建材業界でECを始めるメリットと必要な3つのEC機能


DX促進におけるデジタル化の流れの中で、卸売事業に携わる方であればECシステムを検討したことがあるのではないでしょうか。近年は、ITの導入が遅れていると言われている建材業界でも、大手企業を中心にペーパーレス化をはじめとするデジタル化の取り組みが進み始めています。現在FAXや電話による受発注で取引を行っている中小規模の建材卸事業者の方も、EC化の検討を始めることをおすすめします。

建材卸事業のECでは、以下の3つの要件を満たす機能を備えたECシステムが必要です。

◆建材卸事業のECシステムに求められる3つの要件

要件① 多くの商品を登録・管理できること
要件② BtoB取引の業務フローに対応できること
要件③ FAX/電話による受発注もECサイトで一元管理できること

「ECサイトを開設するのにFAX/電話の受発注も残す必要があるの?(条件③)」と思われるかもしれませんが、顧客のニーズや誤発注などのトラブルにもスムーズに対応できるようにFAX/電話のチャネルも残しつつ、ECシステムの「代理注文機能」を使って情報をデジタルで管理する仕組みを構築することが重要になります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、建材卸事業でECを始めるメリットと必要な3つのEC機能について解説します。

新設住宅着工戸数の減少とその背景

下図は、国内の新設住宅着工戸数に関する2003~2022年度の推移を示したグラフです。

新設住宅着工戸数の推移(2003~2022年度)

出典(グラフ):国土交通省「令和5年度 住宅経済関連データ

グラフからは、2006(平成18)~2009(平成21)年度にかけて大きく減少した後、復調することなく停滞気味にある住宅建設業界の現状が見て取れます。

回復の兆しが見えない背景として以下の3つが挙げられます。

背景① 少子高齢化

日本では少子高齢化が進行しており、若年層の人口が減少しています。そのため、新たに家を購入する人々が減り、新設住宅の需要が低下しています。特に地方の高齢化が顕著なことも住宅市場に大きく影響していると思われます。

下図は、厚生労働省が公開している日本の人口と人口構造の推移を示したグラフです。推計では、団塊世代の全員が75歳以上となる2025年には75歳以上が全人口の約18%を、2040年には65歳以上が約35%を占めることになります。

◆日本の人口の推移と人口構造の変化(1950~2070年)

日本の人口の推移

出典(グラフ):厚生労働省「我が国の人口について|人口の推移、人口構造の変化|日本の人口の推移

背景② 都市部の供給過剰

都市部では需要に対して住宅が供給過剰の状態になっており、新設住宅の着工数は増えにくい状況です。

下図は、東京都における建設中の住戸数の推移を示したグラフで、直近10年間の建設中の住宅数は増加傾向にあります。また、2021年には都心3区(中央区、港区、千代田区)に全体の約半数が集中していることが分かります。

市街地再開発で建設中の住戸数(都心3区:中央区、港区、千代田区)

市街地再開発で建設中の住戸数

出典(グラフ):日本経済新聞「東京の再開発、住宅なお活況 供給過剰に懸念」(2022年3月3日掲載)

背景③ 住宅需要動向の変化

リモートワークの普及による都市部から郊外や地方への移住者の増加、環境意識の向上、建材価格の高騰などにより、省エネ化やリノベーションを施した中古住宅の需要が増えていることも、新築住宅の需要減少に影響しています。

株式会社矢野経済研究所の調査結果では、中古住宅を事業者が買い取り、リフォームやリノベーションを行って再販する「中古住宅買取再販」市場は年々拡大しており、2030年には2022年比22.0%増の5万戸になると予測されています。

参考:矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2023年)」(2023年10月5日発表)

国内の新設住宅の着工数が減り、停滞している建設業界における喫緊の課題はコスト構造の改革です。改革にはITの導入と活用が不可欠となるでしょう。

建材業界のIT導入が遅れている理由

建材業界は特にIT化が遅れている業界の一つで、中小規模の建材卸企業の多くはほとんどの取引がFAXで行われています。

なぜFAXなのかというと、現在は紙の帳票ベースの業務フローになっており、メールで注文を受けた場合も紙に印刷する手間が発生するため、最初から紙で受け付けることができて、メールと同じように送信日時や送信者の情報も記録されるFAXのほうが便利だからです。

しかし、人手不足の問題に直面している建築業界にとってITの導入と活用は急務です。すでに大手企業では、ペーパーレス化をはじめとするデジタル化の取り組みを始めており、中小企業もデジタルベースの取引にも対応していくことをおすすめします。

BtoB向けECの市場規模は拡大している

下図はBtoB向けEC(以下、BtoB-EC)の市場規模の推移を示したグラフです。

◆BtoB-EC市場規模の推移(2018~2022年)

BtoB-EC市場規模の推移2(-2022)

出典(グラフ):経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2023年8月発表)

グラフを見ると、2020年に始まったコロナ禍を境にBtoB-ECの市場規模は拡大に転じています。それに伴いBtoB-ECに特化したソリューションも増えたこともあり、多くの商品を取り扱う必要がある建材業界でも少しずつEC化が進み始めています

ECの7つのメリット

建材卸事業でECを始めることによりさまざまなメリットが得られますが、今回はECにおける基本的な7つのメリットについて説明します。

メリット① ヒューマンエラーによる誤発注を減らす

FAXや電話による受発注の場合、どうしても記入漏れや聞き間違いなどのヒューマンエラーによる誤発注が生じやすくなります。

ECでは、例えばECサイトの情報入力画面に入力支援機能を組み込んだり、ECシステムに複数名で入力情報をチェックするための承認フロー機能を実装したりできるため、ヒューマンエラーを防いで誤発注を低減できます。

メリット② 簡単に商品を検索して注文できる

建材業界の特徴の一つとして、取り扱い商品点数が非常に多いことが挙げられます。そのため、従来の受発注フローでは、顧客は毎回紙のカタログや資料で商品を探したり、よく注文する商品の型番をメモや暗記したりした上で、注文票を起票する必要があります。

ECでは、ECサイトで商品を検索してそのまま注文票を作成できるため、顧客は商品情報を転記する必要がなくなり、新しい商品も探しやすくなります

メリット③ リアルタイムで在庫状況を把握できる

ECサイトと在庫管理システムを連携させることで在庫情報をリアルタイム(あるいはほぼリアルタイム)で共有することができるため、二重発注や在庫切れによるトラブルを防ぐことができます。

また、顧客は発注前にECサイトで商品の在庫状況を確認したり、余裕を持って問い合わせしたりすることが可能になるため、取引をスムーズに進めることができて顧客満足度の向上にもつながるでしょう

メリット④ 24時間365日、いつでも注文できる

厳しい納期に追われる建設現場では、至急で資材を追加する必要が生じることも少なくありません。従来のFAX注文でも発注はいつでもできますが、在庫の有無の回答は翌営業日となってしまいます。

ECでは、顧客はいつでもECサイトで商品の在庫の有無を確認した上で商品を注文することができるようになります。そのため、建材卸事業者からの回答を待たずに迅速な資材の手配が可能になるなど、顧客の業務効率と利便性の向上に寄与します。

メリット⑤ ペーパーレス化で業務を効率化できる

商取引では注文書、納品書、請求書などの多くの帳票が必要になり、取引終了後も一定期間保管しておく必要があります。ECでは、取引における全ての帳票と履歴をはじめとするあらゆる情報を電子データで統合管理されるため、必要な人が、必要な情報を、いつでも素早く検索・閲覧できるようになります。

ECはペーパーレス化の第一歩でもあります。ペーパーレス化により、書類の紛失や帳票の誤発送などのリスクを低減し、書類や帳票の受け渡しや管理に要していた時間を削減できます。また帳票類の保管スペースが不要になるなど、業務効率化とコスト削減を同時に実現できます。

メリット⑥ デジタルデータを分析して活用できる

ECサイトの取引履歴や顧客の行動データなどを分析することで、最適なターゲティングとマーケティング活動が行えるようになります。

例えば、顧客の取引履歴と閲覧履歴を組み合わせて顧客のニーズや関心を分析することで、顧客ごとに最適化した提案やキャンペーンを展開してクロスセル/アップセルの新たな機会を創出することも可能になります。

BtoC向けECで用いられている会員向けのキャンペーンやレコメンドなどの手法を、建材卸事業でも利用できるようになるというわけです。

メリット⑦ 取引先の新規開拓やBtoC取引も可能になる

取引先専用(クローズド)サイトとは別に、一般向け(オープン)サイトを開設することで、新規の取引先や一般消費者の注文も受注できるようになります。例えば、工業用間接資材の通販サイト「モノタロウ」では、事業者だけでなく一般消費者にも一部の商品を販売しています。またインターネットですから、海外向けサイトを開設するなどして、市場を海外に広げることも可能になります。

参考:公式通販サイト「モノタロウ」

BtoBでは新規取引の場合は審査が必要になるケースがほとんどだと思います。ECで新たにBtoB取引を行う場合には、必ず顧客に取引先登録をしてもらった上で審査の手続きを行うか、少額取引であればクレジットカード決済を選択してもらう必要があります。

建材業界のECシステムに求められる3つの要件

建材卸事業のECでは、以下の3つの要件を満たす機能を備えたECシステムを導入しましょう。

要件① 多くの商品情報を登録・管理できること

建材卸事業では取り扱い商品点数が非常に多いため、多くの商品情報と商品ごとの色、素材、サイズといった複数のバリエーション情報を登録・管理するための機能が必要です。

要件② BtoB取引の業務フローに対応できること

高額取引などにおける誤発注やトラブルを避けるため、注文受付時に担当者だけでなく上長や関係者などの複数名による承認フローの機能と、役職や役割に応じた権限を設定・管理する機能が必要になります。

要件③ FAX/電話による受発注もECサイトで一元管理できること

ECサイトの開設後は、基本的にはECサイトの利用を促進していきたいところですが、取引先企業によっては従来のFAX/電話による対応を求められる場合もあるでしょう。そのような場合もECサイトと同じフローで受発注業務を行うために、事業者側がECサイトで顧客の代わりに注文登録を行って発注処理を進めるための「代理注文機能」が必要になります。

建材業界のECサイト運営における2つの注意点

建材卸事業のECサイト運営では、以下の2つの点に注意する必要があります。

注意点① 受注残の管理方法

建材業は資材高騰などの外的要因の影響を受けやすい産業です。

参考:日経クロステック「2023年の建築界、資材高騰の次に立ちはだかる2つの難題」(2023年1月6日掲載)

ECサイトでも、「受注残管理機能」が重要になります。受注残とは、商品を受注したもののまだ顧客に納品(出荷)できていない状態を指し、未出荷の商品は「受注残」として管理します。例えば1回の注文で商品を5個受注し、そのうち4個は在庫から発送できた場合には、その注文は「受注残1」となります注文は受注残がゼロになるか、キャンセルされるまで完了しません

建材卸事業の取引では受注残が頻繁に発生しやすいため、ECサイトか基幹システムのどちらかで受注残管理を行い、システム間でデータ連携を行う必要があります。ECサイトの受注残管理については、以下の関連記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:ECサイトと基幹システムの連携から「受注残」を考える

筆者は、受注残管理機能はECサイトではなく、基幹システムなどのECサイト以外のシステムで管理する方が良いと考えます。なぜなら、ECサイトは変更や更新が比較的多く、また24時間365日の稼働が基本となるため、あくまでもフロントサイドの処理に絞って複雑化させないようにしたほうが、安全に運用できると言えるからです。

注意点② 木材などの不定貫商品の管理方法

「不定貫」とは、同じ品目でもサイズや重量が一定ではなくばらつきがある商品の総称で、例えば個体ごとにサイズや重さが異なる魚なども不定貫に該当します。対して、時計や財布などのように同じ品目であればサイズや重量が一定である商品は「定貫」と呼ばれます。

木材などの不定貫商品をECサイトで販売する場合には、個体ごとにサイズや重量などのスペック情報を登録・管理する必要があるため、ECシステムの導入前に、不定貫商品の有無や、ECで取り扱う商品などについて検討しておくようにしましょう。

最適なECプラットフォームを選ぶ

建材卸事業のECシステムの導入を検討しているのであれば、インターファクトリーのECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」がおすすめです。

建材卸事業のECに必要な3つのEC機能を備え、個別カスタマイズにも柔軟に対応できるBtoBにも強いクラウドサービスです。

ebisumartの機能とBtoB-EC導入事例の詳細については、下記の公式サイトをご確認いただき、お気軽にご相談ください。

公式サイト:「ebisumart|クローズドWEB EDI スモールB向けECサイト 中・大規模ECサイト構築

また資料では、建築資材・材料業界の環境の変化を乗りこなせる建材DXの方法を、事例も交えて紹介しています。

資料請求:建築資材・材料業界向け資料


セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。