売上をグっと伸ばす「ECサイトのアプリ化」を徹底解説


ECサイトをスマートフォンのアプリ化することができれば、ユーザーの接触回数や滞在時間を増やし、ECの売上に貢献できます。

確かに、その企業やブランドのファンであれば、スマートフォンのホームボタンから、いつでもアクセスできるアプリがあれば、キャンペーンや新製品のプッシュ通知も可能になり、ユーザーの満足度も高まります。

しかし、そういった効果が得られるのは、ユニクロやNikeなどの商品力やブランド力がある有名大手が使える手法であり、そうではない企業のECサイトをアプリで成功させるためには、マーケティングの仕掛けなど労力がかかります。

そのため、アプリ化の検討の際には「アプリでユーザーを満足させるためのコンテンツを配信することができるのか?」という点を事前にしっかり設計する必要があります。

また、ECのアプリ化といっても、ECサイトをアプリ化するのではなく、アプリからWEB版のECサイトへの導線を設けたり、アプリでWEB版を表示させることが多く、ECサイトのアプリ開発は費用が莫大にかかるので、ユニクロやAmazonといった大手小売りや有名モール企業でなければアプリ化のメリットはありません。

本日はインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、ECサイトのアプリ化についてデータや具体例をもとに詳しく解説いたします。

ECサイトのアプリを7つの大手事例で学ぶ、それぞれの戦略や工夫

まずは、ECサイトをアプリ化している7つの大手事例を紹介します。一見、よくあるアプリに見えても、そこには各社の戦略をもとにアプリの工夫がされていることが分かります。

① Amazon

Amazonアプリ

画像引用:Amazon

Amazonのアプリは、ECサイトをメインにしつつAmazonプライムや、Amazon musicにもアクセスもでき、ユーザーへのAmaoznサービスの囲い込みの意図が伺えます。

また、昨今のECサイトの普及により配送量の増加と、配達員不足が社会問題となっており、特に多くのシェア獲得しているAmaoznの影響は非常に大きいものがあります。

しかしAmaoznアプリのTOPページに常にログインユーザーの配送先が表示され、カンタンに配送先を変更(例:自宅から仕事先へ)することができるなど、なるべく配送の負担を減らす取り組みが行われているのがわかります。

② ビックカメラ

ビックカメラアプリ

画像引用:ビックカメラ.com

DX化を強く推進しているビックカメラでは、以前よりアプリを軸としたオムニチャネル施策の強化に取り組んでおります。

特に特徴となるのが、店舗とオンラインをリアルタイムにつなぐ「アプリでタッチ」です。ビックカメラの店舗では商品の値札に「電子棚札」を導入しており、アプリを起動した状態の端末で札をタッチ(※)することで、ECサイトの在庫や商品詳細、レビューをその場で確認することができます。※機種によってはバーコード読み取り

その他にも、ネット取り置きサービスや、登録した店舗のチラシの配信など、アプリを通じて実店舗とECをシームレスにつなぎ、利便性の高い買い物体験を提供しております。

③ 楽天市場

楽天アプリ

画像引用:楽天市場

Amazonとは全く違ったインターフェースなのが楽天市場のアプリです。楽天グループの戦略は「楽天経済圏」によるポイント戦略ですから、TOPページなどあらゆる箇所に「ポイント」や「クーポン」訴求がなされております。

楽天市場はAmazonに比べて、女性ユーザーが多いために、こういったポイント訴求が効果的です。さらに楽天市場アプリから「楽天ポイントカードのQRコード表示」や「楽天ペイアプリのダウンロード」などの導線があり、リアルとECサイトのO2O戦略を行っております。

④ ユニクロ

ユニクロアプリ

画像引用:ユニクロ公式オンラインストア

ユニクロアプリは、アプリにログインすると、年齢や性別に合わせた商品が優先的に表示され、ユーザー一人ひとりにカスタマイズされた画面を表示されます。

ユニクロのアプリで特徴的なのはバーコード読み取り機能があることです。このバーコード読み取り機能を使えば、店舗での商品の在庫やサイズなどを調べ、店舗に在庫がなければ取り寄せることが可能です。

ユニクロは、オンラインだけの限定商品を用意するなど、オンラインユーザーを増やす施策を行っておりますが、商品受け取り先にユニクロ店舗を使うことができ、オンラインを絡めることで、クロスセルやリピーター施策の促進を行っているのです。

⑤ 無印良品

無印良品アプリ

画像引用:無印良品

無印良品のアプリ「MUJI passport」には、多くの便利機能が備えられております。ECサイトでのお買い物はもちろんのこと、買い物で使えるポイントやアプリ限定クーポンの発行、ネット注文店舗受け取り、店舗在庫の確認、配送リストの作成、レビュー投稿、さらに各種イベントやアドバイザーへの相談予約などが可能です。

また、無印良品のアプリは、利便性の向上だけではなく、アプリ利用者への特典も充実しております。例えば、ポイント(MUJIショッピングポイント)は、無印良品で購入した金額(マイル)に応じて発行されますが、スマホの位置情報機能から最寄りの店舗が検索でき、その店舗にチェックインするだけでもマイルが貯まる仕組みになっております。

また、年に数回ある「無印良品週間」では、会計の際にアプリを提示することで優待を受けることができるなど、アプリの価値を高めることで利用者を増やしていっております。

⑥ ライトオン

ライトオンアプリ

画像引用:ライトオン公式オンラインショップ(メンズ)

ライトオンは、ECのアプリの成功事例というよりは、スマートフォンでの顧客体験を追求した点が特筆すべき点でしょう。下記記事によりますと、「ささげ業務」を内製化したり、公式LINEアカウントを開設するなど、スマートフォン上での顧客体験の向上に集中してマーケティングを実施してきました。

ライトオン、EC売上は93%増 「アプリ」「SNS」「モール」活用が奏功日本ネット経済新聞

その結果、コロナ禍が後押しした面もありますが、前年同期比で93.2%増という高い成長を実現したのです。ECサイトのアプリ化そのものに意味はありません。このように顧客体験を軸にしたマーケティングは非常に良い事例と言えます。

⑦ ZOZOTOWN

ZOZOTOWNアプリ

画像引用:ファッション通販ZOZOTOWN

ZOZOTOWNは、割引クーポンの発行やセール、商品単位での値引きが頻繁に行われております。そのため、PUSH通知でいち早く情報をキャッチできるアプリは、ユーザーにとっては必要不可欠なツールと言えるでしょう。

また、肌の色を計測して、あなたに似合うベースメイクの色をおすすめしてくれる「ZOZOGLASS」や、自宅にいながら簡単に足の3D計測ができ、欲しい靴の自分に合うサイズがわかる「ZOZOMAT」といったサービスは、スマートフォンのカメラ機能を利用するため、アプリのダウンロードが必須になります。

◆「ZOZOGLASS」と「ZOZOMAT」

ZOZOGLASSとZOZOMAT

このようにZOZOTOWNは、アプリでしか提供できないサービスの創出により、アプリをダウンロードさせ顧客の囲い込みに成功しています。

では、次にユーザーのアプリ利用時間などのデータについて解説いたします。

アプリの利用時間はWEBブラウザの5.5倍!

アプリのデータについては、ニールセンが上手くまとめておりますので、ニールセンのページのデータを参考にしました。アプリを検討している方は、必見の内容になっているので、必ず一読してください。

スマートフォンでは平均30個のアプリが利用され、利用時間の85%を占める ~ニールセン スマートフォンのアプリ利用状況を発表~ニールセン

まずは下記の円グラフをご覧ください。

◆スマートフォンの1日あたりの利用時間シェア「WEBブラウザ」VS「アプリ」

このグラフを見ると圧倒的にアプリの利用時間が多く、約2時間40分(85%)もアプリを利用していることになります。WEBブラウザの利用時間はたった、一日あたり約30分程度に過ぎません。

この結果だけを見るとECサイトをアプリ化することができれば、ECの滞在時間やユーザー数を一気に増やすように見えますが、それほどカンタンではありません。下記のようなデータもあります。

よく利用するアプリは「SNS」や「ニュース」!「EC」はたった9%

では、スマートフォンのアプリですが、どのようなアプリが利用されているのでしょうか?同じくニールセンに下記のようなデータもありました。

このデータは月に31回以上使われているアプリ、つまりユーザーがよく利用するアプリの種類のデータを表したものですが、

1位は「SNSやチャット(コミュニケーション)」で20%
2位が「ニュースや動画・音楽(エンターテイメント)」で19%

であり、ECはたった9%しか使われておりません。

つまり、ユーザーはコミュニケーションや、娯楽のためにアプリを最も利用しており、買い物のためには、あまり利用していないことがわかります。

とはいえ、ユーザーがよく使うアプリの中に自社ECサイトのアプリがあれば、ユーザーとの接触回数が劇的に増え、これ以上のリピート施策はないでしょう。

コロナ禍を経て、アプリ利用率はさらに高まった!

まず、下記のデータをご覧ください。コロナ禍以前の2019年と2021年のスマホアプリ利用率を性別別、世代別に比較した日本国内のグラフデータです。

アプリの利用時間

出典:インテージ「知るギャラリー」2022年2月15日公開記事

このグラフを見ると、コロナ禍になり全世代にわたりアプリ利用率が増えていることがわかります。男女ともに若い世代ほどアプリの利用率が高まっているのがわかります。コロナ禍において、リアルの行動時間が減った分、アプリの利用率が高まったことがわかります。

この利用率の伸びはコロナ禍による一時的な可能性もありますが、高齢者に関してはアプリを利用するキッカケにもなったはずです。そのため今後は、全世代にわたってアプリ利用率が高まっていることを示唆するデータともいえます。

ECサイトをアプリにする費用相場

それでは、ECサイトのアプリをつくる費用について解説いたします。要件により、異なりますので一概に言えませんが、おおよそ100~300万円の初期費用がかかります。複雑なデータ連携がある場合は1,000万円以上かかることもあります。そして、iOSとAndroidの二つのOSがありますので、両方に対応する場合は倍の料金が発生します。

両方のOSに対応する予算を用意するのが厳しい場合は、ECサイトのGoogle Analyticsのデータを見て、どちらのOSがよく利用されているのか、データを見てから検討しましょう。

また、保守費用も忘れてはいけません。サーバー代、iOSやAndroidのバージョンアップに対応するために保守費用が発生しますし、自社のアプリのバージョンアップを行う費用も発生します。

つまり、ECをアプリ化する開発は、費用が莫大にかかるため、実際のところは、アプリでは「ポイント管理」や「コンテンツの配信」として利用し、ECサイトはWEBブラウザーで運用するのが一般的です。

それでは次に、アプリの開発手法について解説いたします。

アプリの開発手法は3種類!

① WEBアプリ(PWAを含めて)

WEBアプリとは、Google chromeやFirefoxなどのスマホのWEBブラウザで動くアプリのことです。スマホにダウンロードして使う必要がなく、ブラウザ上で動くため、ほとんどWEBサイトと同じです。そのため開発費用も安く済みますが、デバイスのカメラやプッシュ通知機能など利用できませんし、App storeやGoogle Playなどに登録することもできません。

特にPWA(プログレッシブ・ウェブ・アプリ)はWEBアプリの中でも新しい概念であり、WEBアプリのアイコンをスマートフォンのホーム画面に設置すれば、ネイティブアプリと同様に「Push通知」や「オフライン上での動作」も行うことが可能で、特にダウンロードしても軽いのが特徴です。

また、仕組みはWEBのため、OSに依存しないので「iOS」や「Android」あるいは「Windows」などOS別に開発する必要はなく、1つのアプリを開発すれば、全てのOSに対応可能です。

② ネイティブアプリ

ネイティブアプリとは、スマホのアプリの代表的なものです。動作速度が速く、オフラインでも動かすことができますし、デバイスのカメラやプッシュ通知を使うこともできます。

App storeやGoogle Playに設置すれば、多くの人がダウンロードしてくれる可能性があります。ただしApp storeやGoogle Playには審査があり、厳しい基準を満たす必要があります。ネイティブアプリは開発費用が高くなります。

また、審査を意識すると開発の自由度にも制限があり、審査を通すための開発は余計にコストもかかりますので、アプリの企画段階でこの点を考慮する必要があります。

③ ハイブリッドアプリ

ハイブリッドアプリは、見た目はネイティブアプリのようにダウンロードして使うものですが、例えばアプリのトップページ以外は、WEBアプリになっているなど、ネイティブアプリの形をとりながら、主要部分をWEBアプリで構成されているアプリです。

App storeやGoogle Playに設置することもできますし、デバイスの機能も使え、開発費用を抑えることができますが、動作速度が遅いデメリットがありますし、オフライン環境下では動かない場合があります。

アプリの3つのメリット!

それではアプリの3つのメリットを紹介いたします。

メリット① メルマガの3~5倍に達する開封率のPUSH通知!

ユーザーのスマートフォンにPUSH通知を出すことができますので、キャンペーンのお知らせや、お気に入りに登録した商品の再入荷の知らせ等を、リアルタイムで通知することができます。そしてPUSH通知の開封率はメールマガジンの通知に比べて3~5倍あり、ユーザーに届きやすい配信方法なのです。

ただし、通知頻度があまりに多かったり、「セールスのお知らせ」や「クーポン」ばかりの通知ですと、アプリが削除される可能性が高くなりますので、セールスの要素の調整は気をつけましょう。

メリット② ロイヤリティーの高いユーザーには、最高のリピート施策になる!

例えば、NIKEの靴のファンの場合、買い物をしなくても、日常的に最新作や近日発売中の靴をチェックしたくなります。下記の画面は、NIKEのアプリの「近日発売予定」の商品画面です。

◆NIKEのアプリの「NIKE SNKRS」の近日発売予定の商品画面

SNKRS

画像引用:Nike.com

このようにロイヤリティーの高いユーザー最新商品をチェックを日常的に行いたいため、スマホのホーム画面のアプリがあれば、リピーターへの接触時間を増やし、購入機会を増やすことができるのです。つまりこれは、最高のリピート施策でもあるのです。

アプリを作る場合は、ファンが思わず見たくなるような綺麗な写真の商品一覧画面や、商品の魅力をしっかり伝えるために写真を複数掲載したり、ファンが気になる商品のポイントを商品詳細画面でしっかり訴求しましょう。

メリット③ インターネットのオフライン時も動作可能!

スマートフォンの弱点は、電波環境にあります。大都市では、ほとんどつながるものの、地方や電車の中では電波が届かないエリアもあります。また、携帯電話にはインターネットのデータ使用量があり、インターネットを使わないアプリがあれば、容量が不足しがちな月末には、オフラインで使えるアプリがよく使われる傾向があります。

このようなスマートフォンの独自の背景から、オフライン時も動作するアプリがあれば、アプリの滞在時間を長くすることができます。ネイティブアプリで作れば、あらかじめ必要なデータを先読みするように作れば、オフライン時も動作するようにアプリを作ることも可能です。

※ただし、一般的にWEBブラウザよりアプリの方が、データ使用量は多くなることを覚えておきましょう。

アプリの3つのデメリットとは?

デメリット① とにかく費用が高い!

WEBアプリの方式で開発すれば、ある程度費用は抑えられますが、ネイティブアプリの開発した場合、しかもiOSとAndroidの両方に対応すれば、200~600万円も初期費用がかかりますし、アプリのサーバー保守費用や、最新のOSのバージョンに対応するための改修費用もかかります。またApp storeやGoogle Playの登録費用もかかります。

最近は、開発費用を抑えるためのクラウド型のアプリもあるので、予算に合わせてアプリの開発方式も検討する必要があります。

デメリット② そもそも有名ECサイトやブランド力がないと成功しない?

ECサイトをアプリ化すれば、必ず成功するわけではありません。アプリにしても、成功するECサイトは少ないと筆者は考えます。例えば、筆者の大好きなNIKEのようなアプリであれば、圧倒的なブランド力があるため、多くのユーザーが喜んでダウンロードを行い、新商品をチェックし、時には買い物を行うでしょう。

しかし、ブランド力がないECサイトのアプリをユーザーにダウンロードさせるのは、ダウンロードさせるだけの強い動機を与えないといけません。例えばアプリに特別のクーポン券を発行させたり、あるいはアプリでお役立ちコンテンツを配信して、楽しんでもらうなど、商品以外のメリットも必要になります。

デメリット③ OSへの対応や不具合に対応が、永続的に発生!

通常の「ECサイト」に追加して、運営するチャネルとして「アプリ」が増えます。このため普段のEC運営に加えて、アプリの不具合や、最新のOSへの対応をしなくてはならず、アプリで成果を出せないと、費用や労力ばかりがかかって、ECサイトの足を引っ張る存在になることもあります。

ECサイトをアプリ化するのではなく、アプリからWEB版のECページに遷移させるのが一般的な開発手法

アプリ上でECサイトを構築させたいという要望はよく聞きますが、実はデメリットが多く費用対効果が良くありません。

◆ECサイトをアプリ化するデメリット

・費用がとにかく高い
・ECサイトをアプリ化しても、WEB版のECサイトと機能に変わりがない
・すでにWEB版のECサイトがある場合は、二重管理になる

ですから、ECサイトのアプリ化というのは、Amazonやユニクロなどの超大手ではない限りは、アプリ上でECサイトに遷移させたり、アプリでWEB版のECサイトを表示させることが一般的な手法です。

アプリ上でECサイトを開発するというよりは、WEBブラウザーのECサイトに、どのようにスムーズにアクセスさせるか?という点がECサイトのアプリ開発においては重要なポイントとなります。

ECサイトをアプリ連携させるために、システム連携の開発を行う

ECサイトとアプリを連携させる場合は、ECサイトとアプリというよりも、アプリが連携しているシステムと、ECサイトを連携させることが多いです。具体的には下記のようになります。

◆アプリが連携しているシステム

・顧客情報(顧客管理システム)
・ポイント情報(ポイント管理システム)

上記をECサイトを連携させることで、間接的にアプリ連携を行う開発が一般的です。このようなケースはアプリ連携と言われますが、実際には、ECシステムとアプリではなく、各システム(顧客管理・ポイント管理)との連携開発を行うため、開発費用は数百~数千万円もかかる中・大規模のシステム開発となります。

そして、システム連携のような大きな開発規模となると、ASPなどのECサービスでは、対応できなくなるため、

◆カスタマイズ可能なECシステム

・フルスクラッチ
・パッケージ
・クラウドEC(ebisumartのようなカスタマイズ可能なクラウドサービス)

などの、カスタマイズを前提としたECシステムを利用する必要があります。

もし「顧客情報やポイント連携をしなくても良い」ということになれば、ECシステムとアプリは別々でも問題ないため、ECもアプリも月額が数万円程度のASPサービスを利用することができ、ポイント連携等のデータ連携はできませんが、アプリからECサイトに遷移(あるいは表示)させ簡易的なECのアプリ化が可能になるのです。

アプリが向いているECサイトとは?

当然、アプリにすれば成功しやすいECサイトと、そうではないECサイトがあります。

費用が高いアプリ開発は、事前に「アプリでECの売上を伸ばすことができるのか?できないのか?」を見極める必要があります。筆者が考えるアプリで成功しやすいECサイトは下記の3つです。

◆アプリ化して成功しやすいECサイト・企業

① 有名ブランドやアパレルEC
② リピーターが多く、独自の商品が販売している企業
③ ブログや資料などコンテンツ資産が豊富にある企業

①や②は解説は不要だと思います。つまり商品力やブランド力があれば、ユーザーにアプリをダウンロードさせるモチベーションがあるので、アプリ施策は成功しやすいのです。

そうではないECサイトや企業がアプリを成功させるには、アプリをダウンロードさせるモチベーションを高める施策が必要になります。

そのためには、自社商品の魅力以外に「お役立ちコンテンツ」が必要になってきます。これについては次項で解説いたします。

アプリ施策で成功するための3つのポイント!

成功のためのポイント① アプリをダウンロードさせるための導線を確保!

ZOZOTOWNの例で説明しましょう。下記はスマートフォン画面のZOZOTOWNのWEBサイトの画面です。サイトのフッターにはZOZOTOWNのアプリがダウンロードできる導線が確保されております。

◆ZOZOTOWNのWEB画面。アプリのダウンロード導線が用意されている

zozoアプリ誘導

画像引用:ファッション通販ZOZOTOWN

このように、すでに集客できている自社のECサイトからアプリをダウンロードさせる導線を設けなくてはいけません。

さらにメールマガジンや、実店舗のポップやパンフレットでQRコードを使って、アプリのダウンロード訴求を強化します。また、WEB接客ツールを導入している企業は、スマホのWEBサイトにポップアップ画面を表示させる形で、アプリを訴求することもできます。

ECサイトのアプリは、有名ブランドではない限り、多くのユーザーにダウンロードさせるものでもありません。またGoogleの検索結果にも引っかかりづらいため、ダウンロード数を増やす施策が別途必要になります。

成功のためのポイント② アプリを使ってもらうための利用率アップ施策!

ダウンロードさせるだけでは意味がありません。アプリを継続的に利用してもらう仕掛けが必要になります。もちろんECサイトですから、商品の魅力そのものが利用率と密接に関係しますが、それだけではなく「お役立ちコンテンツ」を更新して、アプリで配信してみましょう。

例えば、健康食品のECサイトで自社がサプリメントの会社であったとしても、アプリをダウンロードしたユーザーは、”サプリメント”の情報だけでなく、”健康”や”ダイエット”などに広く興味・関心があるはずです。

そういったユーザーのために、サプリメントに限らず、健康に関するコンテンツを広く提供するなど、ユーザーの属性と自社サービスと親和性の高い、お役立ちコンテンツを配信することで、利用率がアップします。

このような仕掛けがあれば、ユーザーは、日常的にアプリを利用してくれる可能性を高めることができます。注意点は、面白いゲームなどを用意しても、自社のECサイトとの親和性が低ければ売上に貢献しません。必ず、自社ビジネスと親和性の高い”お役立ちコンテンツ”の配信で利用率を上げることを心がけましょう。

この点は、ZOZOTOWNは非常に上手く「WEAR」というコーディネートアプリでファッション好きなユーザーを囲い込み、さらにコーディネートで使われている服をそのままZOZOTOWNで購入することもできます。

◆WEARのアプリ画面

WEAR

画像引用:WEAR: ファッションコーディネート

もし、すでにコンテンツマーケティングに着手している企業であれば、アプリで、そのコンテンツを配信することができるので、利用率を高める施策はすぐに実行できます。

成功のためのポイント③ アプリからWEB版のECサイトへの導線をしっかり作る

アプリでは単にメニュー一覧に「ネットショップはこちら(買い物をする)」という導線を作るだけでなく、アプリで新商品を紹介するページでは都度商品ページに「買い物かごに入れる」というリンクやボタンを設置し、自然とECサイトへ誘導する取り組みを行いECの利用を促進させましょう。

つまり、WEB版のECサイトとアプリは分かれてはいるのですが、ユーザーにそれを意識させないようにするのがコツとなります。アプリからECサイトへの導線は、すでにアプリでログイン情報がとれているので、ユーザーからも、都度ログインが不要であり、買い物しやすいというメリットがあります。

つまり、アプリとWEB版のECサイトの双方向に導線を設けて、

✔新規顧客にはアプリ訴求
✔アプリユーザーには購買訴求

を相互に行うのが成功のコツとなります。その際、気を付けたいのは、ECサイトの商品ページにアプリ訴求してしまうと、CVRが下がる原因となるので、アプリ訴求は、TOPページなどのページに限定しておきましょう。

アプリで実店舗へ誘導するオムニチャネルやO2O施策!

アプリのダウンロード数が、1万ダウンロードを超えると、ある程度のユーザーに広まったと考えてよいでしょう。実店舗をもつ企業はアプリ上でクーポンやキャンペーンを訴求して、実店舗にユーザーを誘導するオムニチャネルやO2O施策を試してみましょう。

さらに、友達紹介キャンペーンなどを行い、友人と一緒に実店舗に来てもらったり、アプリをダウンロードしてもらったりして、アプリの拡散の輪を広げる施策を検討してみましょう。

もし、アプリが十分に認知されていないのでしたら、実店舗のレジ周りにアプリを訴求するPOPを用意し、アプリ限定のキャンペーンやクーポン発行を行い、アプリの利用促進を図ります。

アプリ<==双方向に利用促進==>実店舗

ECサイトのアプリ化のまとめ

ECサイトのアプリ化の基本はリピート施策になります。ロイヤリティーの高いユーザーに対して、アプリをダウンロードしてもらうことができれば、ユーザー1人あたりの購入回数を増やすことができ、売上を伸ばすことができるからです。

そのためには、ユーザーにアプリをダウンロードさせる仕組みも重要になりますし、ダウンロードした後に、アプリを利用してもらう仕掛けも重要です。ECサイトのアプリ化を行いたい場合は、まずは「ユーザーに喜んでもらえるお役立ちコンテンツがあるのか?」という点から検討しましょう。

新商品の情報提供とポイント付与のためのアプリも良いのですが、アプリで圧倒的に成功するにはユーザーが日常的にアプリを使い続けるための工夫が必要となります。利便性の高いツールを提供したり、お役立ちコンテンツの提供もその一つです。

コンテンツがないのなら、アプリ化よりも先にコンテンツを増やす施策のコンテンツマーケティングや、動画マーケティングなどの施策の優先度は高くなります。

また、ユーザー接点を増加させることに注力するのでしたら、アプリに限定せずともYouTubeやインスタグラムでのコンテンツ作成に注力するのも一手です。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。