ECサイトをメディア化する理由とメリット・デメリットとは?


ECサイトにコンテンツマーケティングの手法を取り入れて、メディア化に着手する企業は増えています。その理由はECサイトへの見込み客である流入数を圧倒的に増やして売上を数倍にすることも可能だからです。

ECサイトの売上を増やす手法はいくつもあります。例えば、アパレル業界であれば、インスタグラムなどで、自社製品を効果的にターゲットにアピールする手法もありますが、ターゲットの年齢層が若い層であり、また写真を印象的に使える業界でないと厳しいでしょう。

ですから、どの業界であっても、ECサイトの売上を爆発的に効果を出すにはメディア化がもっとも効果的です。なぜなら、あなたのECサイトのビジネスに関連のあるSEOキーワードで上位を独占するコンテンツマーケーティングの手法だからです。

本日は、ECサイトをメディア化する理由やメリットとデメリットをebisumart(インターファクトリー)でWEBマーケティングを担当している筆者が詳しく解説いたします。


※当記事ではECサイトのメディア化の具体的方法については触れませんが、メディア化するための具体的方法については下記の記事で紹介しておりますのでご覧ください。

過去記事:ECサイトの商品ページに流入を増やすSEO施策

ECサイトをメディア化する理由

まず、ECサイトをメディア化する理由ですが、端的に言えばECサイトの売上を拡大させることです。そのためには、いかにして、WEB上の見込みユーザーのリーチできるかが、WEBマーケーティングの課題になってきます。

GoogleやYahooなどの検索エンジン上で、見込みユーザーに対して、ECサイトを検索させる手法としては有効なものとしては、以下の2つの方法があります。しかし、この2つの手法でECサイトの売上を拡大するのが難しくなりました。

◆検索エンジン対策

(1)SEO施策
(2)リスティング広告

(1)SEO施策

まず、SEO施策ですが、ひと昔前まではECサイト事業者であれば、SEO対策を業者に依頼していたでことでしょう、なぜなら業者に依頼すれば、対策するページに「バックリンク」をつけて順位をカンタンに検索結果で上位表示することができたからです。

しかし、それは2011年ごろまでの話で、Googleが検索エンジンのアップデートを行ったため、バックリンクによるSEO対策が不可能になりました。この結果、多くのSEO業者が廃業することになりました。

(2)リスティング広告

リスティング広告は、昔からWEBマーケーティング施策の中で、最も費用対効果が良い施策です。予算のあるECサイト事業者で、リスティング広告を行っていない会社はないでしょう。リスティング広告が獲得効率の高い広告という点は今も昔も変わりません。

しかし、リスティング広告には弱点があります。それは効率の限界があることです。カンタンに言うと、とあるEC業者が100万円のリスティング広告で、100件のCVを獲得していたとします。しかし予算を2倍の200万にしても、200件のCVはとれません。130件~150件に落ち着くでしょう。

つまり予算を倍にしても、効果が倍にならないのがリスティング広告の弱点です。

またリスティング広告は、各社競合が行っており、リスティング広告は入札制であるため、年々CPC(1クリックあたりのコスト)が上昇しており、どの事業者もリスティング広告の高騰に頭をなやませているのが現状です。

マーケーティング・オートメーションやDSPは?

ECサイトでMA(マーケティング・オートメーション)による既存顧客の呼び起こしや、DSP広告などのアドテクノロジーを導入することで売上をあげることが可能です。

しかし、これらの施策は10~20%程度の売上アップは見込めますが、対前年200%以上を狙える施策ではありません。また導入や運用には、費用も相当かかります。

そして、これらの高度な施策で効果を得るには、自社でノウハウを積み上げる必要があり、いきなり成果が見込める広告ではありません。特に高度なアドテクノロジーのDSPは、効果を実感できるまでには時間がかかるため、中長期的に取り組まないと効果を実感する前に解約する事業者がほとんどです。

つまり、これらの施策は、かかる費用や労力の割には売上に対する貢献は低く、成功する可能性も高いとは言えません。

コンテンツマーケーティングで、爆発的に成果を出す唯一の施策がメディア化

まずは、下記のグラフを見てください。このグラフはこのメディア「ebisumart media(えびすマートメディア)」によるメディア化で、たった8ヵ月で、セッション数を5倍にしたグラフです。

ebisumartの事例

そして、運営から3年が過ぎた2018年12月にはセッション数が月間セッション数が10万を超えました。

ここまでのアクセス数になると、広告を出稿しなくても月間の問い合わせが200件近く入るようになります。

では、どうしてこのように流入数を5倍にできたのでしょうか?それは、コンテンツマーケティングによるSEO施策を行い、ビジネスに関係するキーワードでSEO上位を独占したからです。具体的に説明しますと下記をご覧ください。

◆ebisumart mediaのSEO事例

「EC化率」                      SEO1位
「EC決済」                      SEO1位
「EC 集客」                  SEO1位
「EC事業」                      SEO1位
「スマホ決済」                SEO1位
「自社ECサイト」            SEO1位
「オムニチャネル 事例」SEO2位
「EC SEO」                  SEO3位
「EC マーケティング」 SEO5位

このように、弊社はECのプラットフォーム事業を行っており、ECサイトと親和性の高い、キーワードでコンテンツマーケティングを行い、メディア化に成功いたしました。しかも、このメディア化によって問い合わせ数は、前年度の200%に達しました。

ECサイトのメディア化のメリット

ECサイトのメディア化の効果や理由について解説しましたが、では実施する前に、具体的にはどのようなメリットとデメリットがあるのかを解説いたします。

メリット① ECサイトへの流入数とCV数を爆発的に増やせる

すでに解説しましたが、メディアにより見込み顧客の検索しそうなキーワードで上位を取得し、そのメディアから、ECサイトの商品ページを導線を自然な形で設ければ、商品ページへの流入数を各段にあげることができます。

下記記事では、メディア化によりECサイトへの流入が大きく増えた好例が紹介されておりますので、ぜひご一読ください。

参考:お客様目線で運営していたらSEO的にも成功したネットショップ──石けん百貨(ネットショップ担当者フォーラム)

メリット② メディア化のノウハウを通じて、EC担当者のWEBマーケーティングスキルが上がる

これは私自身の体験から断言することができます。私は2014年1月からコンテンツマーケティングによるメディア化を自分一人で行いました。今まで複数のメディアを作ってまいりましたが、予算0円、自分一人の労力だけで集客する術をマスターいたしました。

通常、ECサイトやWEBサイトの広告施策は、多くの事業者が外部に委託することが一般的ですが、自社サイトのメディア化となると、外部委託せずに自分たちで作ることになります。なぜなら、現在のGoogleは、コンテンツの「専門性」「網羅性」「信頼性」を重視しており、これらを満たすコンテンツでないと、上位表示は不可能です。

これらを条件を満たす書き手は、自社社員でしかありえません。

そして、メディアの記事担当が、自らメディア記事を執筆することで、ユーザー心理を考えるようになり、日々のメディアの効果測定を行うことで、自分で読者に関心を呼ぶ記事の書き方をマスターできようになります。つまりこの手法とは、WEBマーケーティングそのものであり、メディア担当社はWEBマーケーティングのスキルを各段にあげることができます。

メリット③ メディア化成功後はSEO施策がカンタン

このメリットはメディア化に成功した方のみが実感するメリットですが、例えば自社メディア運営後1年も経過すると、メディアのドメインが強くなります。ドメインが強くなると、SEO施策がビックリするくらいカンタンなのです。

それはどういうことかと言いますと、例えばメディア化に成功したドメインで、とあるキーワードをSEO対策するために新記事を書きます。数日以内には2ページ目にランクインし、1カ月以内に10以内にランクインします。そして三ヵ月後には3位以内になるといった具合に、カンタンに狙ったキーワードでSEO上位がとれるようになります。

下記は弊社の「ebisumart media」の「EC SEO」という記事のSEOの順位変動の様子です

◆メディア化に成功したSEO順位の動き方

ec_seo

青い線がGoogleです。2016年9月27日にアップした記事ですが、数日で12位程度にランクしました。10月10日には8位になり、しばらく上がったり下がったりを繰り返し、11月12日に2位なり、現在は2位と3位の間を行き来するランクに落ち着いています。このように、メディア化に成功してしまえば、新規記事のSEOが極めてカンタンな事がわかります。

メリット④ 競合他社が追い付けない

先にその業界でメディアを作ってしまえば、競合他社が追い付くのはカンタンではありません。それは後ほど説明しますが、メディア化には、多くの労力がかかります。また先にメディア化をすることでドメインに力がつき、そのドメインは年々強くなっていくので、先行者が受けれるメリットが大きいのです。

メリット⑤ 商品やサービスにおいて知識や知見が深くなる

メディア化を自社社員が本気で行えば、今持っている以上の知識を掘り起こさなくてはならないため、社内や現場への取材が必要になりますし、社内のサービスや製品について、さらに学ぶ必要があるため、製品知識や知見が深くなります。

知識とは人から学ぶだけでは、実は自分のものにはなりません。発信することで体得できるのです。ブログもその発信方法の一つで、メディア担当者はブログを作成しながら、さらなる知識と知見を獲得します。

また、社内でもそのブログを読むことで、社員全員のサービスや製品の知識が向上するメリットもあります。

ECサイトのメディア化のデメリット

ECサイトのメディア化は、良いことばかりではありません。その爆発的な効果を生むには、それなりの苦労も大きいです。またメディア化に成功した後は、メディア担当者を辞めさせないことが重要になってきます。

① メディア担当者の負荷が大きい

SEOで上位をとるためには、記事に対して「専門性」「網羅性」「信頼性」が現代のSEOでもっとも重要です。したがって外注して、ユーザーを「購入」という態度に変容させる、質の高いコンテンツは自社でしか作ることができません。

外注できない分、自社社員でメディアのコンテンツ記事を作成していくことになりますから、記事作成は大いに時間と労力がとられます。1記事作成するのに、他の仕事を全て止めて、1日はかかります。もしメディア担当者が一人でしたら、他の仕事もやりながらとなると、1週間に1~2記事が限界になるでしょう。

また、効果が出てくるのも早くて半年後ですから、それまでは流入のないメディアを相手に大きな負荷をかけなくてはなりませんので、モチベーションを保つのが大変ですし、上司への進捗報告も、理解が得られないと「メディア化は効果がない!」と責任問題になる可能もあります。

このように労力がかかる施策ですから、3名以上で、週に3本以上の記事を提供できる体制が理想です。当然体制があった方が、早くメディア化に成功します。

このようにメディア化は会社の経営判断として、体制をしっかり構築する必要があります。

デメリット② メディア化に成功したメディア担当者が転職・独立してしまう

メディア化に成功すると、メディア担当者のWEB集客スキルが格段にあがります。その時は、メディア担当者は、もはやWEB集客のスペシャリストになっているはずです。そうなると、メディア化の成果に見合った高給をもらっていない担当者は、メディア化で獲得したノウハウをもとに、転職を考えます。

その根拠は私自身も、自分で立ち上げたメディアが成功したにもかかわらず、企業から正当な報酬をもらえないと感じて、転職をしてインターファクトリー(このメディアの会社)に来て、このメディアを立ち上げた経緯がありますし、知人のメディア担当者も次々に独立や転職をしている人が多いです。

現在、このWEBメディアをゼロからつくる能力を持った人は市場に少なく、引く手あまたなのが現状です。もしあなたが事業部長なら、メディア化の成果に見合った報酬を支払わないと、スキルのある社員が離脱していくことになるでしょう。メディア担当者が競合他社に行かないように、成果を正しく評価する体制である必要があります。

ただし、1度メディア化に成功してしまえば、メディア担当者がいなくてもアクセス数は維持できます。なぜならバックリンクによる施策ではないため、順位が極めて安定するからです。しかし、また一からメディア担当者を作るのは労力がかかりますし、何より無駄です。

デメリット③ 記事や写真の盗作による企業損失

もし、コンテンツを自社の努力ではなく、WEB上の他のコンテンツから盗むことでメディア化を行えば、コンテンツ記事をカンタンにつくることができるでしょう。そしてSEOに長けた担当者が、Googleに気づかれないように文章の一部を変更するこで、GoogleをだましてSEO上位を独占することも可能です。

そして、その手法が大量のクラウドワーカーを使って、組織だって行うことは可能であることを、DeNAのWELQが証明してしまいました。SNSが全盛の時代ですから、記事の盗作が発覚した場合、様々なWEBメディアに取り上げられ、企業の信用を失墜させます。その後のDeNA社の謝罪会見を見ても明らかです。

※WELQ事件については下記記事をご参照ください。

参考:DeNAがWELQ事件受けキュレーション9サイトを閉鎖、守安社長「心よりお詫び」(日経クロステック)DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言(BuzzFeed News)

またWEBマーケティングの見地からも、このような方法でアクセス数を膨大にしても売上を伸ばす方法に直結しません。なぜならユーザーがメディアに来るだけでは売上にならず、その記事を読んで、感動して、態度変容をさせることで、購買に結びつくのです。素人のライターが書いたコピペ記事の編集では、ユーザーの態度変容を起こすことができないため、CVにつながらないのです。

話が横にそれましたが、記事を盗んで書くのではなく、自社で考え抜いた記事でこそ、メディア化による収益が見込めるのです。盗作はただ、企業を廃業に追い込む行為です。

ECサイトのメディア化のまとめ

ECサイトのメディア化とは、WEB上での流入を倍以上にし、売上を数倍にするコンテンツ・マーケティング戦略です。メディアを作るためには、担当者の莫大な労力がかかります。

しかし、一度メディアを構築してしまえば、競合他社が追い付くことができず、そのECの業界でも、圧倒的にナンバー1になることができます。そのためには覚悟を決めて、EC担当者を1年間はメディア担当に従事させることがキーになってきます。またメディア化に成功した場合は、その担当を正当に評価することも忘れないようにしてください。

なお、当メディアも、おかげさまでECサイトの構築などに対する問い合わせが増え続けており、今後もECサイト運営者に役建つ情報を発信してまいります。そして問い合わせをしていただかなくとも、記事に感銘を受けていただき、読者の皆さまのECサイトの運営に影響を与えることができれば幸いです。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。