オーダースーツECの3つの採寸方法と必要機能を徹底解説

オーダースーツEC販売は一般の小売とは異なる難しさがあります。そもそも、スーツは他のアパレル以上にシビアな「採寸」が求められ、生地や仕様などのオプションも多い商材です。さらにオーダースーツの場合には、受注後に製造・検品・出荷といった一連の工程があります。

そのためECシステムでは、「どのように採寸するか」「生地や仕様をいかに効率よく選択できるか」「後工程とどのように情報共有するか」という部分の設計が必要になります。

また、オーダースーツECでは、次の3つの採寸方法が提供されています。

◆オーダースーツECの3つの採寸方法

① 来店採寸
② 採寸ガイドに沿って自己採寸
③ サンプルを送付して採寸

これら3つは、「採寸を誰がどのように行うか」という点が異なります。

実店舗の有無や顧客層、販売規模によって最適なサービスが異なるため、オーダースーツECを始める際には、最初にどの採寸方法を軸としてECを運営していくかを決めておくことで、要件定義や構築方法の検討がスムーズになります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、オーダースーツECの3つの採寸方法と構築方法、必要なEC機能を紹介します。

オーダースーツECの3つの採寸方法

オーダースーツECでは、「どのように採寸するか」と「サイズ違いのリスクをどのように管理するか」という点が重要になります。

ここでは、「どのように採寸するか」を軸に、オーダースーツECで採用されている3つの採寸方法を紹介します。

◆オーダースーツECの3つの採寸方法

採寸方法 採寸する場所(人) ECで重要な要素 向いているケース 注意点
① 来店採寸 実店舗(店舗スタッフ) 来店予約の導線/採寸データの登録・管理/受注データとのひも付け 実店舗があり、サイズ違いなどのリスクを避けたい 顧客に来店して採寸してもらわなければ受注できない。店頭でのオペレーションコストがかかる
② 採寸ガイドに沿って自己採寸 自宅など(顧客) 採寸ガイド(動画・図解)/ビジュアルシミュレーター/入力支援/確認ステップ 実店舗がない、ECだけで完結する形で売上につなげたい 採寸ミスによる問い合わせ、お直し・補正などの対応コストが発生しやすい。採寸ガイド、データ入力時の支援・チェック機能の実装が必要
③ サンプルを送付して採寸 サービス拠点(ECスタッフ) サンプルの送付手順の作成/受け取り・採寸・保管・返却フローの管理/進捗管理 顧客の負担を減らして、売上につなげたい 物流・管理コストがかかる。預かった採寸サンプルの紛失・破損時のリスク管理が必要

3つの採寸方法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

採寸法補① 来店採寸

1つ目は、顧客に来店してもらって店舗スタッフが採寸し、ECサイトに採寸データを入力して注文を完了してもらう方法です。

顧客にとっては、採寸をプロに任せられるため、サイズ違いなどの不安を抱えることなく商品を購入できる方法です。また、事業者側にとっても、採寸の精度を担保できるため、オーダースーツの完成後のトラブルの発生を軽減できます。

この方法を採用する場合ECサイトには、来店予約機能と受注情報と採寸データをひも付けて管理する機能が必要になります。また、実店舗ではECの売上のために採寸対応が増えることになるため、店頭オペレーションや売上配分などのルールと体制の整備が不可欠です。

この方法は、採寸が購入の前提条件となるため、ECサイトで確実に来店予約をしてもらうための工夫が必要となります。

採寸方法② 採寸ガイドに沿って自己採寸

顧客が自宅で採寸ガイドに従って採寸し、ECサイトで採寸データを入力して注文を完了してもらう方法です。実店舗の有無に関わらず、ECだけで注文まで完結できます

ただし、自己採寸は測定部位の誤りや測り方によるズレが生じやすいため、あらかじめサイズ間違いのリスクを軽減できる仕組みが必要になります。

この方法を採用する場合ECサイトには、採寸ガイド(動画・図解など)、入力支援機能、確認ステップなどの機能を実装し、ミスが起こりにくい、またはミスに気付きやすい環境を提供することが重要です。

また、登録された数値の誤差が大きい場合に備え、相談窓口などを設定するなどアフターサービスを充実させることも大切になります。

採寸ガイドや入力支援機能を作り込むことで、ある程度採寸の精度を高められますが、初期設計や実装のコストが大きくなりやすい点には注意しましょう。

採寸方法③ サンプルを送付して採寸

顧客が自分のスーツ(お気に入りのサイズ感の一着)をサンプルとして事業者に送付し、事業者は届いたスーツのサイズを採寸してECサイトに登録する方法です。

顧客は自分で採寸する必要がないため、購入時の不安感を軽減できます。スーツの場合は特に、採寸に手間がかかり難易度も高いため、自己採寸が不安な人でも購入しやすいECサイトになります。

この方法を採用する場合ECサイトには、サンプルの送付手順の掲載、受け取り・採寸・保管・返却までの一連の業務を標準化と顧客にも進捗を通知するための機能が必要になります。

この方法では、サンプルの物流・管理コストが発生するだけでなく、サンプルスーツの紛失・破損のリスク管理が必要になる点にも留意しましょう。

オーダースーツのECサイトに必要な5つの機能

ここでは、オーダースーツECサイトに必要な5つの機能を紹介します。

機能① ビジュアルシミュレーター

ビジュアルシミュレーターは、ECサイトで、「カスタマイズする楽しみ」を演出して購入時の不安を解消し、購入を強力に後押しできる機能です。

平らな生地サンプルだけで、完成品のスーツをイメージするのは難しいですが、選んだ生地がジャケットの形になり、ボタンやポケットの形がリアルタイムで画像に反映される仕組みがあることで、完成したスーツをイメージしやすくなります。

例えば「ONLY(オンリー)」のECサイトでは、カスタマイズ画面でオプション(襟の形、裏地の柄、ボタンの種類など)を選択すると、すぐに画像に反映されます。

◆ビジュアルシミュレーター|ONLY(オンリー)

Onlyのビジュアルシミュレーター

引用(画像):オーダースーツ・スーツの「ONLY」公式通販 ※一部筆者加工

ビジュアルシミュレーターでは、イメージ違いによるキャンセルやトラブルを防ぐとともに、デザインを試行錯誤する楽しさという体験価値を提供できます。顧客に「自分だけの一着」という実感を持ってもらうことが、ECサイトの滞在率と成約率の向上につながります。

機能② リアルタイム見積もり

ECサイトでは、最後の商品をカートに入れたら予想外の高額な合計金額が表示されると、カゴ落ち(離脱)につながりやすくなります

特にオーダースーツは、ベースの生地に、裏地、ボタン、刺繍、本切羽など多様なオプションを選択していく加算方式が一般的なので、カゴ落ち対策として、オプションを選択すると価格が更新されるリアルタイム見積もり機能を実装すると良いでしょう。

例えば「DANKAN(ダンカン)」のECサイトの商品ページでは、有料オプションを選択した瞬間に合計金額が再計算されて表示されます。

◆商品ページのカスタムオーダー画面|DANKAN(ダンカン)

DANKANの商品ページ

引用(画像):オーダースーツ専門店「ダンカン」公式通販サイト ※一部筆者加工

顧客は予算に応じて金額を確認しながらオプションを比較検討できるため、予算を少し上回っても、より気に入ったオプションを選択しやすくなります。

機能③ マイページでのサイズ情報管理

オーダースーツECで収益の柱となるのは、一度採寸データを登録した顧客のリピート購入です。マイページ内でサイズ情報の管理機能を用意することで、2着目以降はデザインと生地を選ぶだけでオーダースーツを注文できるようになるため、気軽に購入してもらえるようになります。

「TAGARU(タガル)」のECサイトでは、初回購入時に自身のサイズデータや、ジャケットやパンツ、シャツなどのサイズを登録しておくことができます。登録後は、オプションを選ぶだけでスムーズに商品購入が可能になります。

◆マイサイズ登録画面|TAGARU(タガル)

TAGARUのマイサイズ登録画面

引用(画像):東京オーダースーツ&シャツのTAGARU オンラインショップ

顧客にとって採寸不要という気軽さは、ブランドでの購入動機となります。また、事業者にとっては、サイズ不一致による返品リスクを低減させつつ、LTV(生涯顧客価値)を最大化させるための重要な機能と言えるでしょう。

機能④ 高精細な生地ズームや動画コンテンツ

ECサイトで衣類を購入する際の最大のハードルは、商品の手触りや質感が分からないことです。特にスーツの場合には、生地の光沢や織りの細かさが重要になるため、これをECでどのように表現するかがポイントになります。

例えば、「Global Style(グローバルスタイル)」のECサイトでは、高解像度の画像を用意し、精細なズームで生地の発色や織り目まで確認できるようにしています。

オンラインオーダー画面|Global Style(グローバルスタイル)

GlobalStyleの商品ページ

引用(画像):オーダースーツ「Global Style」公式サイト※一部筆者加工

また、静止画では伝わらない情報を補うためには、動画コンテンツが最適です。「DANKAN」では、注文の流れや採寸方法が分かりやすい解説動画を提供しており、静止画では伝わりづらいメジャーの当て方などを丁寧に伝えることで、自己採寸時のミス防止と不安軽減を図っています

動画コンテンツ|DANKAN(ダンカン)

DANKANの動画コンテンツ

引用(画像):オーダースーツ専門店「ダンカン」公式通販サイト
参考:DANKAN 公式YouTubeチャンネル

素材のスペックを視覚的に伝えることは、生地サンプル送付コストの削減にもつながります。

機能⑤ ステップUIの注文フォーム

オーダースーツを注文では、生地、モデル、襟、裏地、ボタンなど、たくさんの項目を指定しなければなりません。これらを1つの画面に詰め込んで表示してしまうと、顧客は情報量の多さに圧倒されて、注文の途中で離脱してしまう場合があります。

そこで重要になるのが、情報を整理しながら一歩ずつ進めるステップUI機能です。ステップUIで、顧客の「決断疲れ」をやわらげて、購入まで迷わないように導くことができます

「Suit Ya」のECサイトの注文フローは、パーツごとに仕様を決めていくステップ型を採用しており、一度に表示される選択肢を絞っています。ステップ全体を一覧表示し、現在地と残りステップ数を一目で把握できることも、ステップUIでは重要なポイントになります。

デザイン選択画面|Suit Ya

SuitYaのデザイン選択画面

引用(画像):オーダースーツ「Suit Ya」公式サイト

ステップ数やパーツの選択肢が多いほど、顧客は迷いやすくなるため、「迷ったらコレ!」「流行ってます」といったコメントや、他の顧客の選択率を表示している点も、決断疲れをやわらげるための優れた設計と言えるでしょう。

実店舗の接客プロセスをECサイト上で再現することで、離脱やカゴ落ちの防止につなげましょう。

オーダースーツのECサイト構築方法は3つ

オーダースーツのECサイトを構築する方法はいくつかありますが、どの構築方法を選ぶかによって、実現できる範囲(機能・運用・連携)が大きく変わります。ここでは代表的な3つの方法を解説します。

方法① ASPサービスを利用する

「BASE」「STORES」「Shopify」などのECプラットフォームを使い、数千~数万円/月程度で比較的手軽にECサイトを開設する方法です。テンプレートを編集したり新規作成したりできるため、見た目をカスタマイズしやすいのが特徴です。

ただし、サービスごとにさまざまな制約があり、機能の追加や高度なカスタマイズができないことが多いため、標準機能で運用できることが前提となります。

オーダースーツECで必要な複雑な注文フォームや後工程へのデータ受け渡し、外部システム連携などは実現が難しい場合も多いでしょう。

ASPサービスは、目安として1日の注文数が10件程度の小規模ECサイトの場合に適した構築方法です

方法② フルスクラッチで開発する

どうしても独自機能をシステム化する必要がある場合に選択される方法です。要件次第では必要な機能をすべて実装できますが、開発費用が数千万〜1億円以上になることも珍しくなく、運用開始後の保守・改修にも継続的なコストが発生します。

また、ECシステムの構築には、決済・セキュリティ・運用・パフォーマンスなど専門的な知識が求められるため、EC専門もしくはEC開発経験が豊富な開発会社を選定するようにしましょう。

フルスクラッチ開発は、独自要件があり、予算を十分に確保できる大規模企業に適した構築方法です。

方法③ パッケージやSaaSを利用してカスタマイズする

中・大規模のECサイトを構築する場合に現実的な選択肢になりやすいのが、パッケージやSaaSをベースに必要な範囲をカスタマイズする方法です。

カスタマイズ規模によっては開発費用が1千万円以上になるケースもありますが、土台となる標準機能を活用しながら、オーダースーツEC特有の要件に合わせて拡張できる柔軟性が強みです。

1日の注文数が100件以上になるような運用では、受注データを他システムと自動連携する必要が出てくる可能性があるため、外部連携が可能で拡張性の高いECシステムを選択することが重要です。

例えば、インターファクトリーが提供する「EBISUMART(エビスマート)」のように、柔軟なカスタマイズが可能なSaaS型ECプラットフォームでは、複雑なカスタマイズやさまざまな外部システムとのデータ連携も実現できます。

EBISUMARTの詳細については、下記公式サイトをご覧ください。

公式サイト:「EBISUMART(エビスマート)」

「入力させる」よりも「ミスをさせない」設計が重要

オーダースーツECで最も恐れるべきことは、「入力してもらえない」ことよりも「入力してもらった内容が間違っている」ことです。

選択するオプションが多く、採寸も難しいため、顧客にどんなに注意を促しても誤入力をなくすことはできません。そのため、ECサイトでミスを起こしにくい・ミスに気付きやすい仕組みを用意することが重要になります。

ミスを起こしにくい・ミスに気付きやすい仕組み(例)

・選択肢を一度に見せず、ステップ形式で順に確定させる
・組み合わせとして成立しない選択肢は、最初から選べないようにする
・最終確認画面で「選んだ内容」を要約し、不正な値に気付きやすくする

このような仕組みを用意して入力ミスを減らすことが、運用負荷の軽減と、購入完了率と顧客満足度の向上につながります。

仕様情報の受け渡しフォーマットを先に決める

オーダースーツECでは、注文を受けたら終わりとはなりません。注文後、受注情報をもとに製造・検品・出荷までスムーズに回すことが、最終的な利益に影響します。

フローの停滞理由としてよくあるのが「ECの注文データを、後工程で参照できない」という状況です。ECサイトでは注文が完了しているのに、工場や社内の担当者が必要な情報を確認できず、チャットやメール、Excel等で情報を補完しなければならないといったケースがあります。

これを回避するためには、後工程に渡す「仕様情報のフォーマット」を最初に決めておく必要があります

◆仕様情報フォーマットの例

項目
サイズ 肩幅、バスト、ウエスト、着丈、袖丈、首回り、ヒップ、わたり幅、股上、股下 など
生地 品番、色、柄、混率、目付(g/㎡)、織り、シーズン など
仕様 襟型、ボタン数、ラペル形状、ベント(センター・サイド)、裏地仕様、裾の仕立て など
オプション 本切羽、AMFステッチ、ネーム、ピンホール、チェンジポケット、ボタン素材 など

例えば、顧客がECサイトで、生地や仕様、サイズなどを選択・入力すると、システム内では指定フォーマットに沿ってデータを整理し、受注データを生成します。次に、その受注データをもとに製造指示データを出力できるようにすることで、後工程のシステムや担当者にスムーズにデータを渡せるようになります。

いずれにしても、後工程は特定のデータだけで、必要な仕様をすべて確認できる状態にしておくことがポイントです。

まとめ

オーダースーツECを成功させるうえでカギとなるのは、採寸を完了させる仕組みと、多くのオプション選択画面で離脱させずに注文を確定してもらうためのUI設計です。一般的な物販ECと同じ感覚で構築してしまうと、入力ミスや確認対応が増えて、運用が回らなくなるリスクがあります。

目指すUIを実現するためには、ECシステムの選定が非常に重要になります。

ASPサービスは手軽に始められますが、オーダースーツECに求められる注文フォームの作り込みや、採寸機能、マイページのサイズ情報管理などの機能を実装することはできないため、カスタマイズが可能なクラウド型のECシステムを検討するべきです。

インターファクトリーが提供するクラウドECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」は、オーダースーツのように複雑な要件にも柔軟に対応できます。さまざまな外部システムとの連携も可能なので、受注後の製造・出荷までをトータル運用したい場合にも適しています。オーダースーツECの構築実績もあるため、安心して導入いただけるプラットフォームです。

サービスの詳細や資料請求は、下記の公式サイトをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。

公式サイト:「EBISUMART(エビスマート)」

セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。