メーカー・卸売企業必見!卸売ECサイトに必要な9つの機能


昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の影響を受け、これまでオンラインで行っていなかった受発注業務をECサイトで管理したいと考える企業が増えています。BtoCに比べるとBtoBではデジタル化の取り組みが遅れており、ようやくデジタル化に関心を持ち始めたというメーカーや卸売企業も少なくありません。

卸売業界のECサイトには、以下の9つの機能が必要になるでしょう。

◆卸売ECサイトに必要な9つの機能

機能① アカウント管理
機能② 販売価格設定
機能③ 見積作成・管理
機能④ 受発注管理
機能⑤ 請求管理
機能⑥ 支払い管理/マージン管理
機能⑦ 注文取消し処理
機能⑧ スマホ対応
機能⑨ 取引先軸での商品検索

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、卸売ECサイトを構築するためのポイントや構築の手順を詳しく解説します。

メーカー/代理店、主体者によって異なる卸売ECサイトの構築方法

卸売用のECサイトを構築する場合には、メーカーと代理店のどちらが運用するかによって要件が大きく変わります。まずは、日本でメーカーが商品を生産してから市場に流通するまでの商流について確認しましょう。

◆日本の小売における一般的な商流

① メーカー(製造・卸売)
↓↓商品を卸す↓↓
② 代理店(卸売)
↓↓商品を卸す↓↓
③ 小売店(販売)
↓↓商品を販売↓↓
④ 消費者

上記のように、卸売を行っているのは「① メーカー」と「② 代理店」なので、ECを誰が構築するかによってシステムに求められる要件が変わってきます。

卸売ECサイトの2つのモデル

モデル① メーカー主体の卸売ECサイト
モデル② 代理店主体の卸売ECサイト

それぞれ詳しく解説します。

モデル① メーカー主体の卸売ECサイト

卸売ECサイトをメーカー主体で構築・運用するモデルです。代理店はメーカーに発行してもらったアカウントでメーカーの卸売ECサイトにログインして、商品を発注します。また、代理店がサブアカウントを取引先の小売店に発行して、メーカーの卸売用ECサイトを利用してもらうようにすることも可能です。小売店はメーカーの卸売用のECサイトで代理店から商品を仕入れます。商品はメーカーから小売店に直接発送される場合でも、小売店は代理店に販売マージンを支払う必要があります。

またこのモデルでは、メーカーが代理店を介さず、小売店に直接販売するケースも管理する必要があります

モデル② 代理店主体の卸売ECサイト

卸売ECサイトを代理店主体で構築し、運用するモデルです。代理店は複数のメーカーから商品を仕入れ、複数の小売店に販売します。

このモデルでは、仕入れ先がメーカーではなく、他の代理店というケースも管理する必要があります

卸売ECサイトに必要な9つの機能

卸売ECサイトに必要な9つの機能について、1つずつ説明します。

機能① アカウント管理

卸売ECサイトは、メーカー、代理店、小売店だけが利用するクローズドサイトです。

メーカー主体の卸売ECサイト(モデル①)では、メーカーが取引先の代理店にアカウントを発行します。代理店には子アカウントの発行権限を付与し、代理店が取引先に子アカウントを発行できるようにする必要があります。

◆メーカー主体の卸売ECサイト(モデル①)のアカウントの種類

① メーカーの管理/業務用アカウント
② メーカーが代理店に発行するアカウント
③ 代理店が取引先の小売店/代理店に発行する子アカウント

代理店主体の卸売ECサイト(モデル②)では、代理店が仕入先のメーカー/代理店と卸先となる小売店/代理店にアカウントを発行します。

◆アカウントの種類:代理店主体の卸売ECサイト(モデル②)

① 代理店の管理/業務用アカウント
② 代理店が、仕入先のメーカー/代理店に発行するアカウント
③ 代理店が卸先の小売店/代理店に発行するアカウント

機能② 販売価格設定

BtoB取引では、1注文あたりの数量が多い取引先企業には割引価格を適用するなど、取引先ごとに異なる販売価格で契約をしている場合が多いため、ECサイトにも、取引先ごとに販売価格を設定する、あるいは割引率を設定して販売価格を自動計算するための機能が必要になります。

機能③ 見積作成・管理

BtoB取引では、発注前に見積書の提出が必要な場合も多いため、ECサイトでは、商品をカートに入れた後にすぐに発注処理を確定するのではなく、見積書を発行するための機能が必要になります。

見積書データは、ECサイトでいつでも閲覧、ダウンロードできるように管理しておくことで、ペーパーレス化の促進と受発注業務の効率化が期待できます。

機能④ 受発注管理

受発注管理はECサイトの主要な機能の1つです。例えば、リピート注文の多い場合は、「前回と同じ内容」や「過去の履歴から選択した内容」で再注文できる機能を組み込んでおくと、現場で大変重宝されます。

また、商品ごとに在庫状況を表示し、納品が可能な期間から納期を選択してもらうようにすることで、発注トラブルを低減することができます。

高額取引では発注前に社内承認が必要な場合が多いため、発注申請/承認フローの機能をECサイトで提供すると取引先に喜ばれる可能性は高いです。ただし、高度な機能実装となるため開発コストが膨らむ点には注意が必要です。

機能⑤ 請求管理

請求処理も、業界や企業によってさまざまなフローがあります。ECサイトの請求手続きでは、ECサイトで対象期間の請求書をダウンロードし、取引先に送付するという方法が一般的です。

ただし、BtoB取引の場合、請求書管理は基幹システムですべて行っているという企業も多いため、卸売ECサイトを構築する際には、請求管理業務をECシステムで行うのか、基幹システムで行うのかを事前に確認・決定しておく必要があります。

機能⑥ 支払い管理/マージン管理

メーカー、代理店、小売店が利用する卸売ECサイトでは下記の2つの支払い方法に対応できる必要があります。

◆卸売業界の支払い2つの方法

パターン①
小売店は代理店に、代理店はメーカーに代金を支払う

パターン②
小売店はメーカーに代金を支払い、後日メーカーが代理店にマージン分を支払う

パターン①は一般的な取引と同じ方法ですが、パターン②は代理店が発注履歴を確認してマージン分を計算して、メーカーに請求を立てる必要があります。

機能⑦ 注文取消し処理

卸売業界では注文後に注文の訂正や取り消しが発生した場合、「赤伝処理」が必要になります。「赤伝(赤伝票)」は、処理済みの元伝票(注文)に対して発行されるマイナス数量の伝票(追加注文)で、赤伝を発行して元伝票の注文内容の変更・キャンセル処理を行います。例えば、処理済み元伝票の商品10個のうち3個をキャンセルする場合、元伝票に対してマイナス3個の赤伝を発行することで、最終的に合計7個の受注として処理されます。

赤伝処理のメリットは、会計処理をシンプルかつ正確に管理できる点で、帳簿に受注とキャンセルの流れが正確に記録されるため、後日の不整合が生じることはありません。

一般的なECシステムには赤伝処理の概念はないため、元の注文をキャンセルし、変更後の情報で新規注文を作成する、という方法で対応することになります。

受発注業務としてはどちらも違いはありませんが、会計処理上は注文の訂正ではなく別注文として記録されるため、変更前後の注文の関係性を正確に管理することが困難です。卸売ECサイトでは、会計処理に沿った処理が求められるため、経営の透明性からも、赤伝処理に対応した「注文取消し処理」は重要な機能なのです。

機能⑧ スマホ対応

BtoCのECサイトでは、ユーザーの利便性はもちろんですが、Googleのモバイルフレンドリーに対する評価に関わるSEO対策のためにも、スマホ対応が必須だと考えられています。しかし、クローズドの卸売ECサイトでは、SEO対策は不要なので、業界や取り扱い商品によって、使用者の利便性を高められる場合はスマホ対応を検討すると良いでしょう。

例えば、美容業界やワイン業界など、卸先が店舗の場合はスマホ対応が必須となります。店舗にPCを設置していないことも多く、また、施術や調理、接客などのすき間時間に、「スマホでさくっと発注したい」という需要があるからです。逆に、OA機器の販売や取引先がオフィスで業務を行っている場合は、PCでの利用が多いため、スマホ対応は必須ではありません。

機能⑨ 取引先軸での商品検索

卸売ECサイトでは、新しい商品を購入する場合でも、すでに取引のある代理店など(いわゆる「帳合先」)から仕入れたいというというニーズがあります。

そのため、小売店が使用する商品検索画面では、「取引先企業」も重要な検索キーとして実装することが求められます。

メーカーが小売店に直接販売するケースもある

日本の卸売業の商流は複雑で、業界や企業によって異なる商習慣が存在します

特にメーカー主体の卸売ECサイトでは、代理店を介さず小売店に直接販売するケースもあるため、その場合には、代理店同様の権限を持つアカウントを小売店に発行して管理をするための仕組みが必要です。

1つのECサイトに「代理店経由の販売」と「小売店への直販」が混在するため、卸売ECサイトは「商流ごとの権限設定」や「取引先ごとの価格/条件設定」といったきめ細かい情報を管理・運用していくための柔軟な拡張性を備えていることも重要になります。

まとめ

卸売ECサイトの構築では、業務効率化の実現と従来の商習慣の反映を両立できる、柔軟なカスタマイズとシステム連携に対応可能なECプラットフォームを選定することが重要になります。

複雑なカスタマイズやシステム連携の実績も豊富なインターファクトリーのクラウド型ECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」なら、複雑な卸売ECサイトも安心して構築することができます。

興味のある方は、以下の公式サイトをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。

公式サイト:「EBISUMART(エビスマート)


ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。