ECサイトで定期販売を検討している事業者の中には
「これからECで定期販売を開始したい!」
「定期販売に必要なECの機能は?」
「頒布会やサブスクリプションと何が違うのか?よく分からない!」
という担当者の方は多いのではないでしょうか?
定期販売とは、主にその店でしか手に入らない消耗品等を定額料金で一定期間届けるビジネスモデルであり、それをECで実現するためには定期販売に必要な機能が使用できるECシステムでなければなりません。なぜならば通常のECシステムでは、定期販売の機能がなかったり、あるいは定期販売に関する細かい調整ができない場合があるため、事前に必要な機能を知っておく必要があるからです。
そのような機能を含め、ECで定期販売を実施するにあたっては、下記5つのポイントを押さえておくことが重要です。
ポイント② 定期販売のECサイトで成功するための3つの観点
ポイント③ 定期販売に向いている3つの決済手段
ポイント④ 定期販売に必要な6つの機能を事前に知る!
ポイント⑤ 定期販売が可能な自社ECシステムプラットフォームの選定
本日はebisumartでマーケティングを担当している筆者が、これからECサイトで定期販売を実現する担当者向けに、定期販売で押さえておくべきこれら5つのポイントについて詳しく解説いたします。
ポイント① 「定期販売」「頒布会」「サブスクリプション」は何が違うのか?
定期販売と同義と勘違いをされるのが「頒布会」や「サブスクリプション」です。何となく同じなのでは?というイメージが強いですが、それぞれ意味や定義は異なります。頒布会、サブスクリプションをそれぞれ定期販売と比べてみましょう。
「頒布会」の最大の特徴は毎回送る商品が異なる!
定期販売では「健康食品」や「サプリメント」などの消耗品が多いのに対して、頒布会ではお店が「商品」を選び、セットにしてユーザーに届けます。つまり下記のような違いです。
◆頒布会と定期販売の違い
頒布会の例:秋のフルーツのセット(お店が選んだ、毎回異なる内容の商品)
例えば、EC大手の「Oisix」では、下記のようなおいしい鍋の具材の頒布会サービスを提供しており、季節ごとに旬の食材を使ったおいしい鍋を自宅で味わうことができます。
頒布会事例: Oisix産直おとりよせ市場
このように、毎回決まった商品ではなく、お店が厳選(選定)した商品をユーザーに届けるのが頒布会です。それに対して定期販売とはユーザーが決めた、同じ商品を毎回受け取るものです。
「サブスクリプション」は一定金額で利用できるサービス!定期販売はモノ!
購入し所有できるモノであることが前提の定期販売に対し、一定金額を払いサービスを利用するのがサブスクリプションです。そしてサブスクリプションには「利用し放題」というサービスが多いのが特徴です。
◆定期販売とサブスクリプションの違い
サブスクリプションの例:一定金額を毎月支払えば対象サービスを利用し放題
サブスクリプションサービスで有名なのはNetflixです。無料で映画や、海外・日本ドラマなどの無数のコンテンツを安いプランなら月額800円で、毎月見放題のサービスを提供しております。
サブスクリプションの事例:Netflix
また、サブスクリプションはこのようなデジタルコンテンツに多かったのですが、昨今では月額定額料金で飲み放題の居酒屋などが多数出現しており、サブスクリプションを導入する企業はあらゆる業界で増えております。
◆サブスクリプションサービス国内市場規模(7市場計※)推移・予測
※ファッション分野/飲食店サービス・テイクアウト分野/ライフスタイル分野/レジャー・エンタメ分野/情報コンテンツ分野/教育分野/メディカル・ヘルス分野
出典:株式会社矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)」(2023年12月18日発表)
下記に、ユニークな事例として、前述した居酒屋のサブスクリプションサービスについての記事を紹介します。
サブスクリプションの事例:まいどなニュース「月額定額飲み放題6500円 サブスクリプション方式を採用した居酒屋オーナーの狙い」
「定期販売」とは毎月同じ料金で同じ商品を受け取るサービス
それでは事例の最後に定期販売の事例も紹介します。
定期販売事例:資生堂ヘルスケアオンライン「定期お届けサービス」
資生堂の定期販売のサービスは、単に化粧品を毎月届けるだけでなく、下記のような付加サービスをつけており、ユーザー目線の定期販売と言えます。
◆資生堂ヘルスケアオンラインの定期販売のサービス一覧
・毎回商品と一緒にプレゼント
・配送料無料
・3回継続ごとに合計支払い金額の5%をポイント還元
・お届け日を指定可能
・スキップ制度(一時お休み)
・返品可能・解約自由
このように、頒布会やサブスクリプションと混同されがちな定期販売ですが、明確な違いが存在しますので、ビジネスモデルを明確にするためにも、違いを把握しておきましょう。
ポイント② 定期販売のECサイトで成功するための3つの観点
どんな商品でも「毎月お届けする便利さ」や「安さ」をアピールするだけで売れるわけではありません。定期販売で成功するためには以下の3つの観点が大切になります。
◆売れる定期販売の3つの観点
観点② そこでしか手に入らないオリジナリティーがあること
観点③ どこよりも安い金額であること(観点②がない場合は)
具体的には、下記のような商品が該当します。
◆定期販売で販売される商品例
・自社が専売する輸入プロテイン
・オリジナルの化粧品やシャンプー
・独自の仕入れによる安い価格のお米、お肉
このように、定期販売で売れる商品とは、消耗品であり、オリジナリティーがある商品なのです。なぜなら、近所のスーパーで同程度のモノが同程度の金額で手に入るのであれば、どこでも購入できるためわざわざ定期販売で買う必要がないからです。そのECサイトでしか買えない「オリジナリティー」や「安さ」が必要になってきます。
一方向いていない商材は、消耗品ではないモノです。例えば「食器」「服や靴」などの耐久品がこれに該当します。なぜならこれらは買い替える対象にはなりますが、毎月新しいモノは不要だからです。
これら消耗品ではない耐久品は、逆に「サブスクリプション」モデルでの販売が注目されています。買って所有するほどではないものを「利用する」という考え方に変えて提供するビジネスモデルだからです。
ポイント③ 定期販売に向いている3つの決済手段
定期販売には「クレジットカード決済」と「口座振替決済」が向いています。なぜならユーザーは一度登録してしまえば、自動で決済されるため、ユーザー自身がお金を払っている感覚が少ないためです。また、サンプル商品を配って初回に決済手続きを行わずに会員にすることができる「後払い決済」も定期販売でよく利用される決済手段です。
◆定期販売に向いている3つの決済手段
・口座振替決済
・後払い決済
定期販売に向いている決済手段ではありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。
定期販売で利用する各決済方法のメリットとデメリット
◆クレジットカード決済
メリット:クレジットカード情報をサイトから入力するか、電話オペレーターに伝えれば良いのでユーザーの負担が少ない点と、ユーザーは引き落としを意識しないため、サービスの継続率が高い。
デメリット:取引期間が長くなるほど有効期限切れが発生する可能性が高くなり、有効期限の更新が必要になる。これまでは決済会社が提供する「洗替※」と呼ばれるサービスにより、有効期限の更新がある程度可能であった。
しかし、「洗替」サービス自体の提供が難しくなっており、今後はユーザー側での更新が必要になるため、ユーザーが離脱する原因になる。
※洗替とは、決済業界でよく使われる用語で、クレジットカードの有効性を確認し、有効性を更新することです。
◆口座振替決済
メリット:ユーザーは引き落としを意識しないため、サービスの継続率が高い。
デメリット:対面の場合は銀行のキャッシュカードがあればすぐ登録ができるが、非対面の場合は口座登録の手間が非常に大きい。
◆後払い決済
メリット:初回購入時、ユーザー側の手間が最小になるため、サンプル商品を配ってユーザーを獲得する施策に向いている。
デメリット:都度支払いが発生するため、ユーザーがサービスの停止を考えるきっかけになる。
ポイント④ 定期販売に必要な6つの機能を事前に知る!
定期販売のシステム的に重要になる工程が
・定期の注文を受けた後
になります。この2つの工程を事業者側がスムーズに運用できるシステムを実現できるかが重要です。以下、最低限必要な定期販売の機能を6つ紹介します。
◆定期販売に必要な6つの機能
機能② 自動課金機能
機能③ ステップメール機能
機能④ 販促機能(キャンペーン機能、クーポン機能、ノベルティ機能)
機能⑤ ポイント機能
機能⑥ 顧客分析機能
機能① 自動受注生成機能
定期のお届け期間ごとに自動的に受注を生成する機能です。毎日の出荷指示の中に、自動で生成した定期販売の注文を出荷指示に入れる必要があります。定期販売は注文者によりお届け日が異なりますし、商品によってお届けするスパン(期間)が異なります。そのコントロールと、しかるべきタイミングで注文を自動で生成する機能が必須です。
自動で生成した受注情報を出荷データとして物流に連携するイメージです。通常の単品商品の購入者の出荷データと一緒に渡せればベストです。
多くのECシステムには「定期販売機能」が最初から実装されていますが、「お届け日」や「お届けスパン」を調整することができないシステムもあるので、事前に確認が必要です。
機能② 自動課金機能
定期販売の課金をまとめて1年分課金されている事業者もいますが、ユーザーの立場で言えば毎月支払いの方が負担額が少なく購入しやすいものです。しかし、この場合は事業者は利用している「決済代行会社」に対し毎月請求を行う必要があります。
この作業を決済代行会社の管理画面で運用することは可能ですが、手作業による負担・事務ミスがネックとなります。これを受注管理システムから自動もしくは連携ファイルを出力できる機能があればネックを解消できます。
注文数が少ないうちは、複数のシステムを利用する運用でも問題がありませんが、注文数が増えてくると、システム間の連携が必須になってきます。
機能③ ステップメール機能
定期販売は、まずはサンプル商品を利用し、発展的に定期販売につなげることが王道の手法です。サンプル商品購入顧客に対し、定期商品購入につなげるのはステップメール機能です。ステップメールの具体的なイメージは
◆ステップメールの送付事例
・購入から1週間後にメルマガ送信
・購入から2週間後にメルマガ送信
・購入から3週間後に定期販売の購入キャンペーン案内メール送信
このようにせっかくサンプル商品を購入してくれたユーザーを、定期販売へ誘導する施策が大切になってくるのです。そしてステップメールでは以下のポイントを踏まえましょう。
◆ステップメールのポイント
・しつこくない程度の頻度でメールを送ること
・サンプル商品を使い切る前に、定期商品のご案内と、今だけ特別感のあるキャンペーンで購入を後押しすること
・手作業で行うのではなく、しかるべき顧客に対し、しかるべきタイミングで、しかるべき内容のメールを自動で送れること
これらのメールを送るために「対象者(会員ランク)」「対象商品」「タイミング」「メールテンプレート」の登録を行い、自動でメール送信ができる「ステップメール」の機能は定期販売を行う上で必須の機能です。
機能④ 販促機能(キャンペーン機能、クーポン機能、ノベルティ機能)
期間限定の割引で購入できる「キャンペーン機能」や、番号を入力することで値引き購入できる「クーポン機能」が定期販売で有効な販促機能です。
「キャンペーン機能」は売り込みたい対象定期商品に対し、割引対象期間の設定と割引率が設定できることが主な機能です。全ての注文に対し割引とはせず、サンプル商品の購入者だけに適用するキャンペーンも作れる機能があると良いです。
「クーポン機能」は事前にサンプル商品購入者に対し、今ならこのクーポンで定期商品が割引になるチケット(番号)を発行できる機能です。クーポンは、他人に渡っても使えないように制御できるものが良いでしょう。
「ノベルティ機能」は指定された商品を購入した場合に、ノベルティ商品をプレゼントする機能です。例えば、売り出したい青汁の定期商品に対し「今ならお買い上げの方に無料シェイカーをプレゼント」と打ち出すことができます。実際に購入された場合に、初回の青汁1カ月分の他にシェイカーも受注情報に入ってくるイメージです。
これらの販促機能を使うことで購入者にインセンティブを与え、定期購入への後押しをしてあげることが戦略的に必要です
機能⑤ ポイント機能
定期販売で安定した売上を維持するためには、ユーザーに定期購入をしてもらってから、いかに解約せずに継続してもらえるかが重要です。
継続してもらうために大事なのは、継続することで得られるメリットをユーザーに提供することです。健康食品や化粧品などは継続することで効果が出てくるため、品質こそが継続のメリットですが、そうでない日用品などの場合は、ポイント制度を設けるのが効果的です。
一律のポイント付与ではなく、長く続ければ続けるほど付与率が上がっていくような仕組みをつくれば、顧客ロイヤルティが向上して解約率を下げることができるはずです。
機能⑥ 顧客分析機能
サンプル商品購入から、定期販売につながった顧客はどのくらいなのか。定期商品を購入した顧客の男女比、年齢分布、決済毎購入比率などの詳細分析ができる機能は、定期の戦略的データになるため必要です。
さらに、定期商品で何カ月後に解約率が上がるか等、より深く分析を求めると外部のツール活用をおススメします。
ポイント⑤ 定期販売が可能な自社ECシステムプラットフォームの選定
定期販売向けのECシステムはいくつか存在します。定期販売に特化したものもあれば、オプションとして定期販売機能を用意しているシステムもあり、そのシステムの提供形態は様々です。
まずは、定期販売をECで行うには、プラットフォームから決めていく必要があります。基準は、ECの年商から選定すると目安が分かりやすいでしょう。なぜなら年商が高いということは、それだけ注文数が多く、注文数が多ければ必要な要件定義も変わってくるからです。
ECサイトでの想定年商が「1億円未満」の場合はASPを選定する
ECサイトの想定年商が1億円未満(月商800万程度)の売上であれば、定期販売を提供するECシステムはASPサービスを利用するのが良いでしょう。例えば「たまごリピート魂(旧 たまごリピート)」など定期販売に特化したASPサービスのことです。
参考サイト:たまごリピート魂公式サイト
ASPといってもECに必要な機能は一通りそろっておりますし、定期販売に特化しているので
・定期の支払い方法の変更
・定期の商品の変更
など、通常のECのASPサービスでは提供していない、定期販売の細かい設定も可能ですし、それでいてASPサービスは、下記のように費用がとても安く済みます。
◆ASPサービスの費用目安
月額費用:数千円~5万円未満
ですから、費用対効果の面からも小規模の定期販売を行うECサイトのシステムとしては最適なシステムと言えます。
しかし、ASPサービスのデメリットはカスタマイズができない点です。年商1億円を超える規模になると、1日あたりの注文件数は100件を超え、顧客の要望も増えるので、顧客ニーズに合わせ、業務効率化を進めるとなるとECシステムのカスタマイズが必要になってくるからです。
では、次にカスタマイズ可能なECシステムを紹介します。
想定年商「1億円以上」のECサイトは「パッケージ」や「クラウドEC」を選定する
ECサイトの年商が1億円を超える、注文数が非常に多い中規模~大規模のECサイトでは、顧客ニーズに応え、業務効率化のためにシステム連携が必要なので、カスタマイズ可能なECシステムを選定しなくてはなりません。
また、分析ツールやWMS(倉庫管理システム)など外部システムとの自動連携もカスタマイズで可能になります。この売上規模になってくると出荷までの工程を手作業で行うことに限界がくるため、外部ツールとの連携が必要になってくるからです。
パッケージやクラウドECは、既存で備わっている定期販売の機能に加え、事業者固有のカスタマイズにも柔軟に対応が可能です。
定期販売事業者には要注意!2022年6月1日から改正特定商取引法(特商法)は施行されます
過去に消費者から
「無料と思ったら、解約料が発生した!」
「トライアルに申し込んだから、最低四回は購入する契約だった!騙された!」
といった、定期販売やサブスクリプションに関するトラブルが多くなり、新聞やテレビでも取り上げられるようになりました。
それを受けて改正特定商取引法(特商法)が2022年6月1日から施行されることになり、事業者は申込完了画面で、明確に取引内容を説明したり、あるいは「トライアル」「お試し」といった消費者に誤解を与える文言を制限する法律が施行されます。
ネットショップ担当者フォーラムの記事では、施行さえる法律にたいする事業者向けの対策がまとめられているので、この記事とあわせてご覧ください。
参考記事:ネットショップ担当者フォーラム「5分でわかる改正特商法! 定期購入やサブスクなど通販(D2C)事業者への影響と対策を深掘りして解説」
定期販売のまとめ
定期販売は、購入者が解約しない限り、販促費をかけず、売上の保証がされるビジネスモデルなので、安定した売り上げを確保できることが最大の魅力です。
そのためには、購入者に対し魅力的な商品と売り方を提供し、いかにコストをかけず効率よく運用できるかがポイントとなります。これから定期販売を行う事業者はまず、どのECシステムを導入するかが成果に大きく影響します。
年商が1億円未満であれば、定期販売のECに特化したASPサービスを利用し、それ以上の規模感のECサイトであれば、カスタマイズ可能なECのプラットフォームを検討しましょう。
さらにフルカスタマイズ可能なクラウドECのebisumartであれば、日々のセキュリティの更新や、システムアップデートが不要で、基幹システムや配送システムとシステム連携するなどの個別のカスタマイズも可能ですし、定期販売を行っている事例も豊富にございます。
カスタマイズ可能なクラウドコマースプラットフォーム:ebisumart