出版・新聞業界の中には、新聞や本の発行・出版だけではなく、ECサイトを構築して物販に力を入れる企業もありますが、どのような点に留意してECサイトを構築すると良いのでしょうか。
出版・新聞業界のEC運営で押さえておきたいポイントは以下の5つです。
◆出版・新聞業界のEC運営における5つのポイント
ポイント② オウンドメディアとの連携
ポイント③ ECモールを構築して、出店を募る
ポイント④ 頒布会や定期販売
ポイント⑤ 電話/FAX注文に対応する(代理注文機能の実装)
デジタル時代の出版・新聞業界は、紙媒体に依存しない新たな収益モデルと、幅広い顧客との新しい顧客接点の確立が求められており、その最初のステップとして、従来の強みを生かしてECサイトを活性化していくことが重要になります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、出版・新聞業界のEC運営における5つのポイントと3つの留意点を解説します。
出版・新聞業界のEC運営における5つのポイント
出版・新聞業界のEC運営で押さえておきたい5つのポイントについて、一つずつ解説します。
ポイント① デジタルコンテンツの販売
ポイント② オウンドメディアとの連携
ポイント③ ECモールを構築して、出店を募る
ポイント④ 頒布会や定期販売
ポイント⑤ 電話/FAX注文に対応する(代理注文機能の実装)
ポイント① デジタルコンテンツの販売
出版・新聞業界のECで取り扱う商品としては、本や雑誌などの印刷物とデジタルコンテンツが考えられます。出版物のデジタルコンテンツの提供方法には、電子書籍サービスが提供する形式と、オープンフォーマット形式(PDF/EPUB)の大きく2種類があります。
出版大手の技術評論社では、印刷物の物販と2種類の電子書籍の販売に対応しています。技術評論社の公式サイトでは、検索した書籍をユーザーが任意の電子書籍サービスを選択して購入することができます。
◆技術評論社の書籍案内ページ
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引用(画像):株式会社技術評論社の公式サイト|書籍案内ページ
上図の赤枠内のリンクをクリックすると、ユーザーは任意の電子書籍サービスで選択した書籍を購入できるのですが、注目してほしいのは外部の電子書籍サービスのサイトにリンクする点です。
現在、電子書籍は複数の電子書籍サービスが出版・販売し、電子書籍サービスごとに独自のプラットフォームとファイル形式で提供されており、例えば電子書籍サービス最大手のAmazon Kindleで購入した電子書籍は、Kindle端末かKindleアプリでしか読むことはできません。
◆電子書籍サービス(例)
・楽天kobo
・honto(ホント)
・BookLive(ブックライブ)
ユーザーはそれぞれが使い勝手の良いサービスを利用しているため、出版社が自社サイトで検索した書籍を購入してもらうためには、販売元である複数の電子書籍サービスを選択肢として掲載する必要があります。
一方、PDFまたはEPUB版の電子書籍は出版社も直接販売が可能で、技術評論社でも自社の電子書籍のECサイトでPDF/EPUB版の電子書籍を販売しています。
◆技術評論社の電子書籍(PDF/EPUB版)ECサイト
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引用(画像):株式会社技術評論社の公式サイト「Gihyo Digital Publishing」
上図のように、このECサイトでは電子書籍を検索してそのまま購入手続きに進むことができます。
PDF/EPUB形式の書籍販売では、書籍の複製やテキストのコピーを禁止するなどの考慮も必要になる点にも留意が必要になります。
今回はデジタルコンテンツの例として出版物を取り上げましたが、動画の場合も同じように利用できるプラットフォームやファイル形式への考慮が必要になります。
ポイント② オウンドメディアとの連携
すでに出版社・新聞社の多くがオウンドメディアを運営し、多くのトラフィックを獲得しています。下図は、「Ubersuggest(ウーバーサジェスト)」という検索キーワードチェックツールを使って計測した、朝日新聞のニュースサイトのオーガニックトラフィックの推移です。
◆朝日新聞のオーガニックトラフィック

上図では月間のトラフィック数は1億を超えており、こうしたメディアとECサイトとの連携を検討する際は、オウンドメディア側の莫大なトラフィックを念頭に入れておく必要があります。
また、オウンドメディアを会員制にしている場合は、ECサイトも同じ会員IDでログインできるようにすることも必要になります。
昨今はGoogleやLINE、Instagram、Xなどのアカウント情報を使ったソーシャルログインも普及しているため、ログイン設計についても安全性を確保できる最適な方法を検討するようにしましょう。
ソーシャルログインについては関連記事で解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
ポイント③ ECモールを構築して、出店を募る
大手の出版社・新聞社の場合は自社サイトのアクセス数が非常に多いため、その集客力を武器にして、出店者を集めてECモールを運営することも可能です。
ただし、ECモールの開設は容易ではなく、ECのノウハウはもちろん、出店者を集める営業力と他の業界や企業との強力なパートナーシップが必要になるため、事業全体を総合的に考慮する必要があります。
過去に筆者が出店した大手の新聞社と化粧品会社がそれぞれ運営する2つのECモールでは、まったく売上を伸ばすことができませんでした。つまり、それだけECモールの運営は難しいというわけです。
また、ECモールを新たに構築する場合には、プラットフォーム機能だけでなく、出店者向けの機能も充実させる必要があります。ECモール型サイトの構築については、「EBISUMART」の公式サイトのショッピングモール型サイトの構築ページが参考になりますので、興味のある方はぜひご覧ください。
ポイント④ 頒布会や定期販売
出版社・新聞社では頒布会や定期販売を行っていることが多く、ECサイトに頒布会や定期販売の機能を組み込む必要がある場合もあります。
ECプラットフォームの標準機能として頒布会や定期販売の管理機能が提供されており、それらの機能で自社の要件を満たせる場合には追加コストはかかりませんが、機能がない場合や、自社固有の設定が必要となる場合には、機能追加が必要となり開発コストが発生します。
頒布会や定期販売に特化したECプラットフォームサービスもあるのですが、大規模向けではなかったり、個別カスタマイズに対応できなかったりする場合が多く、出版・新聞業向けとしては適しません。
ECの頒布会/定期販売については、関連記事で解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
頒布会や定期販売の機能は、パッケージを利用したカスタマイズでもかなりの費用がかかるため、まずは自社の頒布会や定期販売の実績を確認したうえで、ECでの対応方法は費用対効果に基づいて検討していくことをおすすめします。
ポイント⑤ 電話/FAX注文に対応する(代理注文機能の実装)
新聞購読者は比較的高齢者が多く、通販で買い物をする場合にはECサイトではなく電話やFAXを利用する場合が多いようです。そのため出版・新聞業のECサイトでは、電話/FAX注文も一元管理できるように「代理注文機能」を実装しておく必要があります。
代理注文機能では、ユーザーからの電話やFAXによる注文を、自社の担当者がECサイトの管理画面を使って代理で登録できる機能で、ECだけでなく電話/FAXの注文をECシステムで一元管理できるため、アナログの受発注フローを残したまま、デジタル化を実現できます。
ECの代理注文機能については、関連記事でも解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
出版・新聞業界のECサイト構築時の3つの留意点
ここでは、先述した5つのポイントに加えて、出版・新聞業のECサイト構築時にさらに留意したい点を3つ紹介します。
留意点① 複数の通販チャネルの在庫情報を一元管理する
出版社や新聞社では、新聞や雑誌などの紙媒体の通販、テレビ通販、ECサイトというように複数の通販チャネルを運用している場合があります。
複数チャネルで通販の運営を行う場合には在庫情報の一元管理が非常に重要で、在庫管理を適切に行うことで、売り越し(販売超過)や欠品のリスクを抑え、効率的な運営が可能になります。
在庫管理にはさまざまな手法がありますが、ECサイトを軸とした運用を考えた場合には、以下のような在庫管理サービスが効果的です。
◆在庫管理サービス(例)
・ネクストエンジン
・eシェルパモール2.0
・TEMPOSTAR(テンポスター)
・GoQSystem(ゴクーシステム)
これらのツールは比較的低コストで導入することができます。ただし、サービスで対応していないチャネルと連携したい場合にはECシステムや在庫管理サービス側のカスタマイズが必要となるため、サービスがカスタマイズ不可であったり、開発コストが膨らんでしまったりする可能性がある点に注意する必要があります。
要件が複雑なデータ連携では1千万円を超えるコストが必要となることもあるので、検討段階で予算感も把握しておきましょう。
留意点② QRコードを利用して紙媒体との連携を強化する
新聞や雑誌などの紙媒体との連携では、QRコードを掲載するなどしてECサイトにスムーズに誘導することが重要です。例えば、雑誌を見ながら読者がスマートフォンを使って簡単にECサイトにアクセスできるような導線を設計することで、購買機会を増やすことができます。
QRコードを利用した連携では次のような方法が考えられます。
◆QRコードを利用した連携方法(例)
・特集記事と連携し、読者の興味関心に応じた商品ページへ誘導する
・限定キャンペーンやクーポンコードを組み合わせて購入意欲を促進する
既存の紙媒体との連携を強化することで、ECサイトの認知と売上の拡大につなげていきましょう。
留意点③ 高齢者も簡単に使えるUIを設計する
新聞や雑誌の読者の中には、高齢者も含まれます。ECサイトのUI(ユーザーインターフェース)は高齢者も簡単に使えるように設計しておく必要があります。
◆高齢者向けのUI設計のポイント
・デザインをシンプルにして迷わず操作できるように導線を設計する
・電話/FAXの窓口を設置し、Webに不慣れなユーザーをサポートできるようにする
特に複雑になりやすい決済画面や問い合わせフォームではシンプルな操作性を重視して、購入時のストレスを軽減することが重要です。
まとめ
出版・新聞業界もまたデジタル化の波が押し寄せている業界の一つですが、認知度が高く、オウンドメディアへのアクセス数もかなり多い業界のため、従来の強みを生かしながらECを運営していくことで、新たな収益源を創出できる可能性があります。
デジタルコンテンツの販売、定期購読などのコアビジネスを強化するとともに、出版物と連動した物販やオウンドメディアとの連携などの積極的な施策と試行錯誤を重ねることで、新しいビジネスを確立できるでしょう。
新たに出版・新聞業界のECサイトを構築する場合は、インターファクトリーのECプラットフォーム「EBISUMART」がおすすめです。EBISUMARTはデジタルコンテンツなどの柔軟な対応が求められる商材の取り扱いも対応可能なカスタマイズ性に優れたプラットフォームです。
詳しくは、EBISUMART公式サイトをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。