鉄鋼業界に必要な「受発注システムの機能」をプロが徹底解説

近年、鉄鋼業では受発注システムを導入してDXを推進する企業が増えています。しかし、業界特有の手続きや業務フローがあり、導入の難易度はやや高くなります。

鉄鋼商材は規格・寸法・長さ・重量などで複数のバリエーションがあり、取引先ごとに価格や取引条件が異なるため、一般的な受発注システムの機能だけでは運用できない場合が多いです。

そのため、鉄鋼業界で受発注システムを導入する際は、業務に即した機能要件を押さえることが重要になります。例えば、分納や受注残(注残)、出荷指図の管理といった受注後の工程まで考慮したシステムを設計する必要があります。

鉄鋼業界の受発注システムに必要な機能として、下記の5つが挙げられます。

◆鉄鋼業界の受発注システムに必要な5つの機能

① 複数の発注方法の管理
② 取引先ごとの価格設定
③ 申請・承認ワークフロー
④ 受注・出荷管理
⑤ 発注履歴・受注残(注残)管理

これらの機能に加え、自社の業務に合わせて柔軟に拡張・連携できるシステムを構築することが、導入後のシステムの利用率向上と安定運用の維持を実現するため鍵となります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、鉄鋼業界の受発注システムと主要な5つの機能について解説します。

鉄鋼業界における受発注の流れ

まず、鉄鋼業界でよく見られる受発注の流れを、以下のフロー図で確認しましょう。

◆鉄鋼業界の受発注フロー(概要図)

受発注の流れ

出典:筆者作成

上図では、流れが分かりやすいように、自社内の基幹システムやERPなどのシステムや他部門との情報交換フローは省略しています。そのため一見シンプルに見えますが、実際は業界固有の手続きやフローなどが多く、より複雑なフローになります。

鋼管や鋼材などの製品は、規格・寸法・長さ・重量など、さまざまなスペックのバリエーションごとに品番が細分化されているため、発注企業(取引先)の担当者は、膨大な商品の中から必要な製品を特定し、発注する必要があります。

受注企業(自社)の基本対応は、受注を確認したら自社倉庫の製品在庫を確認し、在庫があれば引き当てを行い、在庫がなければメーカーに発注する、という流れになります。

しかし、営業所によって、自社在庫とメーカー発注の優先順位が違っていたり、受注した製品を複数回に分けて納品する「分納」が発生したりすることも多いため、手続きを標準化しづらく、受注残管理や納期連絡、出荷指図といった後工程の業務も煩雑になりがちです。

こうした複雑な業務全体を効率化するためには、受発注システムの整備と、基幹やERPをはじめとする社内の他システムとのスムーズなデータ連携が必要になります。

鉄鋼業界の受発注システムに必要な5つの機能

鉄鋼業界の受発注システムには、一般的なECサイトとは異なる業界固有の機能が求められます。ここでは、主要な5つの機能を紹介します。

機能① 複数の発注方法の管理

鉄鋼製品は種類が多く、規格・寸法・重量といったスペックも複雑なため、発注企業にとっての発注のしやすさが重要になります。

そのため、商品ページで商品を選択して発注する方法だけでなく、商品コードと数量を直接入力して簡単に大量発注が行える機能や、過去の発注履歴をクリックして再発注できる機能、ファイル取り込みで一括発注ができる機能など、複数の発注方法を提供することが求められます。

また、発注テンプレート(頻繁に購入する品番のセット)やお気に入り登録などの機能もあると、より便利に発注を行えるようになるでしょう。

複数の発注方法と製品の特定がしやすくなる機能を提供することで取引先の発注業務の負荷を軽減でき、自社の問い合わせ対応や受注確認などにかかる工数を減らすことにもつながります。

機能② 取引先ごとの価格設定

BtoB取引では、取引先ごとに異なる価格条件で契約しているケースが一般的です。そのため、受発注システムでも取引先ごとに単価を設定する機能が必要になります。

市況変動や契約更新のタイミングに応じて価格を柔軟に変更できる管理機能も、忘れずに用意しましょう。

機能③ 申請・承認ワークフロー

BtoB取引では、発注金額が取引先の発注担当者の決裁権を超える場合には、取引先企業内で決裁者の承認を得る手続きが必要になります。そのため、受発注システムでも申請・承認ワークフロー機能が求められます。

承認ワークフロー機能では、取引先企業が複数のアカウントを登録し、アカウントごとに役割と権限を設定できます。そのため、承認が必要な注文を担当者が登録すると、決裁者に通知が送信され、承認・差し戻しの判断が行われるまで発注手続きを停止するといった運用が可能になり、意図しない高額発注や不正な発注の発生を防ぐことができます。

従来はメールや対面で行っていた申請・承認手続きを、受発注システムでデジタル管理できるようになるため、取引先企業の発注業務の可視化・効率化につながります。

機能④ 受注・出荷管理

受注・出荷管理機能は、受注業務と、在庫引き当て、出荷指図などの出荷業務を受発注システムで紐づけて管理する機能で、1つの管理画面で一連の業務を処理・確認できるため、受注企業(自社)の受注業務の大幅に効率化できます。

鉄鋼製品はサイズ・重量のバリエーションが多く、出荷における重量管理も重要になります。そのため、出荷物の重量をリアルタイムで確認できる機能があると、現場で素早い意思決定が行えるようになります。例えば、出荷業務の一環であるトラックへの積載計画を立てる際に、重量から積載効率を確認して過積載や低積載を避け、より効率的な計画を立案することも可能になります。

鉄鋼業界特有のサイズ・重量管理にも対応している出荷管理機能は、出荷業務の効率と正確性を高めるための重要な機能の1つです。

機能⑤ 発注履歴・受注残(注残)管理

鉄鋼業界では分納(複数回に分けて製品を納品すること)も多いため、受注から納品までの進捗をリアルタイムで追跡できる機能が必要になります。

納品や出荷が未完了の受注残(注残)の残数と予定納期を管理画面で分かりやすく確認できるようにすることで、取引先からの問い合わせにもスムーズに対応でき、適切に進捗を管理できます。

受注残(注残)は、在庫引き当てや出荷実績、納期などの確定情報と密接に関連しているため、受発注システムの機能で管理するのは難易度が高く、システムが複雑化しやすくなります。

そのため筆者は、受注残(注残)管理は、受発注システムに組み込まず、基幹や営業支援などの他のシステムで実装し、データをリアルタイム連携する方法を推奨します。

「受注残(注残)」については、関連記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

関連記事:ECサイトと基幹システムの連携から「受注残」を考える

受発注システムの3つの導入方法

受発注システムを導入するためには、以下の3つの方法があります。

◆受発注システムの3つの導入方法

① パッケージソフトウェア
② フルスクラッチ開発
③ カスタマイズ可能なクラウドサービス

いずれの方法もそれぞれメリットとデメリットがあるため、自社の事業規模や機能要件に合った方法を選択しましょう。

◆受発注システムの3つの導入方法の比較

① パッケージソフトウェア ② フルスクラッチ開発 ③ カスタマイズ可能なクラウドサービス
概要 標準機能を備えた既製品を導入する 自社要件に合わせてゼロから開発する 標準機能+必要に応じてカスタマイズできるクラウド型
初期費用 比較的安価 高額になりやすい 比較的安価
導入期間 短期~中程度の期間
(カスタマイズ範囲による)
長期間 短期~中程度の期間
(カスタマイズ範囲による)
カスタマイズ性 ある程度までは対応できる 予算に依存するが、
極めて高い
サービスに依存するが、ある程度までは対応できる
鉄鋼業界の要件の適合度 中程度(標準+カスタマイズで実現できる) 極めて高い 中程度(標準+カスタマイズで実現できる)
運用・保守コスト ベンダーに依存するが、高くなりやすい 全て自社で対応するため、高くなりやすい 一部をクラウドに任せられるため、①②より低い
アップデート 製品提供側に依存 自社で都度対応 継続的に提供される
拡張性・外部連携の実装 ある程度まではカスタマイズで対応できる 高い サービスに依存するが、機能として提供されている場合も多く、拡張性も高め
向いている企業 ・標準機能で要件をカバーできる企業
・コストと導入スピードを重視する企業
・複雑な要件や独自の機能を実現したい企業
・自社の要件の実現を最優先とする企業
・複雑な要件や高度な機能を実現したいが、コストと導入スピードも重視する企業
・長期的に安定運用を実現したい企業
主な注意点 システムに業務を合わせる必要がある 導入/運用コストが膨らみやすく、運用が属人化しやすい カスタマイズが可能な範囲や追加費用の上限など、導入前に念入りに確認しておく必要がある

それでは、3つの導入方法を1つずつ見ていきましょう。

方法① パッケージソフトウェア

あらかじめ業界に特化した標準機能が搭載されている既製ソフトウェアを利用する方法です。高度な機能追加などの要件がなければ、低コスト・短期間で導入できます

しかし、鉄鋼業界や企業独自の複雑な商品情報管理や取引条件管理には対応できないケースもあり、その場合には、コストをかけて追加機能を実装するか、業務フローをシステムの仕様に合わせて変更するかといった判断が必要になります。

方法①は、標準機能で業務要件をカバーできる企業に適した方法です。

方法② フルスクラッチ開発

自社の業務フローや要件に合わせて、ゼロからシステムを開発する方法です。完全にオーダーメイドで構築できるため、鉄鋼業界特有の複雑な要件にも対応できます。

しかし、開発費用と開発期間が膨らみやすく、また導入後の運用/保守コストも継続的に発生します。

方法②は、要件の独自性が高い大規模企業にとっては有力な選択肢となりますが、中小規模の企業では費用対効果を得づらく、ハードルが高い方法です。

方法③ カスタマイズ可能なクラウドサービス

豊富な標準機能を備え、柔軟なカスタマイズも可能なクラウド型のサービスを利用する方法です。クラウドサービスなので、初期費用を抑えて導入でき、サービスは継続的にアップデートされるので常に最新の環境と機能を利用できる点が最大の魅力です。

比較的低コストで、常に最新状態のシステムを利用できるため、導入後も安定した運用を維持していくことができます。

方法③は、パッケージソフトウェアの導入のしやすさとフルスクラッチの柔軟性を兼ね備えているため、業界や企業独自の手続きやフローがある企業にとって最適な構築方法と言えます。

受発注システムはビジネス環境の変化に合わせて改修していく必要がある

受発注システムは導入後も、法改正や商習慣の変化などに合わせて、システムも継続的に進化させていく必要があります。

法規制の対応は避けられない

近年、インボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正など企業取引に関わる法令の改正が行われており、これらの変更に合わせて受発注システムも適宜改修していく必要があります

受発注システムをクラウドサービスで構築している場合には、サービスによっては、無償で法令対応が提供される場合もあるため、選定時に確認しておくと良いでしょう。

受発注システム導入時は、過去のサービスアップデート実績を確認することが重要

クラウドサービスを選定する際は、過去のサービスアップデートの実績も重要な判断基準の1つとなります。年間を通じてどれだけの頻度で改善・機能追加が行われているかを確認し、サービスの信頼性や将来性などを評価しましょう。

過去に定期的にアップデートを実施しているサービスであれば、今後も継続される可能性が高いため、安心して導入・運用することができます。

コストを抑えて最新の環境と機能を利用できるクラウドサービス

パッケージソフトウェア(方法①)やフルスクラッチ開発(方法②)で構築したシステムでは、最新状態を維持するための保守/改修作業は、基本的にすべて自社で対応していく必要があります。

一方、クラウドサービス(方法③)では、サービス全体に関わる保守/改修作業はサービス側が行います。例えば、システム運用で必要なハードウェアの維持・管理、セキュリティ対応、バグの修正、システム改修などのコストは月額費用に含まれているケースが多く、システム運用/保守に関わる社内コストを大幅に軽減できます。

受発注システムは事業の中核業務を支えるシステムです。そのため導入検討は、初期費用と保守/運用費用を総合的に見ても費用対効果の高い、クラウドサービスを利用して構築する方法(方法③)の検討から始めることをおすすめします。

BtoB向けECサイトを受注の窓口として運用する

受発注システムは、「BtoB向けECサイト(Web受注)」を受注の受付窓口とし、社内の基幹やERP、他の業務システムとデータをリアルタイムで連携し、受注・出荷業務を行えるように構築されているケースが多いです。

下図では、受発注業務を1つのシステムだけで完結させるのではなく、取引先とのやり取りを行うための「窓口」と、受注・在庫・出荷を管理する社内の他システムとの「データ連携」により、一連の受注・出荷業務が成立しています。

◆BtoB向けECサイトを窓口とした受発注・出荷の業務フロー(概要図)

BtoB-ECサイトによるWEB受注の仕組み

出典:筆者作成

BtoB向けECサイトを窓口とすることで取引先の発注業務を効率化でき、自社は他システムの在庫・出荷・請求データを共有して、受発注業務を行えるようになります。

導入実績が豊富なBtoB向けECプラットフォームで、難しいシステム連携もスムーズに実現!

BtoB向けECシステムには、以下の3つの要素が不可欠です。

◆ECシステムに不可欠な要素

・柔軟性
・拡張性
・最新性

複数のシステムを連携する場合にはシステムのカスタマイズが必要になるため、「柔軟性」と「拡張性」は不可欠な要素です。また、更新が頻繁に発生するECシステムでは「最新性」の維持も重要になります。

例えば、インターファクトリーが提供するクラウド型ECシステム「EBISUMART(エビスマート)」のように、安全性が担保された環境と最新機能が継続的に提供されるクラウドサービスを利用することで、運用の負荷を軽減しつつ、「柔軟性」「拡張性」「最新性」を備えたECシステムを構築できます。

EBISUMARTはフルカスタマイズが可能な中・大規模向けのECプラットフォームです。BtoB向けECサイトの構築と基幹システム連携の実績も豊富で、鉄鋼業界固有の機能要件にも柔軟に対応できます。

EBISUMARTの詳細は下記の公式サイトをご覧ください。

公式サイト:EBISUMART(エビスマート)

また、以下の公式ページではEBISUMARTのBtoB向け機能が詳しく分かる資料も配布(無料)していますので、ぜひダウンロードしてご確認ください

資料ダウンロード:EBISUMART│BtoB向けECサイト機能詳細

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。