統合型Eコマースとは必要な機能・サービスと連携可能なEC


統合型Eコマースは、楽天市場やAmazonなどのECモールや、マーケティング、広告、SNS、決済、物流などのECに関連する機能の外部サービスをECサイトに連携し、異なる複数のプロセスやビジネス機能を1つのプラットフォームで一元管理してECサービスを展開する手法です。

統合型Eコマースの最終ゴールは、業務効率向上やコスト削減ではなく、顧客体験の向上による収益の拡大です。簡単に言うと、ユーザーが「すごい!」と思わず喜んでしまうような顧客体験をECサイト(あるいはオムニチャネル)で提供していこう、ということです。

EC(Eコマース)が登場して20年以上が経過し、国内ではAmazonや楽天市場などのショッピングモールや、ニトリやヨドバシカメラなどをはじめとする小売企業のオンラインショップが勢いを増しています。

また、BASEやSTORESといったASPのEC専用サービスが提供されるようになったことで、個人が手軽にECサイトを開設できるようになり、現在インターネットには非常に多くのECサイトが乱立しています。そのため、優れた顧客体験を提供して差別化を図るために統合型Eコマースが求められるようになりました。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを実施している筆者が、統合型Eコマースの事例と個別の連携方法について解説します。

統合型Eコマースの事例3選

まずは、大手小売3社の統合型Eコマースの事例を見ていきましょう。いずれのECサイトも、ユーザーの利便性にフォーカスしたさまざまな工夫が施されています。

事例① 優れた顧客体験を提供する「ユニクロ」

皆さんもよくご存じの「ユニクロ公式オンラインストア」です。

ユニクロ公式オンラインストアの商品ページ

引用(画像):ユニクロ公式オンラインストア

ユニクロの公式オンラインストアの商品ページには、顧客体験を向上させるための、さまざまな機能が実装されています

その中でも最も革新的なサービスが、「MySize ASSIST」という機能で、ユーザーは身長や体重、体型の特徴、着用感などを入力することで、サイズ提案を受けることができます。また、「MySize CAMERA」という機能では、ユーザーがスマートフォンなどのカメラで撮影した写真をもとに採寸してくれるので、自分に合ったサイズを手軽に知ることができます。

ユニクロのアプリやECサイトでは、各店舗の在庫情報を確認することができるのですが、これはバックエンドで店舗ごとの在庫情報をリアルタイムに連携することで実現しているサービスです。

その他にも、ECサイトで購入した商品の店舗受け取りサービスも提供するなど、すべての顧客接点で一貫した顧客体験を提供することで顧客ロイヤリティを向上させるために、店舗とECの連携強化やWeb接客の向上に注力していることが分かります。

事例② 圧倒的な配送スピードの「ヨドバシ.com」

家電ECのフラッグシップとも言われているヨドバシカメラも、さまざまな統合サービスを提供しています。その中で特筆すべきは、やはり商品の配送スピードでしょう。

以下はヨドバシカメラの公式オンラインショップ「ヨドバシ.com」の商品ページです。

ヨドバシ.comの商品ページ

引用(画像):ヨドバシ.com

商品ページには、何時間以内に注文するといつまでに届く、という情報がはっきり表示されており、ECシステムと物流システムが連携していることが分かります。

商品配送のラストワンマイルを担っているのは、「ヨドバシエクストリームサービス便」というサービスで、ヨドバシ.comでは1品から送料無料とすることでユーザーの利便性を高め、顧客体験の向上を図っています

ヨドバシ.comでは、家電だけでなく日用品や酒類も取り扱っており、品ぞろえはAmazonや楽天市場などのECモールに匹敵します。また、ポイントサービスがあることで、ユーザーは家電以外の商品もヨドバシ.comで購入しようという気持ちが高まりやすく、リピート購入やファン化につながっています。

事例③ 豊富なラインナップでレコメンドを駆使する「アスクル」

事務用品や文房具のオンライン通販「アスクル」の商品ページです。

◆アスクルの商品ページ

引用(画像):アスクル

ヨドバシ.comと同様にアスクルも、在庫情報をリアルタイムで連携することで配送時間を短縮し、顧客体験の向上を図っています。

またアスクルでは、アップセルやクロスセルにつなげるためにレコメンド機能を活用しています。BtoCの文房具販売では単品買いが多いと予想されますが、ユーザーの購買履歴に基づくレコメンドで、ユーザーに「これも欲しかったんだ!」と感じてもらうことで、ユーザーの潜在的な需要の掘り起こしと「ついで買い」を促しています

また、アスクルは商品のバリエーションが非常に多いため、商品を価格でソートして一覧表示する機能を用意するなど、ユーザーが商品を選びやすいような工夫が施されています。

統合型Eコマースの13の連携機能

今回は、統合型Eコマースの機能のうち、以下の13の連携機能を紹介します。

◆統合型Eコマースの13の連携機能

それでは、一つずつ見ていきましょう。

① 在庫連携(店舗連携)

店舗とECサイトの在庫をリアルタイムで連携するための機能です。欠品による販売機会ロスや過剰在庫を防ぐことができます。

また、大手企業では、複数店舗間での在庫連携や、Amazonや楽天市場などのECモールとの在庫連携を実装している場合もあります。

在庫連携を実装する場合は、新たに機能を開発する、あるいは、在庫連携に特化したサービスやシステムを使用するといった方法があります。

② ECモールとのデータ連携(Amazonや楽天市場等)

Amazonや楽天市場などのECモールに出店または出品することで売上拡大が期待できますが、一方で運用の管理工数が増えるというデメリットもあります。そこで両方でデータを共有できるようにします。

データ連携の対象となる情報(例)

・在庫情報
・商品情報
・受注履歴情報
・顧客情報

これらの情報を一元管理することで、複数出店のデメリットである管理工数を抑えることができます。ECモールとのデータ連携は、大手企業のECサイトなどで実装されています。

③ アプリ連携

オムニチャネル戦略の一環として、アプリ施策の中で実装される機能です。スマホアプリを配布することで、以下のようなメリットがあります。

アプリを配布するメリット(例)

・新しいタッチポイントができる
・プッシュ通知を送ることができる
・クーポンやポイントの配布・管理がしやすくなる
・新たな顧客データを取得できる
・他のチャネルを統合して管理できる

オムニチャネルを実現するためにはアプリ連携が不可欠です。ECサイトとアプリの連携については、以下の関連記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:売上をグっと伸ばす「ECサイトのアプリ化」を徹底解説

④ Web接客ツール連携

Web接客ツールは、アプリやECサイトでユーザーの動きに応じて、購買意欲を高めるための後押しや、問い合わせをサポートするためのツールです。

今はさまざまなWeb接客ツールが提供されているので、ECサイトと連携させることで、CVR(コンバージョンレート)の向上と売上拡大を図ることができます。

ECサイトにWeb接客機能を実装する場合、新たに機能を開発する方法もありますが、外部のWeb接客ツールを利用するほうが効率的です。コストを抑えて短期間で実装することができます。

Web接客ツールについては、以下の関連記事で詳しく紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:CVRを高めるための「Web接客ツール」の選び方・使い方

⑤ レコメンドエンジン連携

レコメンドエンジンはWeb接客ツールの機能の一つとして提供されることもありますが、この記事ではレコメンド専用のツール連携として紹介します。

レコメンドエンジンはECサイトの以下のページに設定されることが多いです。

レコメンドを設定するWebページ(例)

・トップページ
・カテゴリページ
・商品ページ

レコメンドエンジンは、ユーザーの過去の購買情報やサイトアクセス情報に基づき、ユーザーの興味関心がある商品をレコメンド(おすすめ)します。

例えば、特殊な革製品を購入したユーザーに、同じ素材を使った別の商品を提案するなど、ECサイトでOne to Oneマーケティングを行うためのツールです。

⑥ 広告プラットフォーム連携

ECサイトでよく利用される広告として「Googleショッピング広告」があり、検索エンジンの上部に広告を表示することができます。

◆Googleショッピング広告

出典(画像):Googleの検索結果画面を筆者が一部加工して作成

Google以外にも、ディスプレイ広告の一種で、広告欄に商品が露出される「Criteo(クリテオ)」などのサービスがあり、ECサイトと広告プラットフォームを連携させることで、外部のWebサイトに自動で商品広告を配信することができます。

特に、リマーケティング広告と組み合わせることで、カートから離脱したユーザーを追跡して再アプローチすることができるため、高い効果が期待できます。

⑦ SNS連携

SNSとECサイトを連携させるための機能です。例えば、ECサイトの商品ページとInstagramの投稿を連携させることが可能です。SNSの投稿にECサイトの商品ページのリンクを設定することで、SNSの投稿からECサイトに遷移させて、商品の購入を促進することができます。SNS連携は主にSNS側で設定します。

SNSのインフルエンサーに、商品に関する投稿にリンクを設定してもらうことで、売上拡大につながることが期待できます。

インフルエンサーマーケティングについては、以下の関連記事で詳しく紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:Commerce Marketing Blog「初めての『インフルエンサーマーケティング』を企業目線で解説

⑧ MA/CRMツール連携

MA/CRMツールで以下のECシステムのデータを活用して、One to Oneマーケティングを行うことができます。

◆MA/CRMツールとデータ連携する情報(例)

① 会員情報
② 商品情報
③ 購入履歴
④ 体験履歴(行動履歴など)

これらのデータをもとに、ユーザーごとに最適な情報をメールやLINEなどでDM配信します。連携対象のデータ種類が多いほど、より高度なパーソナライゼーションが可能になります。

⑨ BI/分析ツール連携

データを分析、可視化するためのツールです。Microsoft AccessやExcelを駆使すればデータ分析やグラフの作成はできますが、作業に時間がかかるうえ、間違ったデータを抽出したり、誤ってデータを変更してしまったりするリスクがあります。また、データ件数が多い場合には対応しきれません。

BIツールや分析ツールをECサイトに組み込むことで、データの分析や可視化が簡単に行えます。分析結果から素早くインサイトを得ることができるので、迅速な意思決定が可能になります。BI/分析ツール連携現状を把握し、次の打ち手を見つけるための非常に重要な機能です。

⑩ 決済システム連携

ECサイトで提供する決済方法には以下の種類があります。

◆ECサイトにおける主な決済方法

・クレジットカード決済
・コンビニ決済(後払い決済)
・代引き
・銀行振込
・ID決済(PayPal、Amazon Pay、楽天ペイ等)

新たな決済方法が次々と登場するため、多くのユーザーが利用する大規模なECサイトなどは、トレンドを調査して多くの人が使っている決済方法に、適宜対応していく必要があります。

しかし、複数の決済サービスを自社で個別に契約しようとすると、サービスごとに審査・契約が必要になります。ECサイトとの連携方法も異なるため、組み込む場合に時間も費用もかかってしまい、あまり現実的ではありません。

そのため、複数の決済サービスに対応しているシステムを利用することで、運用と管理の負担を減らすことができます。

⑪ WMS連携

WMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)には、以下のような機能があります。

◆WMSの機能(例)

・入庫管理
・在庫管理
・帳票管理
・棚卸管理
・出庫管理
・バーコード管理

ECサイトとWMSをAPIで連携することで、人的ミスを削減し、迅速で正確な受発注業務が可能になります。

⑫ 基幹システム連携

ECシステムと基幹システムとの連携では、以下の情報を共有する必要があります。

データ連携の対象となる情報(例)

・顧客情報
・受発注情報
・商品情報
・在庫情報

基幹システムとの連携は、さまざまな連携の中でも最も難易度が高く、時間も費用もかかります。基幹システム側の全ての情報を共有する必要はありませんから、必要なデータ項目、連携タイミング、連携方法などをじっくり検討しましょう

⑬ コールセンターシステム連携

コールセンターは、ユーザーから問い合わせがあった場合に、顧客の基本情報や履歴情報を確認しながら対応する必要があります。そのため、ECシステムのデータを共有するための連携が必要になります。また、テレビショッピングの受付対応などでは、代理注文の仕組みも必要になります。

統合型Eコマースを実現するなら「ヘッドレスコマース」が向いている理由

統合型Eコマースの環境の構築は大規模に及ぶ可能性があります。さまざまな構築方法が考えられますが、統合型Eコマースではヘッドレスコマースを採用すべきでしょう。

ヘッドレスコマースでは、ECのフロントエンドとバックエンドを分離し、両者をAPIで連携させることで、フロントエンドの拡張性を高めることができます。そのため、フロントエンドの機能追加が必要になった場合にも、バックエンドを気にすることなく対応することができます。

ヘッドレスコマースについては、下記の関連記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:「ヘッドレスコマース」とはECのUXを追求する最新の仕組み

統合型Eコマースはユーザー中心で考える

この記事では、統合型Eコマースについて紹介しました。統合型Eコマースはユーザー中心の概念に基づき、ユーザーに優れた顧客体験を提供するためのECプラットフォーム構築の考え方です。

統合型Eコマースを構築するのであれば、カスタマイズが可能なクラウドECプラットフォームがおすすめです。インターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」は、さまざまなシステムとの連携が可能なクラウドECプラットフォームです。

統合型Eコマースで高レベルの顧客体験を提供したいと考えている方は、ぜひ下記の公式ホームページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。

公式ホームページ:「ebisumart(エビスマート)」


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。