セミクローズドサイトとは、一部の情報は誰でも閲覧できる状態にし、一部の情報は特定の人だけが閲覧できる状態にしたWebサイトのことです。
Webサイト全体を会員や取引先しか閲覧できないクローズドサイト(非公開型サイト)に対し、セミクローズドサイトでは外部との接点を持ちつつ、必要な情報を適切に制御できるという利点があります。
セミクローズドサイトの主なメリットは以下の4つです。
◆セミクローズドサイトの4つのメリット
② 新規会員登録や商談化につなげやすい
③ 与信・審査を前提にした運用を組み込みやすい
④ 顧客ごとの情報や商品情報の出し分けがしやすい
BtoB-ECでは、商品やサービスの存在は広く知ってもらいたい一方で、価格や取引条件、注文機能まで一般公開するのは避けたいというケースが多いため、セミクローズドサイトの需要が高くなっています。
この記事では、株式会社インターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、セミクローズドサイトの基本的な仕組み、主な活用シーン、メリットについて解説します。
「公開サイト」「セミクローズドサイト」「クローズドサイト」の違い
Webサイトの公開形態は、大きく以下の3つに分けることができます
◆Webサイトの3つの形態
・セミクローズドサイト
・クローズドサイト
まずは3つの公開形態の違いを見ていきましょう。
◆「公開サイト」「セミクローズドサイト」「クローズドサイト」の違い
出典:筆者作成
上図は3つのWebサイトの公開形態のイメージです。それぞれの特徴を表にまとめると以下のようになります。
| 公開サイト | セミクローズドサイト | クローズドサイト | |
|---|---|---|---|
| 閲覧できる人 | 誰でも閲覧可能 | 一部は誰でも閲覧可能 一部は会員・取引先のみ |
会員・取引先のみ |
| ログインの要否 | 不要 | 一部情報で必要 | 必須 |
| 公開される情報 | 商品情報、価格、購入機能などを広く公開 | 基本情報は公開しつつ、価格や詳細、購入機能を限定公開 | 商品情報、価格、購入機能などを限定公開 |
| 向いている用途 | DtoC-EC、BtoC-EC、メディアサイト など | 会員制EC、BtoB-EC など | 取引先専用サイト、会員向け受発注サイト など |
出典:筆者作成
それぞれの公開形態について、詳しく解説します。
公開サイト
私たちが日常的に買い物で利用しているような、ログインしなくても閲覧できるWebサイトです。商品ページや価格、購入機能まで広く公開されており、一般消費者向けのECサイトなどで広く採用されています。
検索エンジンにも認識されやすいため、SEOによる集客との相性も良いサイトです。
ただし、取引先ごとに価格や商品内容を出し分けたい場合や、限られた顧客にだけ情報を見せたい場合には不向きです。
セミクローズドサイト
Webサイト内の情報をすべて公開するのではなく、一部は一般公開し、一部は会員や取引先だけに限定して公開するWebサイトです。
例えば、トップページや商品一覧、サービス概要などは誰でも閲覧でき、価格、詳細仕様、見積依頼、購入機能などはログイン後のみ表示するといった構成になります。
検索エンジン経由で見込み顧客との接点を作りつつ、重要な取引情報は限定ユーザーにのみ公開できるため、BtoB-ECや会員制ECと相性が良いサイトです。
クローズドサイト
すべての情報を会員や取引先だけが閲覧できるWebサイトです。公開サイトやセミクローズドサイトと異なり、最初にログイン認証ページがあり、ログインしなければトップページや商品ページにもアクセスできません。
既存取引先との継続的な受発注や、契約先だけに向けた商品カタログの提供など、情報の秘匿性が重視される場合に向いているサイトです。
外部からの自然流入を獲得する構成ではないため、新規顧客との接点を作りたいのであれば、別で公開サイトを用意する必要があります。
一般にBtoB-ECでは、クローズドサイトは既存取引先との継続受発注や、契約条件の管理が重要な商流で採用される傾向があります。
また、セミクローズドサイトは、新規顧客との接点を持ちつつ、与信や審査後は取引につなげたい場合などに向いています。パーツや部品などの販売のように取引金額がそれほど大きくない場合には、セミクローズドサイトが採用されやすくなります。
公開サイト、セミクローズドサイト、クローズドサイトの違いは、「どこまで公開するか」と「誰に見せるか」にあります。特にセミクローズドサイトは、「情報をすべて公開したくはないが、見込み顧客との接点は確保したい」という場合に適したサイトです。
セミクローズドサイトの4つのメリット
今回は、セミクローズドサイトならではの主な活用メリットを紹介します。
メリット① 一般公開と限定公開を両立できる
セミクローズドサイトの大きなメリットは、一般公開と限定公開を両立できることです。企業情報や商品カテゴリ、サービス概要などは広く公開しながら、価格や在庫、取引条件、購入機能などは会員や取引先だけに限定できます。
価格を見せずに新規顧客を集めたい場合も、問い合わせや会員登録の入り口を確保しつつ、情報管理もしやすくなります。
公開サイトでは情報統制が難しく、クローズドサイトでは新規接点を持てないため、両方のメリットを取れる点がセミクローズドサイトの強みとなります。
メリット② 新規会員登録や商談化につなげやすい
セミクローズドサイトは、新規顧客を会員登録や商談化につなげやすい点もメリットの1つで、商品やサービスの概要を公開しておけば、検索流入や広告、紹介などを通じて新規ユーザーにサイトを見つけてもらいやすくなります。
詳細情報の閲覧や価格確認、見積依頼、購入機能の利用はログイン認証を必要とすることで、自然な形で会員登録へ誘導できます。
クローズドサイトのように入り口から閉じてしまうのではなく、顧客も興味関心を持ってもらうところから接点を作れるため、営業活動とリードの獲得がしやすくなります。
メリット③ 与信・審査を前提にした運用を組み込みやすい
セミクローズドサイトであれば、会員登録の前後に与信確認や取引審査のプロセスを組み込みやすく、承認された取引先だけに価格表示や注文機能を開放するといった運用が可能です。
取引条件の確認が済んでいない相手には重要な情報を見せないなど、自社の取引に合わせて公開/非公開を設計できます。例えば申込後に審査を行い、取引開始後に機能を段階的に開放できるなどの運用も可能になります。
メリット④ 顧客ごとの情報や商品情報の出し分けがしやすい
顧客ごとの情報や商品の出し分けがしやすい点もセミクローズドサイトの利点です。例えば、特定の取引先だけに一部の商品を販売したり、会員ランクや契約内容に応じて表示価格を変えたりといった運用がしやすくなります。
BtoB-ECでは、顧客別価格や販売可否の設定が必要になることも多く、すべてのユーザーに同じ情報を見せる公開サイトでは運用しづらい場面もあります。
セミクローズドサイトであれば、公開すべき情報は広く見せつつ、商品、価格、機能の公開範囲だけを柔軟に制御できるため、実際の取引に合わせた運用を実現できます。
事例で解説!セミクローズドサイトが活用される5つのジャンル
会員登録やログイン後に詳細情報や限定機能を提供したいという場面で使用できるセミクローズドサイトは、ECサイトだけでなくさまざまな分野で採用されています。
ここでは、セミクローズドサイトで構築されることが多い5つのジャンルを紹介します。
ジャンル① BtoB-ECサイト
セミクローズドサイトが特に活用される代表例が、BtoB-ECサイトです。BtoBでは、企業情報や商品カテゴリ、サービス概要などは広く見せたい一方で、価格や在庫、取引条件、発注機能までは一般公開できないといったケースが少なくありません。
そのため、公開ページで新規顧客との接点を作り、価格表示や見積依頼、注文機能などはログイン後の取引先だけに限定するという構成が採用されます。
特に、卸売サイトや仕入れなどのECサイトは、卸価格・ロット条件・支払い条件などを限定的に表示したい場面が多く、公開情報と限定情報を分けやすいセミクローズドサイトと相性の良いジャンルです。
また、既存取引先ごとに異なる契約価格を表示する「顧客別価格機能」や、担当者名・部署単位でのログイン管理など、BtoB特有の商慣習にも対応しやすく、業種を問わず導入が進んでいます。
◆このジャンルのサイト事例「ジェイエムテクノロジー」
半導体製造装置の保守・メンテナンスを手がけるジェイエムテクノロジーが運営する部品修理・販売のBtoB-ECサイトは、商品カテゴリや修理実績は一般公開されているため新規顧客にとっては検討材料となります。
検討後、注文や見積もりを取得したい場合には会員登録をしてログイン、もしくは問い合わせが必要になります。
ジャンル② ファンクラブ/会員制コミュニティサイト
ファンクラブ/会員制コミュニティサイトでは、アーティストやブランド、インフルエンサーなどの基本情報やニュースを一般公開し、会員限定コンテンツや先行販売、限定イベント情報などは会員だけに公開する構成が多く採用されています。
一般公開ページで新規ファンとの接点を作り、会員限定コンテンツを用意することで会員登録や継続利用を促進します。
他にも、無料会員と有料会員で閲覧できる情報を分けたり、会員ランクごとに特典内容を変えたりといったこともでき、ファンの関与度に応じて段階的な施策が展開できる点もセミクローズドサイトと相性の良い理由の1つです。
◆このジャンルのサイト事例「avexアーティストファンクラブ」
公式サイト:avex アーティストファンクラブ
エイベックスが運営するavexアーティストファンクラブのサイトでは、エイベックスに所属しているアーティストのプロフィールやイベント情報は一般公開し、会員限定動画、先行チケット販売、デジタル会報誌などは会員だけが閲覧できるといった、セミクローズドの典型的な構成になっています。
ジャンル③ 業界専門誌/メディアサイト
業界専門誌やメディアサイトでは、記事の一部を一般公開し、より詳細な内容や調査レポート、または特集記事、アーカイブ記事、会員限定コラムなどは会員だけに提供する構成が多いです。
公開記事で検索流入やサイト認知の拡大を図り、より専門性の高い情報は限定公開にして会員登録や有料サービスに誘導します。特に一次情報や独自調査の価値が高い分野の場合には、すべてを無料公開せず一部を限定コンテンツとして設計することで、情報価値と収益性の向上が見込めます。
記事の途中で「続きは会員登録で読めます」と案内する「Metered Paywall(メータードペイウォール)」はこの設計の典型的な仕組みの1つです。
◆このジャンルのサイト事例「東洋経済オンライン」
公式サイト:東洋経済オンライン
東洋経済オンラインでは、会員登録やログインなしでも読める記事を多数公開していますが、無料会員登録をすることで、同誌が独自に取材した企業・産業記事や特集など「無料会員向け」のコンテンツを読めるようになります。
さらに有料会員登録をすることで、有料会員限定コンテンツや総合経済誌『週刊東洋経済』電子版の最新号およびバックナンバーも閲覧できるようになります。
ジャンル④ オンラインスクール/学習サイト
オンラインスクール/学習サイトでは、講座の概要やカリキュラム、講師紹介、無料体験コンテンツなどは一般公開しつつ、教材、講義動画、課題提出、受講者向けサポート機能などはログイン後の受講者だけに提供するという構成が多く見られます。
セミクローズドサイトにすることで、受講前の見込み顧客には内容を分かりやすく訴求し、実際の学習機能や教材は限定公開にするといった形式を取ることができます。
また、無料会員と有料会員、入門講座と応用講座などで閲覧範囲を分けやすく、段階的なアップセルや継続課金の導線設計もしやすくなります。
受講者同士が交流するコミュニティ機能や、修了証の発行なども会員限定の付加価値として組み込みやすく、学習継続率の向上にもつながります。
◆このジャンルのサイト事例「Schoo(スクー)」
Schoo(スクー)は、会員登録をすると生放送授業に無料で参加できますが、録画授業は無料公開分を除いて有料のプレミアム会員や法人会員向けとなっています。
無料会員で入り口を開放し、録画授業の閲覧・倍速・ダウンロードといった実用機能を有料会員限定にして、段階的なアップセルを組み込んでいます。
ジャンル⑤ 不動産/物件情報サイト
不動産/物件情報のジャンルでは、物件の概要やエリア情報、外観写真などは一般公開して、詳細な間取り図面、価格交渉に関わる情報、会員限定物件、内見予約機能などを、ログイン後の会員に限定して提供する構成がよく見られます。
公開情報を検索流入や問い合わせの入り口にして、具体的な検討段階に入ったユーザーへ限定情報を提供できるため、見込み顧客の絞り込みが可能になります。
また、会員登録を通じて希望条件や検討状況を把握できることで、その後の提案や営業活動にも活用できます。
新着物件のメール通知や、過去の閲覧履歴に基づくレコメンドなど、登録ユーザー向けのパーソナライズ機能とも組み合わせやすいジャンルです。
◆このジャンルのサイト事例「楽待」
公式サイト:国内最大の不動産投資サイト「楽待」
投資用不動産の専門ポータルサイト「楽待」では、物件一覧や表面利回りは公開していますが、詳細な収支シミュレーション、オーナー向けの詳細資料、問い合わせ機能などを利用するためには無料会員登録が必要になります。
セミクローズドサイトの構築方法
セミクローズドサイトの代表的な構築方法には、「ASP」「パッケージEC」「カスタマイズが可能なクラウドEC」「フルスクラッチ」の4つの方法があります。
それぞれの違いについて解説します。
◆セミクローズドサイトの4つの構築方法
| ASP | パッケージ | カスタマイズが可能なクラウドサービス | フルスクラッチ | |
|---|---|---|---|---|
| 初期費用 | 数万円〜 | 数百万〜数千万円 | 数百万〜数千万円 | 数千万〜数億円 |
| カスタマイズ性 | △ | ○ | ○ | ◎ |
| システム連携 | △ | ○ | ○ | ◎ |
| 最新性 | ◎ | △ | ◎ | △ |
| 会員制御・公開範囲の設定 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 顧客別価格・商品出し分け | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
※オレンジの項目はセミクローズドサイトに関する機能
基本的にどの方法でも構築自体は可能です。ただし、実際のBtoB-ECでは会員制御や顧客別価格などを設定するための機能や外部システムとの連携や独自の運用に合わせたカスタマイズが必要となるため、それらに対応できる方法を選択する必要があります。
ASPは最新機能を利用しやすい一方で、システム連携や個別要件への対応には限界があります。
また、パッケージECは連携やカスタマイズに対応しやすいものの、改修を重ねるほどアップデートへの対応が難しくなり、最新性を保ちにくくなる傾向があります。
フルスクラッチは自由度が高い半面、継続的に保守・改修しなければシステムが陳腐化しやすく、長期的な負担も大きくなります。
カスタマイズが可能なクラウドサービスは、必要な連携や機能追加に対応でき、クラウドの利点により最新環境が維持しやすいため、中長期的な保守費用を抑えつつ運用できる構築方法です。
まとめ
セミクローズドサイトは、一般公開で新規顧客との接点を作りつつ、価格や取引条件、注文機能などは限定公開とする構成を取ることができます。1つのWebサイトで公開情報と限定情報とを分けて運用できるため、BtoB-ECとの相性が非常に良いサイト形態です。
セミクローズドサイトの構築方法はいくつかありますが、公開範囲の制御や顧客別価格、商品情報の出し分けなどにも対応できるようにしたい場合には、柔軟なカスタマイズが可能なクラウドECが最適な方法です。
インターファクトリーが提供するクラウド型のECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」は、公開サイト、セミクローズドサイト、クローズドサイトのいずれの形態にも対応可能で、得意先ごとの販売価格設定、承認制会員登録、ロット・入数対応、得意先管理、法人管理など、BtoB-ECに必要な機能を備えたECサイトを構築できます。また、外部システムとの連携や、業務フローに合わせた個別カスタマイズにも柔軟に対応できるため、企業ごとの商習慣や運用要件を組み込んだBtoB-ECを実現できます。
セミクローズドサイトやBtoB-ECの構築を検討している方は、下記の公式ページをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。























