アパレルECの市場と3つの課題を「最新のトレンド」から解説

さまざまなEC業界の中でもアパレルECは市場規模が大きく、注目されている業界の一つです。2026年10月に経済産業省から発表された2025年度の物販系分野のアパレルECの市場規模は2兆8,941億円で、前年比伸び率が3.43%、EC化率は24.08%と物販系の中でも比較的EC化が進んでいる業界です。

アパレルEC業界には、他業界にはない大きな特徴があります。それは、ECにおける新たなテクノロジーやソリューションが最初に実装・活用される業界であるという点であり、それだけ消費者との接点が多く、テクノロジーとの親和性が高い業界ともいえます。

そのため、業界の最前線では新たなトレンドが次々と生まれておりますが、このような急速な変化による課題も生まれています。

アパレルEC業界には現在、以下の3つの課題が存在します。

① アパレルECの新たな成長領域「リユース・リコマース」への進出
② 「ソーシャルコマース」の台頭
③ AIに選ばれる商品データを整備できるか

このように、アパレル業界は変化が激しい業界です。そのため、アパレル事業者は新しいトレンドをいち早く取り込み、ユーザーを常に満足させ続ける姿勢が求められるのです。

本日はインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、アパレルEC業界の最新トレンドを紹介し、その上で業界の3つの課題と解決策を解説いたします。

アパレルECの市場規模とEC化率

まずは、経済産業省が発表した最新の「アパレルECの市場規模」と「EC化率」の推移データをグラフと表にまとめましたので紹介いたします。

経済産業省の最新の調査結果より引用:「令和7年度 電子商取引に関する市場調査 報告書(経済産業省)

アパレルECの2025年の市場規模は2兆8,941億円

2015-2025年アパレルEC化率推移

青色の棒グラフ=>EC市場規模(単位:億円)
オレンジ色の折れ線グラフ==>EC化率(単位:%)

EC市場規模 EC化率
2015年 1兆3,839億円  9.04%
2016年 1兆5,297億円  10.93%
2017年 1兆6,454億円  11.54%
2018年 1兆7,728億円  12.96%
2019年 1兆9,100億円  13.87%
2020年 2兆2,203億円  19.44%
2021年 2兆4,279億円  21.15%
2022年 2兆5,499億円 21.56%
2023年 2兆6,712億円 22.88%
2024年 2兆7,980億円 23.38%
2025年 2兆8,941億円 24.08%
グラフを見てわかる通り、アパレルECの市場規模は右肩上がりで、EC化率も24.08%と全産業の平均EC化率の9.80%を大幅に上回っています。特にコロナ禍の2020年には多くの消費者がECシフトしたことで、5%以上も伸長しました。

アパレルECの市場規模とEC化率が高い要因は5つあると筆者は考えます。

◆アパレルEC業界が伸びている5つの要因とは?

① 過去数年間で、アパレルECの管理・運用をカンタンにするツールやソリューションが多く誕生したことで、業界全体で業務効率化が進んだ
② ツールやソリューションの導入によりアパレルECの業務効率化が進み、アパレルECを運営するブランドが増えた
③ アパレルEC各社の戦略により、業務効率化を進めMD(マーチャンダイジング)サイクルを短くすることで、販売機会を増やし売上が増加した
④ 実店舗とECの会員データの統合を進め、CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)を行うことで、ユーザー毎に適した情報をうまく発信し、リピーターが増えた
⑤ ソーシャルコマースの台頭により、SNS上での新たな購買導線が生まれ市場がさらに拡大した

近年のアパレル業界では、新しいテクノロジーに熱心なブランドがデジタル投資に積極的なため、売上を大きく伸ばしている一方で、情報の一元化に苦しむブランドもあり、アパレルECは二極化が進んでおります。

それでは次に、アパレル業界のEC市場ランキングをもとに、上位企業の取り組みについて解説します。

アパレルECの売上高ランキング(2024年9月〜2025年8月のデータ)

日本ネット経済新聞が行った売上高のランキングデータには、最新のアパレルECの売上高のデータ(モールサイトは除く)が発表されております。

◆2025年度のアパレルEC売上高ランキング(1〜50位)

アパレルEC売上高ランキング(2024年9月〜2025年8月)

下記リンク先で無料会員登録すれば記事をご覧いただけますので、興味がある方はぜひ会員登録をお勧めします。自社EC部門では、例年同様にユニクロが2位以降に大きく差をつけダントツの1位を獲得しています。

データ引用先:【「ファッションEC売上高ランキングTOP150」発表】大手は成長継続もEC専業は厳しい結果に

1位のユニクロはオムニチャネル施策により利便性を高める

ユニクロは、自社ECサイトでの販売に力を入れており、ユニクロの下記の最新の決算情報を見ると2026年8月期の国内ユニクロ事業のECの売上高は1,620億円、前期比約6.3%増と上昇しております。

ユニクロでは、オンラインにしかない限定商品を用意したり、店舗で自分のサイズが見つからない場合は、ECサイトでの購入を促し、さらにECサイトで購入した製品の店舗受取を可能にするなどオムニチャネル施策により利便性を高めております。

また、着なくなった服を全国店舗の回収ボックスで受け付け、リユース・リサイクルに活用する「RE.UNIQLO」にも積極的に取り組んでおり、サステナビリティの観点からもブランド価値の向上を図っています。

参考:RE.UNIQLO(ユニクロ公式)

2026年8月期の国内ユニクロ事業のEC化率は15%でした。EC売上高とEC化率の推移を見ると、EC売上高は堅調に推移しているものの、ここ2〜3年ほどは店舗の売上構成比率が高まり、EC化率は下降傾向にあります。

◆国内ユニクロ事業のEC売上高とEC化率の推移

国内ユニクロ事業のEC売上高とEC化率の推移(-2026)

出典:「国内ユニクロ事業、2026年のEC売上高は1620億円で6.3%増、EC化率は15%」(ネットショップ担当者フォーラム)

2位のアンドエスティHDはEC売上が堅調

「グローバルワーク」「niko and …」など多くのブランドを展開するアンドエスティ(旧アダストリア)は、2025年9月にホールディングス体制へ移行し、「株式会社アンドエスティHD」に称号変更しました。

ECは売上増を続けており、特にコロナ禍の2020年には一気にEC売上が増加し、2026年2月期の同社のEC売上高は、前期比4.8%増の763億でEC化率は28.8%。また、自社ECサイト「and ST(アンドエスティ)」の会員数も前期末時点より200万人増の2,170万人に達しており、堅調な足取りで伸びております。

参考:2026年2月期 通期決算説明会資料(株式会社アンドエスティHD)

同社のEC売上拡大の大きな要因の一つが、「and ST」のオープン化(モール型ビジネスへの展開)です。

自社ブランドだけでなく外部ブランドも出店できるプラットフォームとして「and ST」を開放し、ニューバランスジャパン、ユナイテッドアローズ、ADAM ET ROPÉなど異なるブランドとの「共創」を積極的に推進しております。取り扱いブランド数と流通総額は想定以上に伸長し、2026年2月期のGMVは462億円に達しています。

引用:「アンドエスティ、「and ST」オープン化加速 UA、JUNら参加、GMV1000億円へ」(日本ネット経済新聞)

また、サステナビリティへの積極的な取り組みを進めており、全国の店舗に回収ボックスを設置し、自社ブランド以外を含む衣料品を回収してリユース・リサイクルに活用する「Play Cycle!」を展開しています。

累計回収量は212(約69万枚)に達しており、ユニクロのRE.UNIQLOと並ぶ、アパレル大手によるサーキュラーエコノミーの代表的な取り組みとして注目されています。

参考:Play Cycle!(株式会社アンドエスティHD)

ユニクロやアンドエスティなどのランキング上位企業に共通することは、上位企業の自社ECサイトはいずれも実店舗とWEBのデータを一元化することで、顧客の囲い込みに成功している点です。これらの上位企業は、業界の平均伸び率を遥かに上回る勢いで成長しています。

ただし、実店舗とWEBのデータの一元化の開発には、高いハードルがあり、そのハードルを越えた企業こそがアパレル業界での勝ち組となるのです。

それでは、次にアパレルECが抱える課題について詳しく解説いたします。

アパレルECの3つの課題

アパレルECの市場規模やランキングを把握したところで、それではアパレルEC業界には、どのような課題があるのでしょうか?具体的に解説します。

課題① アパレルECの新たな成長領域「リユース・リコマース」への進出

アパレルEC業界において、いま最も注目すべきトレンドの一つが「リユース・リコマース」市場への参入です。フリマアプリの普及で消費者のリユース習慣が定着した現在、ブランド自身がこの市場を取り込むことができるかどうかが、重要な経営課題となっています。

リユース経済新聞の調査によると、2025年のリユース市場規模は前年比6.2%増の3兆4,636億円に達し、2009年以降16年連続での拡大を記録しました。2030年には4兆円、2040年には5兆円規模への拡大が予測されています。

◆リユース市場規模の推移と予測

リユース市場規模の推移と予測(2025)

出典:「リユース業界の市場規模推計2026(2025年版)」(リユース経済新聞)

特に注目すべきは、商材別で「衣料・服飾品」が前年比5.5%増の6,741億円と好調を維持している点です。

物価上昇による消費者の生活防衛意識の高まり、インバウンド需要の回復、そしてサステナブル志向の浸透が重なり、アパレルのリユース需要は一次流通(新品)の成長率を2〜3倍以上のスピードで上回って拡大しています。

これまで、リユース市場の牽引役はメルカリなどのフリマアプリ(CtoC)でしたが、近年ではリユース企業・一次流通企業によるBtoC販売がCtoCの成長率を上回るフェーズに移行しつつあります。この流れを受けて、アパレルブランド自身がリユースに乗り出す動きが加速しています。

ブランド主導でリユースを取り込む動きも広がっている

リユース市場の拡大を受けて、アパレルブランドが取り組んでいる具体的なアクションは、主に以下の3つです。

① 自社ECサイトへの「リユース」専用カテゴリの新設

自社ECサイト内にリユース品の販売ページを設けることで、新品と中古品を一つのブランド体験としてシームレスに提供します。

◆ヒマラヤスポーツの公式リユースサイト

ヒマラヤスポーツ公式リユースサイト

画像引用:HIMARAYA NEXT USED

第三者のフリマプラットフォームを介さず「ブランド公式」として運営できるため、品質管理やブランドイメージを守りながら新たな収益源を確保できるメリットがあります。

② 回収・メンテナンス・再販による独自の循環サイクルの構築

この動きの代表例として挙げられるのが、ユニクロが推進する「RE.UNIQLO」です。全国のユニクロ・ジーユー・プラステ店舗に設置した回収ボックスで着なくなった服を回収し、リユース・リサイクルの2経路に仕分けされます。

◆ユニクロ店頭に設置されている回収ボックス

RE.UNIQLOのリサイクルボックス

リユース可能なものはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など世界中のNGO・NPOを通じて難民支援・災害支援に活用し、リサイクルできるダウン素材は新製品の原料として再生しています。

さらに「RE.UNIQLO STUDIO」や「UNIQLO古着PROJECT」として、回収した服に新たな価値を付加して顧客に再販する取り組みも進めており、単なる廃棄削減にとどまらないブランド価値向上につながっています。

参考・画像出典:RE.UNIQLO(ユニクロ公式)

③ 再生素材・サステナブル素材の積極活用

昨今、アパレル業界においてはサステナブル(持続可能な)ファッションへの取り組みが注目を集めております。環境省はサステナブルファッションへの取り組みとして、以下のサイトを立ち上げ、消費者にもサステナブルファッションへの啓蒙活動の普及に努めております。

参考:「サステナブルファッション」(環境省)

同サイトでは、消費者に対して以下の5つのアクションを呼びかけており、徐々に消費者の間にもサステナブルの意識が浸透しつつあります。

◆サステナブルファッションへの取り組み

・今持っている服を長く大切に着よう
・リユース(再利用)でファッションを楽しもう
・先のことを考えて買おう(その服が本当に必要かどうか?見極める)
・作られ方をしっかり見よう(再生原料の利用等)
・服を資源として再活用しよう

このような消費者意識の変化は、アパレルブランドにとってもビジネス上の変化をもたらしています。

回収した服の素材を新製品に循環させることで、原材料コストの削減とともに「環境に配慮したブランド」としての訴求力を高められます。ESG意識の高い消費者層への訴求として、ブランドの長期的な競争力強化にもつながります。

株式会社ZOZOもコーポレートサイトで「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」や「廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築」を掲げており、アパレル大手においてサステナビリティへの取り組みはもはや任意ではなくなっています。

参考:2022年4月19日 プレスリリース「サステナブルなファッション産業への移行推進を目指す 「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」に正会員として加盟」(株式会社ZOZO)

ただし、「一着を長く着る」「リユースの促進」「環境に優しい製造工程」といった取り組みは、短期的にはアパレル事業者の売上・利益を押し下げる側面もあります。

サステナビリティとビジネス成長を両立させるには、リユースを単なるコストではなく新たな収益モデルとして設計する発想の転換が求められます。ブランド主導のリコマースは、まさにその答えの一つといえます。

公式リユースを自社ECで実現するソリューションも登場

このようなブランド主導のリユース展開を技術面で支えるソリューションも登場しています。

例えばFree Standard株式会社が提供する「Retailor(リテーラー)」は、ブランド・メーカーが自社ECサイト上に「リユース機能」を実装し、独自の二次流通市場を構築できるリコマースオペレーティングシステムです。

リユース品の回収から、真贋確認・メンテナンス・保管・撮影・商品登録・販売まで、リコマース運営を一気通貫でサポートします。2022年のサービス提供開始以降、大手ブランド・メーカーを中心に導入実績を積み上げております。

参考:Retailor(リテーラー)(Free Standard株式会社)

ブランドが自社でリセールを運営することで得られるメリットは、収益創出だけではありません。第三者プラットフォームに依存しないためブランドイメージを保護でき、新規顧客の獲得や休眠顧客の掘り起こしというCRM上の効果も期待できます。

自社ECとリユースを統合することで、顧客の「購入→使用→売却→再購入」というサイクルをブランドが丸ごと囲い込む新しいビジネスモデルを実現することが可能になるのです。

新品と中古品の併売はカニバリズムを起こすのか?

自社ECサイトにリユース品の販売カテゴリを設けることに対して、「新品の売上を食ってしまうのでは」と懸念する声もあります。

しかし結論から言えば、新品とリユース品の併売がカニバリズム(自社内での顧客の奪い合い)を引き起こす可能性は低く、むしろ総売上の拡大につながると考えられます。

その理由は、新品とリユース品を求める顧客層と購買目的が根本的に異なるためです。新品を購入するユーザーは最新トレンドや新鮮なコンディションを求めているのに対し、リユース品を探すユーザーは価格の手頃さや、すでに廃番になった過去のデザインを目当てにしていることが多いです。

つまり、両者はそもそも別の動機で購買行動を起こしており、競合するのではなく相互に補完し合う関係にあるのです。

◆新品・中古品の各購買層が市場全体を拡大させる

新品・中古の各購買層が市場を拡大させる

さらにリユース品を入り口にブランドを知った新規顧客が、次の購入で新品を選ぶというアップセルの動線も期待できます。新品とリユースを一つのブランド体験として設計することで、顧客との接点が増え、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながりやすくなります。

課題② 「ソーシャルコマース」の台頭

近年では、「モールか自社ECか」という従来の二択に加え、第三の販路としてソーシャルコマースが重要性を高めています。特に、2025年6月30日に日本でサービスを開始した「TikTok Shop」は、全く新しい購入体験を提供するチャネルとして注目されています。

◆TikTok Shop

TikTokShopイメージ

画像引用:TikTok Shop

TikTok Shopは、ショート動画やライブ配信を視聴しながらその場で購入が完結する「ディスカバリーEコマース」と呼ばれる新しい購買体験を提供します。ローンチからわずか3ヶ月で国内流通総額が約30億円に達し、売上の約20%をアパレルカテゴリが占めています。

引用:「TikTok Shopの国内市場規模、2026年6月に累計500億円と予測 studio15調査」(ECのミカタ)

さらに、日本ローンチから2025年末にかけて、全体流通総額の約70%がショート動画やライブ配信などのコンテンツを起点とした購入によるものというデータも発表されており、コンテンツの力が購買を直接動かすプラットフォームであることが実証されています。

引用:「TikTok Shop、日本での提供開始から半年が経過。流通総額の約70%が動画やLIVE配信等のコンテンツ起点と判明。 「ディスカバリーEコマース」を体現する成長を実現」(TikTok)

従来の、検索して購入するECと異なり、TikTok Shopは「偶然出会って欲しくなる」という衝動購買を設計できる点が、アパレルとの相性が高い理由です。国内アパレルブランドでもいち早く出店する動きが始まっており、今後の販路戦略において重要性が高まっています。

課題③ AIに選ばれる商品データを整備できるか

これまでのECでは、ユーザーが検索窓にキーワードを入れ、結果の一覧から商品を選ぶのが当たり前でしたが、AIが急速に普及した昨今では、AIとの会話の中で商品を提案してもらい、そのまま購入を検討するという新しい買い方が広がり始めています。

この流れがいち早く数字に表れているのがYahoo!ショッピングです。LINEヤフーによると、AIエージェントを経由した取扱高の比率は、2026年7月時点で約20%に達しています。さらに2026年5月には、ChatGPTの「Apps in ChatGPT」に総合ECモールとして初めて対応しました。ユーザーはChatGPTとの会話の中で、Yahoo!ショッピングの商品提案を受けられます。

引用:「AIエージェントで『買う』と『売る』はどう変わる? Yahoo!ショッピングが目指す新たな買い物体験」、「Yahoo!ショッピング、『Apps in ChatGPT』に対応し、アプリ連携を開始」(LINEヤフー株式会社)

また、ZOZOは中期経営計画の中で、AIエージェントの普及によって「検索→クリック→購入」という流れが「ニーズを伝える→提案される→購入する」に置き換わる可能性があるとし、「検索される場」ではなく「提案の場」を目指す方針を打ち出しています。

ただしZOZO自身も、ChatGPTやLINE経由の送客効果は現時点ではまだ限定的としています。AIエージェントは「今すぐ売上が伸びる施策」ではなく、数年後の購買導線の変化に備える取り組みと捉えておきましょう。

参考:「AIエージェント時代、『検索はされなくなる可能性』にZOZOはどう対処する?『『提案の場』になるチャンスをつかみに行く』」(ネットショップ担当者フォーラム)

では、アパレル事業者は何から備えればよいのでしょうか?筆者は、まずはAIが正しく読み取れる商品データを整えることだと考えます。

AIエージェントは、商品ページに書かれた情報をもとに「この人の条件に合うか」を判断します。一方、アパレルの商品情報は、「きれいめ」「ゆったり」「春先に重宝」といった感覚的な表現が多くなりやすく、素材・サイズ・着用シーンなどの情報が商品ごとにバラバラだと、AIは比較も提案もできません。

そこで、AIが正しく読み取れるように、商品情報を以下のように整えます。

◆AIエージェントに読み取ってもらうために整えるべき商品情報の例

項目 整備のポイント
素材・混率 「綿100%」など、全商品で同じ書式で記載する
サイズ・実寸 着丈・身幅などを数値で、項目名を統一して記載する
シルエット・着用シーン 「オフィス」「休日」など、選択肢を決めて分類する
カラー 商品名とは別に、色を独立した項目として持つ

これは、検索で見つけてもらうための従来の商品情報整備、つまり「ささげ業務」の延長線上の取り組みといえます。商品データを整えたブランドほど、今後はAI経由の購買導線でも有利になると考えられます。

複数チャネル展開で深刻化する「在庫の分散管理問題」

昨今のアパレル業界において、自社ECサイトに加え、ZOZOTOWNや楽天、Amazonといったモール、さらにはSNSコマースと、アパレルブランドが複数の販路を持つことは今や当たり前になっています。

しかし、販路が増えるほど売上の最大化が期待できる一方で、深刻な問題として浮上するのが在庫の分散管理です。

例えばZOZOTOWNに出店する場合、販売する在庫はZOZOが運営する倉庫(ZOZOBASE)に納入する必要があります。自社ECサイト用の在庫とは物理的に切り離されるため、「自社ECでは売り切れなのにZOZO側に在庫が余っている」といった機会損失が発生しやすくなります。

◆ZOZOTOWNと自社ECサイトを展開するブランドの在庫問題


このように在庫情報を一元化できないと、在庫が分散して売上の最大化が困難になります。

特にアパレル商品はシーズン性が強いため、売れ残りが発生すると大きなロスとなります。そのため、在庫の一元管理や効率化、あるいは運用フローの構築が必要とされるのですが、システムでの実現が困難であり、ボトルネックとなる企業が多いのが現状でした。

しかし、この課題の解決のために、株式会社ZOZOは「Fulfillment by ZOZO(フルフィルメント バイ ゾゾ)」というサービスを展開しています。

このサービスは自社ECサイト分の在庫も全てZOZOTOWNの倉庫に(ZOZOBASE)預け、在庫一元管理をします。あとはZOZOBASEが、在庫をまとめて管理をしてくれるので、販売機会を逃さず、効率的な販売が可能になるのです。さらにZOZOBASEの在庫がなくなった場合、店舗の在庫を引き当てることも可能です。

◆Fulfillment by ZOZOによる在庫の一元管理のビフォーアフター

参考:Fulfillment by ZOZO

ただし、現実にはZOZOTOWN以外にも楽天・Amazon・自社ECと複数のモールを並行展開しているブランドも多く、その場合は当然ながらFulfillment by ZOZOだけでは対応しきれません。そこで重要になるのが、OMS(受注管理システム)や在庫一元管理ツールの活用です。

これらを導入することで、チャネルをまたいだ在庫情報をリアルタイムで統合管理し、どの販路で注文が入っても在庫を最適に引き当てることが可能になります。

複数チャネルへの展開を進めるアパレルブランドにとって、在庫管理システムの導入はEC戦略の根幹をなす重要な経営判断といえるでしょう。

アパレル担当者が目指すべき「ZOZOTOWNのWEBマーケティング」

アパレルECで自社サイトの売上を伸ばすうえで、ZOZOTOWNのWEBマーケティング戦略は格好のベンチマークといえます。

例えば一つ具体例を挙げると、ECサイトにおいて、売上を高めるための徹底的なチューニングが施されています。

ZOZOTOWNは初回購入を絶対に失敗させないように、ECサイトで購入を戸惑っているユーザーに対しては、チャットボックスを表示して顧客対応したり、初めてサイトを利用するユーザーや、使えるお金の少ない10代のユーザーに対しても購入しやすいようにクーポン券の利用を促したり、定期・不定期でセールやキャンペーンを開催するなど、売上を上げるための改善が積み重ねられているのです。

◆ZOZOTOWNの施策例

zozotownキャプチャ

さらに、集客面では、同社が運営するファッションコーディネートアプリのWEAR(ウェア)が強力な集客ツールとなっております。ダウンロード数は1,900万を超え、世界中のユーザーが利用しているアプリです。

WEARをダウンロードしたユーザーは、コーディネートの写真をアップロードし、公開することができます。そしてユーザーの中にはフォロワーが多い有名人(ウェアリスタ)がおり、フォロワーは彼らのチョイスした商品をWEARと連携しているZOZOTOWNで、気になった商品をスムーズに購入できる仕組みになっており、ZOZOTOWNでの売上を大きく伸ばす一因になっているのです。

◆ウェアリスタによる投稿

ウェアリスタによる投稿(WEAR)

出典:ファッションコーディネート – WEAR

2025年10月には、WEARの新機能として、ファッション特化AIによる「着回し提案」機能が導入されました。ユーザーが特定のアイテムを選ぶと、AIがそのユーザーの好みのジャンルや体型の悩みに合わせたコーディネートを提案してくれます。

提案に使われる画像はWEAR上の1,400万件以上のコーディネート画像から選ばれ、ZOZOTOWNの商品データとも連携しているため、気に入ったアイテムをそのまま購入できる導線が設計されています。

WRARは単なるコーディネートアプリにとどまらず、発見から購買までを一気通貫でつなぐプラットフォームへと進化しています。

引用:2025年10月15日 プレスリリース「WEAR、ファッション特化のAIが進化 新機能「着回し提案」を導入」(株式会社ZOZO)

このように、ZOZOは新しい取り組みに貪欲な企業で、新しいサービス開発や改善を次々と行っており、また社員の自社サービスを改善する思いは強いものがあります。こういった取り組みの結果、高い業界シェアを獲得しているのです。

アパレルECの最大の弱点「サイズ問題」の解決策

EC化が進んでいるアパレル業界ですが、実はアパレルはECサイトとは最も相性の悪い業界の一つです。

店舗であれば試着してサイズ感を確かめられますが、ECサイトでは商品を手に取ることも着ることもできません。採寸データをどれだけ丁寧に記載しても、「買ってみたらサイズが合わなかった」「イメージと違った」という返品・交換はアパレルECにとって慢性的な課題です。

それでもアパレルのEC化率が着実に伸びてきた背景には、この問題を解決するためのソリューションが年々充実してきたことがあります。

例えば株式会社メイキップが提供する、サイズレコメンドサ-ビス「unisize」というサービスは、アプリでカンタンな質問に答えることで、自分の身体にあったサイズを推奨してくれるサービスです。

◆unisize

画像引用:unisize公式サイト

また、Nike.comでは1回に限り「返品やサイズやカラーの交換」を無料で行っており、NIKEのECサイトで靴を買うと返品に必要な書類が梱包されており、ユーザーはサイズ感の不安を払拭する努力を行っており、とても満足度の高いサービスになっています。

◆商品と一緒に梱包される返品に必要な用紙や着払い用紙

そして近年、このようなサイズ問題の解決策として急速に注目を集めているのが「ARバーチャルトライオン(仮想試着)」です。

スマートフォンやPCのカメラ機能とAR技術を組み合わせることで、ユーザーが実際に服やアクセサリーを身につけたような状態を画面上でリアルに確認できます。正面だけでなく側面・背面の着用イメージも確認でき、サイズ感だけでなく色味や全体のシルエットまで把握できる点が従来のサイズ表記との大きな違いです。

ECサイトにバーチャルトライオンを導入することで、購入率の向上や返品率の低下、サイト滞在時間の延長といった効果が期待でき、GUCCIやAmazonなど国内外の大手ブランドが積極的に導入を進めています。

バーチャルトライオンについては、過去の記事で詳しく解説しておりますので、こちらもぜひご覧ください。

過去記事:「バーチャルトライオン」はオンライン試着を実現するAR機能

今後、ARバーチャルトライオンの精度と普及がさらに進めば、ECでは試着できないという最大のハードルは大きく低下し、アパレルECの購買体験は実店舗により近いものへと進化していくでしょう。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。