に用意しており、顧客の選定作業や技術的な情報収集をデジタル上で支援しています。

◆THKの製品使用事例ページ

使用事例ページ(THK株式会社)

出典:THK株式会社

Webサイトに掲載すべき主な情報には、以下のようなものがあります。

◆製造業のWebサイトに掲載したい主な情報

・詳細な製品・サービススペック・各種データ
・保有技術や得意な加工方法・施工プロセスの紹介
・業界別・課題別の導入事例・導入効果
・製品カタログ、CADデータ、技術資料のダウンロード機能
・選定時に生じるFAQ
・明確な問い合わせ・見積もり依頼・サンプル請求への誘導導線

公式Webサイトは、SEO、Web広告、SNS、YouTube動画といったあらゆるマーケティング施策の最終的な受け皿として機能します。検索や広告から流入した顧客が必要とする情報へ直感的にたどり着けなければ、離脱を招きその後の問い合わせや商談にはつながりません。

一方、取り扱い製品数が膨大であったり、仕様変更や型番改廃が頻繁に発生する製造企業においては、Webサイト上に掲載している大量の製品情報を常に正しく更新することが重い業務負担となります。

ホームページ、営業提案ツール、販促カタログなどマルチチャネルで製品情報を参照する製造業だからこそ、元となる製品情報をデータベースで一元管理し、常に全社で最新マスタを参照できる統合環境を整えることが重要となります。

手法③ SEO・コンテンツマーケティングで顧客の課題から自社を見つけてもらう

SEO・コンテンツマーケティングは、顧客が日々の実務や課題解決のために検索エンジンで検索するテーマに合わせて、技術解説記事や導入ガイドコンテンツを発信し、Google等の検索結果から自社Webサイトへの流入を中長期的に獲得する手法です。

製造業のコンテンツSEOにおいて特に注意すべき落とし穴は、「自社が使っている専門技術名称や製品型番」と「顧客が実際に検索窓に入力する検索ワード」は必ずしも一致しないという点です。

例えば、特定の加工技術や専門パーツを探している見込み顧客であっても、最初からその特定の技術名称や型番を知っているとは限りません。多くの場合、「機械の軽量化を図りたい」「加工時間を短縮したい」「不良率を下げたい」といった、自社が現場で直面している具体的な課題・お困りごとから解決策を検索しています。

そのため、SEO施策においては製品名や技術名といった直接キーワードだけを対策するのではなく、顧客がどのような悩みや用途から検索行動を起こすかを洞察し、その疑問・課題にズバリ回答するコンテンツを制作・提示することが重要となります。

◆顧客の購買検討フェーズに応じたコンテンツ例

製造業コンテンツマーケティングのイメージ
顧客の関心 コンテンツ例
課題を解決したい 「●●を軽量化する3つの手法」「●●工程の不良率を半減させる対策」
技術を比較したい 「●●加工と●●加工の精度・コスト・短納期比較」
製品を選定したい 「失敗しない●●の選び方」「用途別スペック適合表」
技術について知りたい 専門技術の徹底解説、用語辞書、トラブル対応FAQ
導入後をイメージしたい 業界別導入事例、工場改善インタビュー、ビフォーアフター事例

出典(画像):筆者作成

製造業においては、難解な専門技術そのものを単に説明するだけでなく、その技術を「顧客が解決したい課題」へと置き換えて発信することが重要です。

SEO・コンテンツマーケティングは、出稿期間が終了するとアクセスがゼロになるWeb広告とは異なり、一度公開した記事コンテンツや技術ガイドがWebサイト上に蓄積され続け、中長期的に安定して見込み顧客を集客し続けてくれる点が強みです。

ただし、コンテンツを公開して即日に検索順位や問い合わせ数が跳ね上がるわけではないため、中長期的な施策として継続的に取り組む必要があります。

また、記事公開後も掲載されている製品スペックや技術情報が最新の状態に保たれているかを定期確認し、仕様変更があれば修正しなければなりません。そのため、コンテンツの運用と並行して、元となる製品マスタ情報を全社で正確かつ効率的に管理できる体制を整えておくことが不可欠です。

手法④ Web広告で特定の製品や技術を探す顧客にアプローチする

Web広告は、短い準備期間で見込み顧客との接点を構築したい場合に有効なデジタル手法です。製造業においては、特定の製品名、専門技術名、あるいは明確な課題キーワードを自ら検索しているユーザーに対してダイレクトに広告表示できる「検索連動型広告(リスティング広告)」が費用対効果を高めやすいアプローチとなります。

例えば、「画像検査装置」「精密放電加工」「耐熱産業用センサー」など、ニーズが明確なキーワードで検索したユーザーの検索結果トップに広告を表示させ、該当する製品LPや問い合わせフォームへダイレクトに誘導します。

実際に、東芝情報システム株式会社においては、展示会へ来場できない遠方の顧客層へ向けて自社の風向風速計IoTセンサー「anemolink®-2D」を訴求するため、検索リスティング広告を戦略的に運用することで、Webサイトへのアクセス流入と新規問い合わせ件数を確保する施策を展開しました。

引用:東芝デジタルマーケティングイニシアティブ株式会社「SEO対策でお問い合わせ数・お見積り数を増加させ、売上に貢献!」

ただし、上記東芝の事例資料内でも言及されている通り、Web広告は出稿を継続する限りコストが発生し続けるという特性があります。また、対象となる検索キーワードの市場ボリュームが小さすぎたり競合入札が激しかったりすると、期待通りの費用対効果が得られないケースも存在します。

したがって、短期的な即効性を求める施策としてはWeb広告を活用しつつも、中長期的には前述のSEO対策や自社Webサイトのコンテンツ拡充を進めるなど、バランスの良い施策の掛け合わせが成功の秘訣となります。

Web広告の種類について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

関連記事:ECサイトの基本的な7つのWeb広告と優先順位の解説

手法⑤ SNSで製品や展示会の情報を発信し継続的な接点を作る

SNSは、新製品のリリース情報、最新の独自技術、出展する展示会・セミナーの開催情報などをタイムリーかつ継続的に発信し、見込み顧客や既存顧客とのエンゲージメントを深めるマーケティング手法です。

自社Webサイトの解説記事やYouTube動画のURLを投稿内に添付し、より詳細な情報ページへと流入させる導線としても機能します。

例えば、大手電機メーカーの三菱電機株式会社では、FA分野の公式SNSアカウントを運用しており、XやFacebookなどを通じて最新製品の特長や展示会出展情報などを発信しています。

◆三菱電機FAのFacebook投稿

三菱電機FAのFacebook投稿

出典:三菱電機FA Facebook公式アカウント

製造業においては、SNSで以下のような活用法が考えられます。

◆製造業におけるSNSの具体的な活用例

・新製品・新技術・特許取得のリリース情報を紹介する
・展示会やウェビナーの出展・開催情報を事前告知・リアルタイム実況する
・自社Webサイトで公開した技術解説記事や導入事例コンテンツを紹介する
・実際の製品動作、加工プロセス、製造現場の裏側をショート動画・画像で臨場感をもって伝える
・展示会で名刺交換した来場者へ向けて事後に関連コンテンツを継続発信し、記憶の風化を防ぐ

ただし、SNSは取り扱う製品の性質やターゲット層によって適不適が分かれます。

特に専門性が高いBtoB製品においては、SNSの投稿単体だけで直接問い合わせや成約まで完結させようとするのではなく、あくまで「認知獲得」や「ブランドへの関心を維持するためのタッチポイント」として割り切り、自社Webサイト、解説動画、展示会へと顧客を誘導・つなぎ合わせる運用が適しています。

手法⑥ 動画で製品の動きや使い方を視覚的に伝える

製造業は、大型産業機械の複雑な動作メカニズム、工場設備の実際の操作画面、高度な金属加工前後のビフォーアフターなど、「テキストや静止画だけではなく、実際に映像で見てもらうことで理解できる情報」が多いため、各種動画コンテンツとの相性が良い分野です。

前述の三菱電機FAでは、Webサイト上に動画専用ポータル「Media Library」を設けており、動画を「製品紹介」「導入事例」「サンプル加工」「操作説明」「展示会実演」などのカテゴリに分かりやすく分類して公開しています。

単に製品の外観をプロモーション映像として見せるだけでなく、購入検討や実際の操作に役立つ具体的な使用方法や加工実演までを映像コンテンツ化してWeb上で活用している事例です。

◆三菱電機FAのMedia Library

三菱電機FAのMedia Library

出典:三菱電機FA「Media Library」

製造業の動画マーケティングにおいては、大がかりなプロモーション映像だけでなく、製品の実機デモンストレーション、日常のメンテナンス手順、技術原理の解説、顧客のインタビュー動画、展示会での実演映像など、顧客の導入検討における疑問や不安を直接解消する実用的なコンテンツを動画化することが有効です。

YouTube等の動画プラットフォームで公開した映像コンテンツは、自社のWebサイト記事、製品詳細ページ、メールマガジン、さらにはSNS投稿内へも埋め込んで二次利用できます。動画を独立した単発施策として捉えるのではなく、WebサイトやSEO、SNS施策を補強するマルチメディア要素として組み込んで活用することで相乗効果を生み出します。

手法⑦ ウェビナーで専門的な技術情報を伝えながら見込み顧客との接点を作る

ウェビナーは、オンライン会議システムや配信プラットフォームを活用してインターネット上で技術セミナーを開催し、自社の専門技術、業界の最新動向、現場課題の解決アプローチについて詳しく説明するマーケティング手法です。

参加者が日本全国どこからでも気軽に参加できるため、展示会や対面セミナーでは接点を持てない遠方の見込み顧客へもアプローチできます。

製造業のウェビナーにおいては、単なる自社製品の売り込みプレゼンに終始するのではなく、技術解説、業界の法改正対応、製造現場の効率化といった「顧客が抱える具体的なお困りごと」をメインテーマとして企画することが参加者を引きつける鍵となります。

パナソニック コネクト株式会社では、「なぜ現場に情報が伝わらないのか?製造業のための情報共有DXのご提案」というテーマでオンラインウェビナーを開催しました。製造現場が日々の業務で直面している情報共有の課題、DX推進の要点、ならびに課題解決に役立つ関連ソリューションの導入事例などを分かりやすく紹介しています。

参考:パナソニックコネクト「なぜ現場に情報が伝わらないのか?製造業のための情報共有DXのご提案」(2026年8月20日開催)

このように、ウェビナーは顧客が関心を持つ技術的課題をテーマに掲げて価値ある情報を提供し、その課題を解決するための最適な手段の一つとして自社製品・サービスを提案することで、見込み顧客獲得コンテンツとして機能します。

手法⑧ メールマーケティング・MAで見込み顧客との接点を継続する

展示会での名刺交換、Webサイトからの資料ダウンロード、ウェビナー参加などで獲得した見込み顧客に対して、メールマガジン等を通じて役に立つ情報を継続的に届ける手法が「メールマーケティング」です。

特にBtoB製造業においては、Webサイトから資料請求や問い合わせをした顧客であっても、その場で商談に至るわけではありません。導入検討期間が数か月に及ぶことも珍しくないため、新製品情報、最新の技術論文、業界導入事例、次回ウェビナーの案内などを定期的に配信し続けることで、顧客の検討タイミングが訪れるまで自社との信頼関係と接点を維持することが重要となります。

保有する顧客リストの数が増大してきた際には、一連のメール配信や顧客の属性管理を効率化する「MA(マーケティングオートメーション)ツール」の活用が効果的です。

MAツールを駆使することで、顧客の属性やWebサイト上での過去の閲覧行動履歴に基づいてリストを細かくセグメント分けし、顧客一人一人の関心度に合わせたパーソナライズメールを自動配信したり、意欲が高まったタイミングで営業担当者へ引き継ぐ仕組みを構築できます。

◆代表的なMA・マーケティング支援ツール

SATORI
Webサイト上の行動履歴などをもとに見込み顧客へのアプローチを支援する国産MAツール

HubSpot Marketing Hub
CRMと連携しながら、メールやフォーム、キャンペーンなどを管理できるマーケティングツール

Adobe Marketo Engage
メール配信や顧客のセグメント化、育成プログラムなどに対応するMAツール

カスタマーリングス
顧客データの統合・分析から、メールやLINE、SMSなどを使ったマーケティング施策まで行えるマーケティングプラットフォーム

hachidori
LINEやWebチャットなどに対応したチャットボットツール

ただし、MAツールを導入しただけでマーケティング自動化が達成されるわけではありません。

「どの顧客に対して」「どのタイミングで」「どんな解決情報を届けるのか」というシナリオ設計をあらかじめ社内で設計しておくことが重要です。

手法⑨ カタログ・ホワイトペーパー・技術資料で検討に必要な情報を届ける

BtoB製造業の購買プロセスにおいては、製品のスペック情報、適合条件、技術パラメーターなどを網羅した製品カタログ、ホワイトペーパー、詳細な技術資料を用意し、顧客の検討フェーズに合わせて適切なフォーマットで届けることが不可欠です。

特にBtoB取引では、Webサイトを閲覧している担当者自身が購入を決定するのではなく、社内で比較検討や稟議を行うフローを経るため、社内検討をスムーズに通過させるためのPDF資料の存在が重要となります。

◆製造業で活用できる主な資料

資料 主な役割
製品カタログ 全製品のラインナップ、主要な特長、サイズ・外形寸法、標準仕様一覧などを分かりやすく伝える
ホワイトペーパー 業界の技術トレンド、現場のお困りごとの原因分析、失敗しない選定ノウハウなど課題解決情報を解説する
技術資料 超精密な仕様書、2D/3D CADデータ、ミルシート・強度試験データ、取扱説明書・施工マニュアルなどを提供する

これらの資料は、Webサイト上からダウンロードさせる仕組みを整えることで、見込み顧客リストを収集するトリガーとして機能します。

ただし、すべての資料ダウンロードに対してフォーム入力を必須化する必要はありません。製品選定に直結する基本カタログや一般的な仕様書など、顧客が今すぐ確認したい情報までフォーム入力で遮断してしまうと、離脱や機会損失を招く恐れがあります。

資料の目的に応じて「無料オープン公開」と「フォーム入力必須」を使い分けることがポイントです。

また、製品カタログや各種技術資料に記載するスペック数値や仕様データは、自社Webサイトや営業担当者が使用する提案資料と同一でなければなりません。マイナーチェンジや仕様変更のたびに複数のPDFファイルや紙媒体を個別に手動更新していると、古い表記が残って誤記トラブルや媒体間での記載内容の矛盾が発生する危険性が高まります。

そのため、数値スペックだけでなく、製品画像、図面データ、仕様書PDF、カタログデータなどの情報を正確かつ最新の状態で一元管理し、あらゆる媒体へ統合データ供給できる基盤を整えておくことが、製造業マーケティングの品質と効率を担保する上で重要となります。

製造業のマーケティングでは製品情報を正確・最新に保つことが重要

製造業のマーケティングにおいては、Webサイト、Web広告、動画、製品カタログ、技術資料など、多種多様なメディアやチャネルを駆使して顧客へ情報を届けます。本記事では9つの代表的なマーケティング手法を紹介してきましたが、これらの施策を安定して充実させる上で重要となるのが、発信の材料となる製品情報を常に正確かつ最新の状態に保つことです。

例えば、公式Webサイト上では最新の製品仕様を掲載していながら、営業担当者が顧客へ提示する提案資料には変更前の古い情報が残っていた場合、顧客へ伝わる内容に食い違いが生じ、企業の信頼性を損なう原因となります。

また、新製品の追加や仕様変更が発生するたびに、Webサイト、カタログなどを個別に手動で更新していると、マーケティング担当者の作業負担は際限なく肥大化してしまいます。

特に製造業では、単なる品番や文字スペックだけでなく、製品画像、CADデータ、仕様書、製品カタログなど多岐にわたる製品関連情報を取り扱います。また、設計、営業、販促など社内の複数部門が同じ製品情報を利用するため、部門ごとに異なる情報やローカルファイルを参照していると、版ズレや無駄な社内確認作業が常態化しやすくなります。

そのため、表面的なマーケティング施策の数を増やすだけでなく、社内の各部門が常に最新マスタデータを参照し、必要な媒体へ効率的にデータ反映できる製品情報の管理体制を整えることが重要となるのです。

製造業のマーケティングにおける製品情報管理には「PIM(ピム)」が有効

社内に分散する製品情報を一元的に管理し、各部門やあらゆる出力チャネルで活用可能にする仕組みが「PIM(Product Information Management:商品情報管理)」です。

PIMは、製品情報を一元的に管理し、Webサイト、ECプラットフォーム、営業ツール、紙カタログなどの出力先へ展開するためのシステム基盤です。

◆製造業におけるPIMの役割

製造業におけるPIMの役割

PIMによって製品情報を一元管理することで、設計、営業、マーケティング・販促などの関係部門が同じ「最新の正しいデータ」をリアルタイムで参照しやすくなります。

◆製造業のマーケティングでPIMを活用する主なメリット

・製品情報や関連資料を一か所で管理できる
・各部門が最新の製品情報を参照できる
・WebサイトやECなど複数のチャネルへ情報を活用しやすくなる
・製品情報の更新や管理にかかる作業を効率化しやすい
・古い情報や媒体ごとの情報の食い違いを防ぎやすくなる

製造業のマーケティングにおいては、施策そのものを増やすだけでなく、その材料となる製品情報を正確かつ効率的に管理できる環境を構築することが重要です。

製品点数、管理項目数、活用メディア数が増え、日々のデータ更新に負担を感じている企業においては、PIMシステムの導入を検討すると良いでしょう。

まとめ

製造業のマーケティングにおいては、高度な独自技術や高品質な製品を保持していても、ただ所有しているだけでは新規顧客の獲得や案件創出にはつながりません。顧客に自社を見つけてもらい、製品や技術の価値を理解してもらった上で、その後も継続的な接点を維持する仕組みづくりが重要です。

そのためには、展示会や対面営業といった従来の顧客接点に加えて、公式Webサイト、課題解決型のコンテンツマーケティング、ウェビナー、定期的なメール配信・MAなどを組み合わせ、顧客の課題や検討フェーズに応じて最適なタイミングで情報を届けていく必要があります。

一方で、こうしたマーケティング施策を継続的に実施するほど、情報発信の根幹となる「製品データ」の精度と一元性の重要性も増していきます。そのため、製品情報を常に正確かつ最新の状態で集約管理し、必要な部門や各種チャネルで利活用できる統合環境を構築しておくことが、製造業マーケティングを成功へと導く土台となります。

インターファクトリーが提供するクラウド型商品情報管理システム「EBISU PIM(エビス ピム)」は、商品情報をはじめ、画像、動画、仕様書PDF、図面データなどをまとめて一元管理し、Webサイト、営業資料、製品カタログなどで活用するための統合情報基盤を安全に構築します。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。