パンチアウト連携とは、購買管理システムと外部のECサイト(アスクル、モノタロウなど)やECモール(Amazonや楽天市場など)、あるいは、自社ECサイトとECモールをシームレスに連携し、外部サイトの豊富な商品ラインナップから商品を選択後、自社システムで購入手続きを完了させることで、購入・決済プロセスを効率化する仕組みです。
購買管理システムとの連携では、購買担当者は自社の購買管理システムから外部のECサイト/ECモールに直接アクセスして商品を選択した後、購買管理システムで購入申請と発注手続きを行うことができます。また、自社ECサイトとの連携では、自社サイト経由でECモールの商品を購入できるようになります。
パンチアウト連携の導入を検討する際は、最初に自社システム(購買管理あるいはEC)がパンチアウト連携の実装に対応できるかどうかを確認し、対応できない場合には、外部のパンチアウト連携用ツールを利用する方法を検討すると良いでしょう。外部の専用ツールを使用することで、費用と労力を抑えて業務を効率化できます。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、「パンチアウト連携」について詳しく解説します。
パンチアウト連携の2つの用途
まず、一般的にパンチアウト連携には、以下の2つのタイプの連携があります。
◆パンチアウト連携の2つの用途
用途② 自社ECサイトとECモールとのパンチアウト連携
「パンチアウト連携」というと購買業務の効率化を目的とする用途①が一般的です。
自社の購買管理システムに外部ECサイト/ECモールを商品カタログとして連携し、選択した商品情報をもとに社内の購買フローに沿って購買管理システムで申請・発注できます。自社の調達に限定した情報管理が主な目的となるため、データ連携は比較的シンプルです。
一方、用途②の場合は、自社EC会員の基本情報と購入履歴との整合が必要になるため、名寄せや履歴データの統合方法を考慮することが必要となり、データ連携はやや複雑です。
それぞれ連携方法について、以下でもう少し詳しく解説します。
用途① 購買管理システムと外部のECサイト/ECモールとの連携
下図は、購買管理システムと外部ECサイトとのパンチアウト連携後の発注フローの概要です。
◆購買管理システムと外部ECサイトとのパンチアウト連携後の発注フロー
出典(画像):筆者作成
社員(=購買担当者)が自社の購買管理システムから連携先のショッピングサイト(=ECサイト)にログイン(①)し、連携先ECサイトで購入したい商品を選択(②)したら、購買管理システム上で上司(=購買承認者)への購入申請を作成(③)します。購買管理システム上で購買申請が承認されると、連携先ECサイトへの発注が完了(④)します。
購買管理システムと外部ECサイトとを連携することで、購買業務をスムーズに行えるようになります。
パンチアウト連携を導入していない場合には、上図の③の申請と④の発注フローで、以下の手順①②のいずれかを踏む必要があります。
◆パンチアウト連携を導入していない場合に申請書作成で必要な手順
手順① 購買管理システムで購入申請を作成する際に、すでに取引実績のある企業の商品カタログや外部ECサイトの商品ページに掲載されている商品番号を入力して商品を指定する。承認後、決められた手順で商品を発注する。
手順② 外部ECサイトで商品を検索して、購買管理システムで購入申請を作成する際に、商品情報や購入先の情報を入力して商品を指定する。承認後、購入先のECサイトで商品を発注する。
手順①はよくある手順ですが、取引先企業で取り扱いのない商品やもっと費用対効果の高い商品を購入したい場合には手順②の方法で商品を探して購入することになりますが、この場合は申請書の作成や承認に時間がかかる場合があります。
パンチアウト連携を導入することで、多くの商品を取り扱っている外部のECサイト/ECモールでの商品購入をスムーズに行えるようになります。
例えば、部品や機器などで購入頻度が高くなりやすい製造業やIT関連部門などでは、パンチアウト連携による業務改善効果をより実感できるでしょう。
用途② 自社ECサイトとECモールとのパンチアウト連携
下図は、自社ECサイトとECモールとの連携イメージです。
◆自社ECサイトとECモールとのパンチアウト連携イメージ
出典(画像):筆者作成
自社ECサイトとECモールを連携するパンチアウト連携では、商品情報だけでなく、会員情報や購入履歴などのデータ連携が必要になるため、導入における開発規模が大きく、費用も高額になります。そのため、費用対効果から導入を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
商品選択だけでなく、購入手続きまでを連携先ECモールで完了させる「パンチイン連携」という連携方法もあるのですが、この記事では「パンチアウト連携」にフォーカスしているため、詳しい説明は割愛します。
パンチアウト連携機能の3つの実装方法
パンチアウト連携機能を実装する方法としては、以下の3つが挙げられます。
◆3つのパンチアウト連携機能の実装方法
実装方法 | 特徴 | 費用感 |
方法① ASPの専用ツールを利用する | 最も費用が安く最短で導入可能。ただし、連携先ECで連携不可の場合がある | 初期:数十万円~ 月額:数万円~ |
方法② 自社の現行システム(購買管理/EC)の機能を使用する | 連携先ECサイトとAPI等によるデータ連携を実装できる。連携先ECで連携不可の場合がある | 初期:数十万円~ 月額:購買管理システムの運用保守コストに追加機能分を追加した料金 |
方法③ 自社の現行システム(購買管理/EC)に新規開発で機能を追加する、または新しいシステム(購買管理/EC)を構築する | 必要な機能を自由に実装できるが、開発に莫大な費用がかかり、費用対効果を得られにくい | 初期:数千万円~ |
出典:筆者の経験に基づき作成
以下に、それぞれの方法について詳しく解説します。
方法① ASPの専用ツールを利用する
ASPのパンチアウト連携ツールを利用することで、現行の自社システムと外部ECサイト/モールを連携できます。ASPで提供されるパンチアウト連携ツールは、代表的な購買管理システムや主要なECサイトとの連携実績も多いため、自社の購買管理システムが一般的なもので、連携先が大手のECサイト/ECモールであれば、比較的容易に実装できます。
ツールの実装はベンダーが行うため、自社のリソースは最小限で導入できます。費用感も導入費用はかかりますが、月額数万円からのサービスもあるため、最も費用対効果の高い方法といえます。
ただし、自社システムあるいは連携先ECシステムがAPI連携に対応できない場合には、利用できないため注意しましょう。
方法② 自社の現行システム(購買管理/EC)の機能を使用する、または機能を追加する
自社の現行システムでパンチアウト連携機能が実装されている場合は、連携先ECサイト/ECモールに連携可否を確認した上で、API等を使った連携が可能です。連携先システム側にもコストが発生するため、初期コストは数十万円~という費用感になります。
連携先システムが外部システムとの連携に対応していない場合には、利用できません。そのため、Amazon、アスクル、モノタロウなど、パンチアウト連携に対応している大手ECサイト/モールとの連携に限定される方法になります。
導入を検討する場合には、最初に自社のシステムが「パンチアウト連携」に対応しているかを確認しましょう。以下は確認する際の4つのポイントです。
◆自社システム(購買管理/EC)の確認ポイント
② 対応可の場合、連携対象のECサイトの情報
③ 対応可の場合、連携を希望しているECサイトとの連携可否
④ 対応可の場合、追加の料金の要不要(必要な場合は金額)
方法③ 自社の現行システム(購買管理/EC)に新規開発で機能を追加する、または新しいシステム(購買管理/EC)を構築する
新たにパンチアウト連携機能を開発し、現行システムに追加する、または、現行システムをフルスクラッチでリニューアルする方法です。新たにシステムを構築する場合は、あらかじめ拡張性の持ったパンチアウト連携機能を搭載しておくことで、代表的なECサイト/モールとの連携が可能になります。
しかし、よほどの事情と予算に余裕がある企業でない限りは、莫大な開発コストに見合う効果を得られず、デメリットが多いため、実際には非現実的な選択肢となります。
◆フルスクラッチ開発のデメリット
② 開発期間が長い
③ 維持管理コストがかかる
④ システムが陳腐化する
このため、新たにシステム(購買管理/EC)を構築する場合は、よほどの理由がない限り、パッケージかASPを利用することをおすすめします。初期費用だけでなく、運用コストも抑えられるため費用対効果が高くなります。
パンチアウト連携の6つの導入メリット
パンチアウト連携を導入することで得られるメリットを6つ紹介します。
メリット①~⑤は購買管理システムと外部ECサイト/ECモールとの連携、メリット⑥は自社ECサイトとECモールとの連携におけるメリットです。
メリット① 自動化による業務効率化
購買管理システムと外部ECサイト/ECモールとのデータのやり取りが自動化されるため、申請書の作成にかかる時間を短縮でき、入力ミスなどによる誤発注の発生を防ぐことができます。
発注頻度が高かったり、定期的に大量発注が生じたりする企業では、業務効率の大幅な改善が期待できます。
メリット② 調達におけるコスト管理の透明化
購買管理システム内で予算と実績をリアルタイムで管理できるようになるため、コスト管理がしやすくなります。
メリット③ 従業員の利便性向上
購買管理システムから連携先ECサイトに直接アクセスし、必要な商品を素早く選択して申請手続きができるため購買担当の利便性が高まります。また、その際に商品の納期や在庫状況を把握できるため、発注後の調達管理もスムーズに計画できます。
メリット④ 調達コストの削減
Amazonやアスクル、モノタロウなどの競争力が強く、価格の安いECサイト/ECモールと連携することで、連携先ECサイト/ECモールのキャンペーン価格や特別条件が反映されるため、調達コストを削減できる可能性があります。
特に年間取引額が大きくなるほど、メリットも大きくなります。
メリット⑤ 調達情報の一元管理
購入履歴をデータで一元管理できるため、過去または進行中の調達状況を簡単に確認できます。また、蓄積されたデータを活用して予測分析などを行うことで、データに基づいた予算計画を策定できるようになります。
例えば、購入頻度の高い商品を特定し、連携先ECサイト/ECモールの商品の中でより低料金で代替可能な商品がないかといった検討もしやすくなるため、調達コストを最適化できる可能性があります。
メリット⑥ 自社にない商品ラインナップを展開することができる
自社ECサイトとAmazonや楽天市場などのECモールのパンチアウト連携により、ECモールの商品ラインナップを自社サイトで展開できます。
また、自社ECサイトでポイントサービスを実施している場合には、自社のEC会員が連携先ECモールで購入した際に自社のポイントを付与することもできるため、自社のEC会員の満足度向上にもつなげることができます。
購買管理システムと外部ECサイトの連携時の注意点
購買管理システムと外部ECサイト/ECモールとのパンチアウト連携を導入した後で、想定していなかった問題が生じる場合もあります。
導入後に連携先ECサイト/ECモールの追加や変更が困難な場合がある
連携後に連携先ECサイト/ECモールを変更・追加しようとすると、大掛かりなシステム改修が必要になる場合があります。特に、購買管理システムを自社開発している場合には注意が必要です。
ASPのパンチアウト連携ツールを利用している場合や、購買管理システムに標準的な連携機能が搭載されている場合は最小限の費用で済みます。
初期導入時に、導入後の連携先の増減にも対応できる実装方法を選択しておくことが、長期的なコストを抑えることにつながります。
まとめ
パンチアウト連携の導入を検討する際は、最初に連携したい自社のシステムにパンチアウト連携を実装できるかどうかを確認しましょう。もし簡単に実装できず大規模な機能追加やリプレースが必要となる場合は、ASPのパンチアウト連携ツールの利用をおすすめします。費用対効果を考えると、フルスクラッチ開発による機能実装は最終手段にしておきましょう。
パンチアウト連携が可能なECシステムの新規構築や乗り換えを検討されるのであれば、インターファクトリーのクラウドECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」がおすすめです。フルカスタマイズが可能で、常に最新のセキュリティと機能を提供できるクラウドのメリットはもちろん、フルカスタマイズも可能なので、パンチアウト連携にも柔軟に対応できます。サービスの詳細は下記の公式ホームページをご覧ください。