マスタデータとは「業務で繰り返し使われる基本情報」のこと

一般的に「マスタデータ」とは、企業のあらゆる業務活動において繰り返し参照・利用され、すべての情報の中核となる基本データのことを指します。

日々の企業活動では、商品情報、顧客情報、取引先、従業員、拠点、会計など、多種多様なデータを扱います。しかし、これらの膨大な情報が、各部門や個別のシステムごとに別々に管理されていると、同じ商品や同じ顧客であるにもかかわらず「コード番号が異なる」「表記がバラバラで統一されていない」「特定のシステムだけ古い情報を参照したままになっている」といったデータのサイロ化が自然発生してしまいます。

筆者の見解として、このようなシステム間での情報のズレを防ぐためには、業務の基盤となる基本情報を「マスタデータ」として整理し、社内全体で常に同一の情報を参照できる「共通の基準」として管理することが不可欠であると考えます。

ひとくちにマスタデータと言ってもその種類は多岐にわたりますが、実務において代表的なマスタデータには主に以下のようなものがあります。

◆代表的なマスタデータの種類

① 商品マスタ
② 顧客マスタ
③ 取引先マスタ
④ 従業員・組織マスタ
⑤ 拠点(ロケーション)マスタ
⑥ 会計・勘定科目マスタ

ここで重要なのは、マスタデータを単なるシステム上の登録情報として軽視すべきではないという点です。マスタデータとは、受注、在庫管理、出荷、請求、そして経営分析といったすべての業務処理やデータ活用の「駆動基準」として、常に正確に管理・メンテナンスし続けなければならないものであると筆者は考えます。

マスタデータをシステム側で適切に一元管理できれば、データの重複や表記ゆれ、更新漏れを未然に防ぐことができ、バックヤードの全業務(受注、在庫管理、請求、分析など)を正確、かつ効率的に進めることが可能になります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、企業のデータ運用の要である「マスタデータ」について、その本質的な定義から、乱れた場合のビジネスリスク、そしてシステムで解決するためのデータガバナンスの手法まで詳しく解説します。

※なお、マスタデータは「マスターデータ」と表記される場合もありますが、どちらも全く同じ意味です。本記事では「マスタデータ」の表記に統一して解説を進めます。

代表的なマスタデータは6種類

一般的に、マスタデータとして管理すべきデータの範囲や項目は、企業の業種や利用するシステムの規模によって細かく異なります。

ここでは、多くの企業や基幹システムにおいて、よく共通して扱われる「代表的な6つのマスタデータ」について、その具体的なデータ項目の例と合わせて一覧表で紹介します。

◆代表的な6つのマスタデータ一覧

マスタの種類 管理する目的と役割 具体的なデータ項目の例
① 商品マスタ 「製品・サービス」を管理するための基本情報 商品コード、商品名、カテゴリ、価格、JANコード、スペック、画像、販売単位
② 顧客マスタ 自社の商品を購入・利用する「顧客」を管理するための基本情報 顧客ID、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、会員ランク
③  取引先マスタ 仕入先や外部委託先、卸売先などの「ビジネスパートナー」を管理するための基本情報 取引先コード、会社名、所在地、担当者名、連絡先、支払条件
④ 従業員・組織マスタ  自社の「人材」や「組織体制」を管理するための基本情報 社員番号、氏名、所属部署、役職、システム内のアクセス権限
⑤ ロケーションマスタ 実店舗、倉庫、物流センター、営業所などの「物理的な拠点」を管理するための基本情報 店舗コード、倉庫コード、所在地、営業時間、配送エリア
⑥ 会計・勘定科目マスタ 日々の内訳や決算などの「財務・会計処理」で使う基本情報 勘定科目コード、勘定科目名、税区分、費用をひも付ける部門コード

ここからは、企業活動の根幹となるこれら6つのマスタデータについて、それぞれの役割と重要性を一つずつ詳しく解説していきます。

種類① 商品マスタ:商品情報を管理するための基準データ

商品マスタとは、企業が取り扱う製品やサービスに関するあらゆる基本情報を集約・管理するためのマスタデータです。

◆商品マスタのデータ構造・整理イメージ

商品コード 商品名 カテゴリ 価格(税抜) JANコード 在庫単位
P-001 オーガニック緑茶 500ml 飲料 150円 4901234567890
P-002 ミネラルウォーター 2L 飲料 120円 4901234567891
P-003 オーガニックコーヒー豆 200g 食品 980円 4901234567892

出典:筆者作成

商品マスタは、ECサイト、小売業、卸売業、製造業など、モノやサービスを販売する業種において、商品ページへの掲載、受注処理、在庫管理、出荷、カタログ作成にいたるまで、商品が関わるすべての業務フローの前提となる重要データです。

特にマルチチャネル展開を行うECビジネスにおいては、同じ商品情報を自社EC、楽天市場などの外部モール、基幹システム(ERP)、倉庫の在庫管理システム(WMS)など、複数の環境で並行して扱うケースが多々あります。そのため、元となる商品マスタがシステムごとに分散していると、「最新の正しい情報はどれか」を現場がその都度確認しなければならず、タイムロスが発生します。

また、近年のECビジネスにおいて、商品マスタは管理項目が肥大化しやすいという技術的な特性を持っています。

商品点数が多い企業ほど、サイズ、色、素材といった基本スペックだけでなく、多角的な画像URL、関連資料(PDF)、さらにはチャネル(自社EC用、モール用)ごとに最適化された複数の商品名や説明文テキストなど、管理すべきデータが複雑化していく傾向があります。

そのため筆者の見解として、商品マスタは単にデータを登録するという視点で捉えるべきではありません。日々変化する膨大な製品仕様を常に正確にアップデートし、社内のあらゆる部門や外部システムへ、同一の正しい情報を配信できる状態をキープすることこそが、商品マスタ管理の本質であると考えます。

種類② 顧客マスタ:顧客情報を管理するための基準データ

顧客マスタとは、自社と取引のあるユーザーや会員の基本情報を一元管理するためのマスタデータです。

◆顧客マスタのデータ構造・整理イメージ

顧客ID 氏名 住所 電話番号 メールアドレス 会員ランク
C-1001 山田 太郎 東京都渋谷区… 090-1234-5678 t.yamada@example.com ゴールド
C-1002 佐藤 花子 大阪府大阪市… 080-2345-6789 h.sato@example.com シルバー
C-1003 鈴木 一郎 愛知県名古屋市… 070-3456-7890 i.suzuki@example.com ブロンズ

出典:筆者作成

顧客マスタは主に、受注処理、商品の配送、問い合わせ対応、メルマガやLINEなどのメッセージ配信、CRMやLTV分析など、顧客接点が発生するすべてのフロント・バックヤード業務において参照されます。

顧客データ管理における難所は、同じ顧客がシステム内で重複して多重登録されてしまうリスクです。

例えば、自社ECサイトでのWeb会員登録、電話やFAXによるオフライン注文、実店舗のポイントカード会員などの情報が別々のシステムで管理されていると、同一人物であるにもかかわらずシステム上は「別の3人の顧客」として扱われてしまうといった実務トラブルが発生することがあります。

そのため、顧客マスタにおいては、複数のデータを一意に識別し、「1人の顧客に対して、1つの正しい連絡先と統合された購買履歴」をひも付けて確認できる状態を維持することが重要であると筆者は考えます。

種類③ 取引先マスタ:仕入先や販売先を管理するための基準データ

取引先マスタとは、原材料・製品の仕入先や外部の物流委託先、あるいは卸売販売先など、BtoBのビジネスパートナーに関する情報を管理するためのマスタデータです。

◆取引先マスタのデータ構造・整理イメージ

取引先コード 会社名 所在地 担当者 電話番号 支払条件
V-2001 株式会社ABC商事 東京都千代田区… 田中 健二 03-1234-5678 月末締め翌月末払い
V-2002 株式会社XYZ食品 大阪府大阪市… 加藤 美咲 06-2345-6789 月末締め翌々月末払い
V-2003 株式会社DEF物流 愛知県名古屋市… 佐々木 誠 052-345-6789 月末締め翌月末払い

出典:筆者作成

取引先マスタは主に、仕入発注、請求書の発行、買掛・売掛の入出金管理、契約管理など、企業間取引のインフラとして活用されます。

取引先情報では、会社名や所在地だけでなく、窓口の担当者、銀行の振込口座、そして「月末締め翌月末払い」といった取引条件の情報も管理対象となります。特にこれらの支払条件や請求先データは、企業のキャッシュフローや経理・月次決算処理に直結するため、購買部門や営業部門だけでなく、経理部門からも常に同じ正しいマスタデータとして参照される状態を作っておく必要があります。

種類④ 従業員・組織マスタ:社員や部署を管理するための基準データ

従業員・組織マスタとは、社内に所属するすべての人材と、組織の階層構造をひも付けて管理するためのマスタデータです。

◆従業員・組織マスタの整理イメージ

社員番号 氏名 所属部署 役職 メールアドレス 権限種別
E-3001 吉田 崇 営業部 部長 t.yoshida@example.com 管理者
E-3002 伊藤 洋子 営業部 主任 y.ito@example.com 一般
E-3003 斉藤 誠 経理部 係長 m.saito@example.com 一般

出典:筆者作成

従業員・組織マスタは主として、勤怠管理、給与計算、人事評価、そして社内稟議などの「ワークフローシステム」や、各種業務システムへのログイン「アクセス権限管理」などで参照されます。

このマスタにおいては、社員個人のプロファイルだけでなく、組織図上の位置付け(所属・役職・上長が誰か)という関係性のデータが重要になります。例えば、社内決済や受注承認のワークフローにおいて、「誰が申請を出し、誰の承認ルートへ割り振るべきか」を判別するための前提データとして機能しているからです。

種類⑤ ロケーションマスタ:店舗や倉庫などを管理するための基準データ

拠点(ロケーション)マスタとは、実店舗、物流倉庫、営業所、配送センターなど、自社のビジネスが物理的に展開されている「場所」に関わる情報を管理するためのマスタデータです。

◆拠点(ロケーション)マスタのデータ構造・整理イメージ

拠点コード 拠点名 拠点種別 所在地 営業時間 配送エリア
L-4001 東京本店 店舗 東京都渋谷区… 9:00〜20:00 関東エリア
L-4002 大阪支店 営業所 大阪府大阪市… 9:00〜18:00 関西エリア
L-4003 名古屋倉庫 倉庫 愛知県名古屋市… 8:00〜17:00 全国

出典:筆者作成

ロケーションマスタは、商品の「物理的な移動」が伴うすべての物流・オペレーション業務において駆動します。

オムニチャネルやマルチチャネルを展開するEC・小売業の現場において、「商品を、どの倉庫から引き当てして出荷するのが最も送料を抑えられるか」「顧客が希望した製品は、どこの実店舗に在庫があり、何時に店舗受取が可能か」「どのエリアまで配送可能か」といった、高度な物流アルゴリズムの計算前提を形作っているのが、このロケーションマスタのインフラです。

種類⑥ 会計・勘定科目マスタ:会計処理で使う基準データ

会計・勘定科目マスタは、日々の経済活動(仕訳、請求、支払い、経費精算、会計レポート)を正確な簿記のルールに則って帳簿に記録し、経営レポートや財務諸表(貸借対照表・損益計算書)を正しく出力するための基準となるマスタデータです。

◆会計・勘定科目マスタのデータ構造・整理イメージ

勘定科目コード 勘定科目名 科目区分 税区分 部門コード 備考
501 売上高 収益 課税売上 100 商品販売による売上
502 仕入高 費用 課税仕入 200 商品仕入による費用
503 販売管理費 費用 課税仕入 300 販売管理に関する費用

出典:筆者作成

日々の処理において、発生した売上や経費を「どの勘定科目に分類するか」「どの税区分で処理するか」の判定は、すべてこのマスタの定義に基づいて実行されます

会計・勘定科目マスタが整備されていることで、毎日の伝票処理がスムーズになるだけでなく、月次決算の高速化や、部門ごとの管理会計を正確に可視化することが可能になります。

マスタデータが業務において極めて重要になる3つの理由

企業活動においてマスタデータのクオリティを高く維持することは、単にシステム内の文字をそろえるというレベルの話ではありません。

実務においてマスタデータの整備が死活問題となる理由は、主に以下の3つの背景に集約されます。

理由① 各部門やシステム間における「情報のズレ」を根本から排除できる

大元のマスタデータが整備されていると、部門やシステムごとに異なる情報を参照してしまうトラブルを未然に防ぎやすくなります。

もしも、商品名、商品コード、顧客名、取引先名などが部門ごとに異なるローカルファイル(Excel等)でバラバラに管理されていると、同じ対象を指しているにもかかわらず、システム上は別の情報として扱われることがあります。

特に「商品マスタ」においては、自社ECサイト、楽天市場などのモール、基幹システム、倉庫の在庫管理システム、そして営業が使う提案資料にいたるまで、まったく同一の最新マスタ情報をシームレスに参照できる状態を作ることが重要です。

顧客マスタや取引先マスタでも同様に、データの重複や表記ゆれを上流フェーズで抑え込むことができれば、現場の不毛な確認作業や手動での修正コストを削減できます。

なお、表記ゆれの具体的なシステムリスクや、EC運用の現場に与える深刻な悪影響については、筆者が過去に執筆した下記の関連記事で詳細に解説しています。マスタ運用の重要性をより深く理解したい方は、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:EC担当者は注意!「商品情報の表記ゆれ」による5つの影響

理由② 受注・在庫管理・請求などの業務処理を正確に進めやすくなる

マスタデータは、毎日発生する無数の取引処理を実行するための前提として駆動します。

実際のビジネスでは、以下のようにあらゆる業務プロセスの裏側で、各種マスタデータが自動参照されています。

◆業務プロセスごとに参照される主要マスタと実務への影響

・受注処理 => 商品マスタや顧客マスタを参照
・在庫管理 => 商品マスタや拠点(ロケーション)マスタを参照
・出荷処理 => 顧客マスタや拠点(ロケーション)マスタを参照
・請求処理 => 顧客マスタや取引先マスタを参照
・支払い処理 => 取引先マスタや会計・勘定科目マスタを参照
・経費精算 => 従業員・組織マスタや会計・勘定科目マスタを参照

このように、マスタデータは社内のあらゆる主要業務の中で繰り返し、高頻度で参照されます

筆者の見解として、マスタデータがシステム側できれいに整備されていれば、注文が入るたびに現場の担当者が「正しい価格か」「配送先住所に不備はないか」「取引先との支払条件はどうだったか」を一件ずつ目視で確認したり、手入力で補正したりする手間そのものがなくなります。

商品マスタに正しい価格とJANコードがひも付いていれば、受注時の人為的選択ミスは抑えられます。また、顧客マスタに最新の配送先が同期されていれば、出荷や問い合わせ対応のスピードは速くなるでしょう。

つまり、マスタデータを整備して業務の基準情報をシステム側でそろえておくことは、現場の入力ミス、確認漏れ、判断のばらつき、そして事後処理のイタチごっこを仕組みで消し去り、バックヤード全体のオペレーションを正確かつ高速に進めるための正攻法であると筆者は考えます。手作業の確認コストに現場が追われる運用は本末転倒です。

理由③ データ集計や分析の前提を整えられる

マスタデータは、経営分析の精度を担保するインフラとしての側面も持っています。

商品コードやカテゴリ階層がシステム上で正しく一元管理されていれば、ブランド別・カテゴリ別の正確な売上推移や粗利を集計できます

また、顧客マスタが一意のIDで管理されていれば、一人の顧客が過去に自社ECや実店舗で何をどれだけ買ってくれたのかという「正確なLTV(顧客生涯価値)」の履歴をまとめて把握することが可能になります。

売上分析、在庫回転率の分析、CRMにおける顧客分析などは、すべて日々の取引ログを集計したものです。基準となるマスタデータが整っているからこそ、そこから導き出されるレポートやグラフの信頼性が保たれます

逆に、マスタデータに重複や表記ゆれが放置されていると、システム上は同じ商品や同じ顧客のデータが別々に分散して集計されてしまうため、レポートの数値そのものが狂い、経営陣が間違ったデータをもとに誤った経営判断を下してしまうというリスクに直結します。

次の売上を作るためのインサイトとして活用するためにも、マスタデータのガバナンスを敷くことこそがデータドリブン経営への第一歩であるというのが筆者の見解です。

マスタデータとトランザクションデータの違い

マスタデータの持つ役割を理解する上で、切り離せないのが「トランザクションデータ(取引データ)」という概念です。

トランザクションデータとは、受注、出荷、請求、入金、在庫の変動など、日々の具体的な業務活動の結果としてリアルタイムに発生する取引や処理の記録を指します。

「マスタデータ」が業務を駆動させるための基準情報であるのに対し、「トランザクションデータ」はその基準をもとに動いたビジネスの結果のログであるという相互関係が成り立ちます。

◆マスタデータとトランザクションデータの結合関係(概念図)

マスターデータとトランザクションデータの関係

出典:筆者作成

例えば、ECサイトで1件の注文が入った際に生成される「受注データ(トランザクション)」には、注文番号、注文日時、購入数量といったその瞬間固有の数値が記録されます。しかし、そのデータ単体を見ただけでは、「どの顧客が」「どの製品を買ったのか」という具体的な中身までは分かりません。

受注データ側が持っている「顧客ID」や「商品コード」というキーを媒介にして、大元にある「顧客マスタ」や「商品マスタ」のデータベースとシステム上で結合して初めて、「お届け先住所や正式な決済金額」という情報として完成する仕組みになっています。

つまり、トランザクションデータは、対象を顧客IDや商品コードといったキーで指し示すだけで、その実体(顧客名・住所、商品名・価格など)はマスタデータ側が保持します。そのため単独では対象の詳細が読み取れず、マスタデータと結合して初めて意味のある情報になります

筆者の見解として、このデータ構造があるからこそ、マスタデータ側にわずか1箇所の表記ゆれや重複、コードの誤りが存在すると、そのマスタを参照して生成される何千・何万件もの日々の取引データすべてにエラーや数値の狂いが伝染していくことになります。

トランザクションデータをシステムに正しく蓄積し、後々の経営分析や売上集計に活用するためにも、大前提となるマスタデータを常にクリーンに維持するガバナンスが欠かせないのだというのが筆者の見解です。

※なお、ここで示したデータ構造は一般的な概念モデルであり、実際にどのようなマスタとトランザクションが結合するかは、企業の業務内容や導入しているシステムアーキテクチャによって細かく異なります。

マスタデータ全体を管理する取り組み「MDM」とは

このように、マスタデータはあらゆる業務システムの中心で参照される基準情報です。しかし、多くの企業では、商品マスタはEC部門や開発部門、顧客マスタは営業部門、取引先マスタは経理部門というように、システムや部門ごとにデータがバラバラに管理されてしまっています。

システム間で名称やコードが乖離していると、全社的なデータ統合やクロスチャネルでの集計が不可能になってしまいます。

こうしたバラバラな基本情報を全社的な視点で統合し、常に正しいデータを維持するための管理手法および取り組みを、IT業界では「MDM(Master Data Management)」と呼びます。

MDMを社内に導入・確立することで、データの整合性がシステム間で完全に保たれるようになり、ビジネスの現場における業務処理のスピードと、データ活用の精度を高めることが可能になります

◆MDMを企業が導入する主なメリット

・データの信頼性と意思決定・実行の速度を底上げする
・データの版ズレや手作業による確認・修正といった無駄な作業を排除し、バックヤード全体の業務効率を向上させる
・全社的なデータ利活用とDXを推進して、スピード経営を後押しする
・仕様変更や組織改編といったマスタデータの変更にもシステム全体がすぐに対応できる

経営のスピード感を高めるための「MDM」の具体的な仕組みや導入ステップ、より詳細なビジネスベネフィットについては、筆者が過去に詳しく解説した下記の関連記事にて網羅しております。

全社的なデータ統制に課題を感じている方は、ぜひあわせてご参照ください。

関連記事:マスタデータ管理(MDM)とはスピード経営を実現する仕組み

なお、MDMは、顧客・取引先・会計など、企業が持つすべてのマスタデータ全体を管理する考え方であり、当然その中には商品マスタも含まれます。しかし実務において、「商品データ」という領域は、データの種類が膨大で、かつ項目が複雑化しやすいという性質を持っています。

品名や価格といった基本属性だけでなく、詳細なスペック数値、画像素材や紹介動画、多言語の説明文HTMLタグ、さらには「自社ECサイト用」「楽天市場用」「卸売用」といった配信チャネルごとに最適化された複数のバリエーションテキストなど、非構造化データが増え続けるからです。

そのため、一般的な基幹システムが対応している画一的なMDMの仕組みだけでは、ECやマルチチャネル展開で必要とされる商品情報を管理しきることは困難になります。

だからこそ、複数のモールや自社EC、デジタルカタログなどの現代のECビジネスにおいては、全社的なMDMの思想をベースにしつつ、商品マスタの管理に特化したプラットフォームである「PIM(商品情報管理システム)」を導入するアプローチが有効であるというのが筆者の見解です。

商品情報に特化して管理するなら「PIM」が有効

全社的な基本データを統制する手法が「MDM」であるのに対し、「商品マスタの乱れ」や「EC商品情報の管理の煩雑さ」が課題にあるならば、商品情報管理に特化したシステム「PIM(ピム)」の活用が有効です。

PIM(Product Information Management) は、従来の基幹システム(ERP)ではテキストデータとして格納することが難しかった、商品名やコード、価格といった基本スペックに加え、画像、紹介動画、HTMLの説明文、チャネル別のバリエーションテキスト、さらには関連する取扱説明書(PDF)にいたるまで、商品に関するあらゆるデジタル資産を一元管理するための仕組みです。

◆PIMで管理できる主な商品情報一覧

管理対象 内容
基本情報 商品コード、商品名、カテゴリ、販売価格など
スペック情報 サイズ、重量、素材、カラー、容量、成分表、規格など
販売情報 販売期間、セール価格、配送方法、販売ステータスなど
コンテンツ情報 商品説明文、キャッチコピー、訴求文、ページ情報など
メディア情報 商品画像、動画、バナー画像など
関連資料 仕様書、製品カタログ、取扱説明書、施工図面、PDFなど
チャネル別情報 自社EC、モール、カタログなどに掲載する商品情報

特に、自社ECサイトだけでなく、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングといった複数のECモールに並行出店し、さらに紙のカタログや営業用の提案資料、実店舗のPOSシステムなど「複数の配信チャネル」を持つ企業ほど、商品情報のバリエーション管理は複雑化していきます。

例えば、「自社ECサイトではブランドの世界観を伝えるために詳しい説明文を掲載したい」一方で、「特定のモールでは文字数制限や規約に合わせて商品名を短縮したい」、さらに「営業資料用にはBtoB向けの固い文面に加工したい」といった、チャネルごとの個別最適化の業務が発生するからです。

このような複雑な運用を、現場の担当者がローカルのExcelや部門ごとの共有ファイルで行っていると、どれが最新の正しいデータなのかが分からなくなり、チャネル間で価格の表示ズレや古いスペックの誤掲載といった、顧客の信頼を裏切る実務トラブルが頻発してしまいます。

PIMを活用することで、商品情報を一か所に集約し、各部門や各チャネルが同じ最新情報を参照しやすくなります。また、商品情報の登録項目を自由に設計したり、必須項目や入力制限を設定したりすることで、登録漏れや入力ミスを防ぎやすくなります。

PIMを導入すれば、すべての製品データを中央のプラットフォームに1回登録するだけで、あらゆる部門や外部システムが自動で参照できるようになります

また、項目設計の自由度が高いため、必須入力項目の設定や全角・半角などの入力制限をシステム構造の力でかけることができ、登録漏れや人為的な入力ミスを防ぎやすくなります。筆者の見解として、PIMの価値は、単にデータをきれいに保管しておくだけの静的な倉庫ではないという点にあると考えます。

一元管理されたクリーンな商品マスタをベースにしながら、自社EC、モール、各種SNS、さらには社内の基幹システムや店舗のPOSにいたるまで、それぞれのチャネルが求める最適なフォーマットへ自動連携することこそが、PIMが果たすべき真の役割であると筆者は確信しています。

◆PIMによる商品情報の一元管理と多チャネル連携のイメージ(EBISU PIM)

EBISUPIMの仕組み図

出典:EBISU PIM(エビス ピム)

つまり、PIMは商品マスタや商品情報を正確に管理し、複数の部門やチャネルで活用しやすくするための仕組みです。商品点数が多い企業や、複数チャネルで商品情報を展開している企業では、商品情報管理の効率化と品質維持のために、PIMが有効になります。

まとめ

企業のすべての業務活動を駆動させる基準となる「マスタデータ」。これをシステム側で適切に一元管理・運用することは、データの重複や表記ゆれ、そして情報の更新漏れを未然に防ぎ、日々の業務処理やデータ活用を正確かつ効率化するための正攻法です。

企業が扱うマスタデータには、商品、顧客、取引先、従業員、物理的な拠点、会計など多種多様な種類が存在しますが、なかでも「商品マスタ」は、単純なテキスト情報だけでなく、詳細な仕様スペック、画像・動画、説明文、多言語テキスト、チャネル別の最適化データなど、管理対象が肥大化しやすいという性質を持っています。

特に、自社ECサイト、複数の外部モール、営業資料、紙のカタログなど、複数のチャネルを横断して製品を展開している企業ほど、大元のデータ構造が分散しやすく、更新漏れやチャネル間での情報の不一致というボトルネックに直結しがちです。

だからこそ、商品マスタや商品情報を正確に管理し、複数の部門や多チャネルで戦略的に活用していくためには、総論としてのMDMの思想をベースにしつつ、商品情報に特化したPIMを仕組みとして導入することが有効なアプローチであると筆者は考えます。

インターファクトリーが提供する商品データ統合プラットフォーム「EBISU PIM(エビス ピム)」は、まさにこうした事業者様が直面する商品データのサイロ化を根底から解消し、各チャネルへの情報連携や商品データのクレンジングを効率化するクラウド型の商品情報管理システムです。

自社が取り扱う商材の特性に合わせて商品マスタの登録項目を柔軟に設計できるほか、配信先チャネル別のコンテンツ管理、外部システムとのデータ連携、各部門のアクセス権限管理にいたるまで、商品データ運用のインフラに必要な機能を網羅しています。

日々の商品登録業務の肥大化に限界を感じている企業様や、商品マスタの乱れによってシステムエラーや販売機会の損失に悩まされている担当者様は、自社のデータマネジメントのあり方を根本から見直す好機として、ぜひ「EBISU PIM」の活用をご検討ください。

EBISU PIMに関する機能の詳細、個別のご相談、資料請求は、下記の公式サイトよりお気軽にお問い合わせください。

公式サイト:EBISU PIM(エビス ピム)

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井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。