ささげ業務とは「撮影・採寸・原稿」の頭文字の略称


「ささげ業務」という言葉をご存じですか? 「ささげ」とは「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字を取った用語で、ECなどで商品のカタログ情報を制作する業務を指します

そして、「ささげ業務」で制作されるコンテンツがECサイトの売上を大きく左右します。ECサイトでは、商品の写真、スペック情報、訴求情報を見て、購入するかどうかを判断するため、掲載されている写真やテキスト情報の正確性と訴求力がユーザーの意思決定に強い影響を与えることになります。

この記事では、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、ECサイトにおける「ささげ業務」の重要性について解説します。

「ささげ業務」の3つの業務

まずは、「ささげ業務」と呼ばれる3つの業務である「撮影」「採寸」「原稿」について、それぞれ見ていきましょう。

① 撮影
② 採寸
③ 原稿

① 撮影

ECサイトでは、写真のクオリティーが極めて重要です。特にアパレルや、家具・インテリア業界などでは、写真の出来栄え次第で売上が変動することもあります。

また、掲載する写真の枚数と種類も重要です。

例えば、ネットで新しい財布を買おうとしているユーザーがいるとしましょう。

気に入った商品を型番検索したところ、3つのECショップで取り扱っていることが分かりました。いずれも初めて買い物をするショップで、支払い方法の選択肢や価格がすべて同じ条件だった場合に、もしあなたがユーザーならショップA、B、Cのうち、どのECショップで購入したいと思いますか?

ショップA:財布の外観(裏・表)写真のみを掲載

ショップB:財布の外観(裏・表)と内側やポケットなど仕様が分かる複数の写真を掲載

ショップC:財布の外観(裏・表)と内側やポケットなど仕様が分かる複数の写真とともに、手に持ったときの様子やポケットやバッグに収めたときの写真を掲載

掲載写真以外の条件が同じだった場合には、多くの方がショップCに好感を抱くのではないでしょうか。ユーザーは、さまざまな切り口の視覚情報に基づいて、商品を使っている自分の姿をイメージしやすくなるため、購入時の意思決定が容易になります。

実物の商品を確認できない、というECサイトの欠点を補完するためには、商品写真のクオリティーと種類・数量は欠かせない情報なのです。

② 採寸

実物を見ることのできないECサイトでは、商品のサイズや容量などのスペック情報の正確さと、実物とイメージとの差をより小さくするための工夫が求められます。

正確な数値はもちろんですが、ユーザーにとって分かりやすい方法で伝えるという点で、競合との差別化を図ることも大切です。

③ 原稿

ここでいう原稿とは、商品に関するテキスト情報を指します。

原稿を書く際に心がけるべきポイントは、商品の魅力とともに新しい視点を交えることで、ユーザーの気づきや共感を促すことです。

例えば、「折り畳み式USB扇風機」(モバイル家電)の原稿を作成するとしましょう。

商品説明文の中に「商品の可動部には破損しにくいステンレスが使用されています」などの一文を添えると、過去に可動部がプラスチック製の折り畳み式USB扇風機を使用したことがあり、可動部が折れたことがあるという経験を持つユーザーや、可動部がプラスチック製の別の製品を検討していたユーザーに強く刺さるメッセージとなります。

商品情報では普遍的な商品特性を伝えるのはもちろんですが、ユーザーの悩みや課題を考慮しながらメッセージを作成することで、ユーザーの購入意欲を後押しすることができます。また、自社独自の目線を掲載することでニッチキーワードのSEO対策効果も期待できます。

「ささげ業務」で売上につながるコンテンツを制作するための6つのポイント

「ささげ業務」で売上につながるコンテンツを制作するためには、次の6つのポイントを考慮しましょう。

① イメージしやすい画像を掲載する
② 撮影コストを抑える
③ 説明文は読みやすさを重視
④ SEOキーワードを入れる
⑤ 動画を利用する
⑥ スマートフォンでの見栄えを工夫する

各ポイントを1つずつ見ていきましょう。

ポイント① イメージしやすい画像を掲載する

下図はユニクロのインラインサイトの商品ページにリンクが設置されているサイズチャートページから抜粋した、商品サイズの測り方を説明するためのコンテンツです。

引用(画像):「サイズチャート」より一部抜粋(ユニクロ公式オンラインストア

商品の寸法をイラストで確認することができます。「着丈」「身丈」などのテキスト表記だけでは、どの部分を計測したらいいのか迷ってしまいますが、イラストとともに掲載することで分かりやすく、またフィッティングのための計測もしやすいように配慮されています。

すべての商品に専用コンテンツを用意することが難しい場合や、ECサイトの機能にリンクを設定することができないという場合は、商品のサイズ情報を商品写真にイラストで入れるという方法もあります。

ただし、イラストを追加した写真は、Googleの無料リスティングやショッピング広告の出稿時に審査が通らない可能性もあるので慎重に検討するようにしましょう。

ポイント② 撮影コストを抑える

ECサイトの集客施策の一つにSNSを運用する方法があります。その中でも特に、Instagramでは写真のクオリティーが重要です。商品の写真だけではなく、できるだけその商品を使っている様子の写真などが必要となり、写真撮影には負荷がかかります。

SNS用コンテンツの撮影のスケジュールに商品撮影を組み込むなど、できるだけ同じような作業をまとめることで、負担を低減して効率よく運用できるような業務フローや体制を確立しましょう。

ポイント③ 説明文は読みやすさを重視

商品説明文の原稿を作成する際の最も重要なポイントは「読みやすさ」です。基本的に、ユーザーが説明文をしっかり読んでくれることは期待できません。飛ばし読みがほとんどです。せっかく商品の魅力を伝えられる文章ができても、読まれなくては意味がありません。

そのため、ただ単に文章を書き連ねるのではなく、下記のような目を留めてもらうための工夫をします。

◆ユーザーの目を留めるための工夫

・箇条書き
・表や図を挿入
・改行を上手く使う
・具体的な固有名詞や数字を使う

文中に箇条書きや図表を差し込むことで、目に留まりやすくなります。また、まったく改行のない文章より、本記事のように2〜3行ごとに空白行を入れるなどして、改行を多く使うことで可読性が格段に上がります

そして、できるだけ具体的な表現を使うようにします。例えば、「素材を見直したことで温かさがアップ」と書くよりも「ウール混率を80%にしたことで保温性を高めました」と書いたほうが、より伝わりやすく信頼性も高まる商品説明文になるはずです。

ポイント④ SEOキーワードを入れる

また、商品説明については、ユーザーに商品の仕様や特徴、魅力を伝えることが一番の目的となりますが、商品ページのSEO対策についても考慮すべきです。

SEO対策を意識しすぎてしまうと、キーワードばかりが目立つ不自然な文章になりやすく、企業や商品に対する信頼を損ねてしまう場合もあります。しかし、適切にSEO対策を実施することで購入率を高めることもできます。

SEO対策用のキーワードを検討する際に使える便利なツールに、ラッコ株式会社が運営する「ラッコキーワード」というWebサービスがあります。Googleサジェストのワードを一括で抽出でき、無料のプランから有料のプランまで複数のプランが提供されています。

◆ラッコキーワードの抽出画面

参考:「ラッコキーワード」より加工して作成

上図では「USB扇風機」を指定してサジェストキーワードを確認しています。抽出されたサジェストの中に、以下のキーワードがありました。

USB扇風機 充電しながら

このキーワードからは、「充電しながら」使えるUSB扇風機を探しているユーザーが、一定数いることが分かります。充電しながら使える商品であれば、その点を原稿に取り込むことで、ユーザー目線でありながらSEOに考慮した原稿を作ることができます。

このように、抽出されたサジェストの中からユーザーの悩みや要望を見つけ出し、そのワードと回答となるようなメッセージを盛り込むことで、SEOを考慮しつつユーザーの立場に立った原稿を作ることができます。

ポイント⑤ 動画を活用する

制作の手間は増えますが、写真だけではなく商品の使用感が分かる動画を作成するのも有効な方法です。アパレルなどは、着用動画を掲載することで、着用イメージや質感などが格段にイメージしやすくなり効果的です。

利用しているECサイトのシステムが動画投稿に対応していない場合には、YouTubeなどを併用し、リンクを設置するなどの運用も検討してみましょう。

ポイント⑥ スマートフォンでの見栄えを工夫する

原稿はパソコンで執筆することが多いと思いますが、ユーザーはパソコンだけではなく、スマートフォンからもアクセスします。そのため、スマートフォンの画面でも見やすい原稿を作成するよう心がけましょう。

特に、テキスト情報は改行位置や図表の見やすさなどを意識し、パソコンとスマートフォンの両方で画面表示を確認するようにしましょう。

まとめ:ささげ業務は売上に関与する重要な業務

「ささげ業務」の生産品質は、売上に大きく関与します。仕入れ先から提供された画像や情報をただ転載するのではなく、独自の工夫をすることで、競合他社との差別化を図ることができます。

また、原稿制作を外注する場合には、実際に商品を使ってもらったり、事前に商品説明会を設けたりするなどして、ライターに商品の特性や魅力を理解してもらうことも大切です。ECの売上を高めるためにも、現行の「ささげ業務」のフローと生産性を見直してみることをおすすめします。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。