データ連携とは、異なるシステムやツール間でデータを共有し、効率的にデータを管理・活用するための仕組みやプロセスのことで、異なるシステムで運用しているバラバラなデータを統合することで、データの「正確さ」と「一貫性」を維持できるようになります。また、最新のデータを効率的に利活用できるようになるため、業務プロセスの効率化とコスト削減にもつながります。
逆に言えば、部門や拠点ごとの個別システムがサイロ化している状態では、社内にバージョンの異なる同じデータが複数存在しがちで、データを使用した業務が煩雑化しやすく、また、手作業が増えて多くの時間を取られるため、処理速度や意思決定のスピードが鈍化し、貴重なビジネス機会をつかめなくなる可能性が高まります。
データ連携は、ビジネスを加速し、企業が市場競争力を確立・維持し続けるための鍵であると言えるでしょう。
また、ECで自社ECサイトだけでなく複数のECモールに出店するなどして多店舗展開をしている場合には、「PIM(Product Information Management:商品情報管理)」システムを導入することで、複数チャネルの商品に関するあらゆる情報を統合管理できるようになります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、ECでデータ連携を実現するための3種類の方法とデータ連携ツールの選定ポイントについて解説します。
データ連携事例:複数店舗の独自データを一元化し、正確なデータに基づく意思決定を可能に!
データ連携にはさまざまなメリットがありますが、異なる形式のデータをリアルタイムかつ一元管理できる点も大きなメリットの一つです。
例えば、飲食店のフランチャイズ事業を展開しているある企業では、複数のフランチャイズ店舗がそれぞれ独自の業務システムを導入し、売上情報や商品情報などのすべてのデータが店舗ごとに異なる項目や形式で運用されていました。そのため、本社スタッフは、月次の売上報告などの集計作業を手作業で行わなくてはならず、作業に時間がかかるうえ、誤まったデータが混在するなどのミスが多く発生しているような状態でした。
こうした状況はまずいと考えた同社は、各フランチャイズ店舗の業務システムをつなぐデータ連携システムの開発に取り掛かりました。リリースまでには数年かかりましたが、データ連携を実現した結果、全店舗の売上や商品情報などのデータをリアルタイムで管理できるようになり、データの一貫性と信頼性が劇的に向上しました。
同社は、データ連携によって業務の効率化とコスト削減に加え、経営判断を正確かつ迅速に行えるようになりました。
3種類のデータ連携
データ連携には以下の3種類の方法があります。
以下は、連携方法ごとの特徴(コスト、メリット/デメリット)をまとめた表です。
◆データ連携の3種類の方法とそれぞれの特徴(コスト、メリット/デメリット)
①API連携 | ②ファイル連携 | ③データベース(DB)連携 | |
---|---|---|---|
連携例 | ECシステムと在庫管理システムをAPIで連携し、ECサイトでも常に最新の在庫情報を表示・確認できるようにする | メーカーからCSVやExcel形式のデータファイルで提供される商品情報を、ECシステムのDBに取り込んで、ECサイトで利用する | 販売管理システムのDBのデータとERPシステムのDBのデータをひも付けて顧客情報と受注履歴を統合し、CRM活動や分析に使用する |
コスト | APIの利用料金や開発コストと、アップデート対応などの運用保守コストが発生。他の方法と比べて、低コストで実装・運用できる | インポート機能の利用料金や開発コストと、ファイル授受用のファイルサーバの実装・運用コストが発生。比較的低コストで導入できるが、ファイルサーバの運用保守コストが必要になる | 実装コストに加え、サーバ間の通信が発生するためネットワーク環境の構築・運用コストが発生。サーバ環境により異なるが、実装・運用保守ともにかなり高コスト |
メリット | ・データの送受信は標準のデータ形式とプロトコル(HTTP/HTTPS、JSON、XMLなど)で行う
・OSやプログラミング言語の異なるシステム間の連携も容易で、柔軟性と拡張性に優れている ・リアルタイム連携が可能なため、常に最新情報を利用できる |
・FTP/SFTPでファイルを転送する
・指定のデータファイル形式であれば、手作業で作成したデータファイルも取り込めるため、汎用性が高い ・仕様と運用がシンプル ・連携元はデータをファイルに出力するできればよいため導入時の負担が小さい |
・大量のデータを効率的に処理できる
・最新情報を常にタイムラグなしで利用できる |
デメリット | ・APIに障害が発生すると連携システム全体に影響が及ぶ可能性がある
・定期的なアップデートやメンテナンスが必要 |
・バッチ処理でファイルを取り込むため、リアルタイム性が求められるシステムでは使用できない
・バッチ処理が使用できない場合は、ファイルの取り込みを手動で実行する必要がある |
・セキュアな通信の確立と維持に莫大なコストがかかる可能性がある(VPNや専用回線での通信が必要な場合など) |
Webサービスやアプリ開発では、①の「API連携」によるデータ連携が現在の主流となっています。なぜならば、開発コストを圧倒的に低く抑えられるからです。
例えば、「ログイン認証」機能を実装したい場合には、ゼロから開発するのではなく、SaaSのログイン認証サービスを使ってAPIでデータ連携することで、コストを抑えて簡単に実装できます。
またAPI連携はリアルタイムでデータを共有できるため、ECシステムと在庫管理システムのデータ連携でもよく利用されます。
②の「ファイル連携」は古くから使用されている連携方法で、FTP/SFTPでファイル転送を行います。連携元のシステム変更を最小限に留めることができ、低コストで実装できる点が魅力です。ファイル連携はバッチ処理となるため、リアルタイム性が求められる場合には使用できません。連携元システムがAPI連携に対応できない場合などに使用される場合が多いです。
③の「データベース(DB)連携」は、社内の異なるシステムのデータベース内のデータをひも付けてデータ統合します。データベース連携の優れている点は、常に最新データをタイムラグなしで利用できる点と大量のデータを効率的に処理できる点です。一方で、機能の実装とセキュアな通信環境を確立・維持するために、莫大な開発コストと・運用保守コストが必要になるため、APIに対応できないレガシーシステムやオンプレミスの独自システムなどで使用される場合がほとんどです。
低コストかつ多くのメリットを持つ①のAPI連携は、多くのケースで優れた方法ではありますが、連携元のシステムがAPI連携に対応できない場合には利用することができないため注意する必要があります。
データ連携を実装する場合には、連携目的、連携対象のシステムおよびデータ、運用保守を含めたコスト、実現可能なセキュリティなどを十分に検討したうえで、最適な方法を選択しましょう。
データ連携の5つの連携例
ここでは、データ連携の理解をさらに深めるために、3種類のデータ連携による5つの連携例を紹介します。
① [API連携] 自社ECサイトとECモール店舗で商品マスタを共有
API連携で、ECモール店舗の一部のデータを自社ECサイトでも使用することができます。例えば、ECモール店舗の商品マスタのデータを、自社ECサイトの商品マスタにリアルタイムで反映させることが可能になります。
商品マスタを共有することで、自社ECサイトとECモール店舗で同じ最新情報を掲載できるようになります。「同一商品なのにチャネルによって掲載されている情報が違う」というようなユーザーに不安を与える状況を排除することで、ブランドの信用を棄損するリスクを低減します。
② [API連携] ECシステムに実店舗のPOSデータを取り込む
実店舗のPOSでは以下のような項目を管理しています。
◆POSのデータ項目(例)
・購入店舗
・購入個数
・購入商品の名前
・購入商品の価格
・購入者の性別
・購入者の年齢層
例えば、ECシステムに実店舗のPOSデータを連携することで、在庫情報の一元管理がしやすくなります。また、販売チャネルごとの顧客の購買履歴も統合されるため、チャネルをまたいだ顧客の購買傾向を分析できるようになり、データ駆動の高精度なマーケティング活動やプロモーションの企画と実行が可能になります。
また、顧客データを一元管理することで、ECサイトで注文した商品の実店舗での受け取りサービスなどのオムニチャネルも実現できるようになります。ユーザーの利便性と満足度を高めるサービスを提供し、リピート購入や新規購入の機会を増やすことで、売上向上も期待できます。
③ [ファイル連携] 受発注業務でやり取りされるデータを自社の販売管理システムに取り込んで利用する
受発注業務ではCSVやExcelでデータをやり取りすることも少なくありません。例えば、取引先に商品の在庫情報や注文情報などをCSV形式のデータファイルで提供してもらい、自社の販売管理システムに取り込んで利用することで、業務を効率化できます。
ファイル連携では、FTP/SFTPでファイルの送受信を行います。ファイルの取り込みは、バッチの自動実行か手動実行による定期処理となるため、リアルタイム性は低くなりますが、コストを抑えてシンプルにデータ連携を実装・運用できます。
データ連携のプロセスに手作業が含まれる場合、汎用性が高まる面もあるものの、作業が煩雑化しやすく、ヒューマンエラーのリスクも高まります。そのため、データ連携の運用は、すべてのプロセスを自動化することを前提とし、手作業は最小限となるように設計しましょう。
④ [DB連携] ERPシステムと会計システムを連携する
大企業のERP(Enterprise Resource Planning)システムや財務会計システムなどの基幹システムのように、インターネット接続を行わないシステム間のデータ連携では、DB(データベース)連携が選択される場合が多いです。
例えば、ERPシステムと財務会計システムを連携させることで、財務報告や経理業務を効率化できます。また、最新の財務情報をいつでも確認できますから、データに基づいて、高精度かつ迅速な意思決定を行えるようになります。
データベース連携はサーバー間での通信が発生するため、セキュアなネットワーク環境の構築が必要になります。開発コストはデータベース連携の実装方法によっても異なりますが、いずれにしても非常に莫大なコストと労力がかかります。
⑤ [API連携+ファイル連携] PIMを使って商品に関連するあらゆる情報を一元管理する
PIM(Product Information Management)は、商品情報を統合管理するためのシステムあるいは手法です。
例えば、自社ECサイトとECモール店舗(楽天市場、Amazon、Qoo10など)というように複数の販売チャネルを運営している場合には、各販売チャネルで商品情報を登録・管理しなければならず、店舗が増えるたびにデータ作業の負荷も増大します。
PIMを導入すると、すべての販売チャネルの商品情報を統合管理できるようになります。
◆PIMによるデータの一元化のイメージ
出典(画像):筆者作成
PIMは、さまざまな販売チャネルとの連携を前提としているため、例えば下記のように、連携元によって異なる方法でデータを連携することができます。
◆販売チャネルごとに異なるデータ連携方法(例)
・PIMと、実店舗、代理店は[ファイル連携]
インターファクトリーの「ebisu PIM(エビス ピム)」は、方法の異なる複数のシステムおよびサービスとのデータ連携を得意とするしているSaaS型のPIMシステムです。データ連携に興味のある方は、ぜひ公式ホームページで資料請求をして、詳細をご確認ください。
データ連携ツール選定時の5つのポイント
データ連携ツールの導入で失敗しないためには、しっかりとした計画を立てることが大切です。ここでは、データ連携ツールを選定する際の5つのポイントを紹介します。
ポイント① データ連携の目的を明確にする
最初に、データ連携の目的、「なぜデータ連携が必要なのか」を明確にしましょう。
◆データ連携の目的(例)
・データ統合
・業務プロセスの自動化
データ連携で得たい効果を具体的に挙げて実現の優先度を検討したうえで、目的として設定します。目的を明確にしておかないと、さまざまな選択の場面で迷いが生じたり、重要ではないことにとらわれたりして、適切な判断ができなくなってしまうからです。
ポイント② なるべくコストを抑える方法を選択する
データ連携には3種類の方法(API連携、ファイル連携、データベース連携)があり、例えば、現在主流となっているAPI連携であれば、コストを抑えてさまざまなメリットを享受できますが、API連携に対応していないシステムでは使用できません。
そのため、データ連携ツールは、API連携だけでなくファイル連携にも対応できるツールを選択すべきです。また、データベース連携を実装する場合には、予算とリソースの両方を十分に確保しておく必要があります。
ポイント③ さまざまなシステムと連携できる
標準機能で多くのシステムと連携可能なツールを選定することで、導入までの期間を短縮でき、開発コストや保守運用コストを抑えることができます。
例えば、SaaSでは標準機能の連携対象が順次拡大されていくサービスが多いです。多店舗展開が順調であれば、必然的に連携システムが増えてきますから、ツールの拡張性は大切です。
販売チャネルが増えることで、より多くの顧客にアプローチできる機会も増加します。
ポイント④ データ項目の追加やデータ変換に柔軟に対応できる
データ連携ツールによっては、データ項目に制限があったり、必要なデータ項目を追加できなかったりする場合があるため、あらかじめ制限の有無を確認したうえで、柔軟性の高いデータ連携ツールを選定することが重要です。
例えば、管理画面からノーコードで、データ変換やマッピング設定が行えるかどうかを確認しましょう。インターファクトリーの「ebisu PIM(エビス ピム)」なら、連携元と連携先の商品コードの仕様が違っていた場合、管理画面からノーコードで簡単に変換することができます。
◆商品コードのデータ変換のイメージ
↓↓↓↓
連携先の商品コード:ITEM_AAA
ポイント⑤ 充実した導入支援/サポートメニューが提供されている
データ統合は社内の多くの部門が関係するため、大規模かつ極めて難しいプロジェクトです。通常業務を止めるわけにはいきませんから、導入検討から運用までのステップを速やかに推進していかなければなりません。そのためには、ベンダーの導入支援/サポートメニューの有無と内容が非常に重要になります。
特に大量のデータを連携する場合やデータ変換が必要な場合には、ツール選定時に導入支援/サポートメニューの有無と内容についても十分に調査しておきましょう。また、データのインポート作業も労力がかかるプロセスなので、導入支援のメニューに含まれているかどうかを必ず確認しましょう。
「PIM」を導入することで、どんなデータも統合できる
データ連携ツールとして「PIM(Product Information Management)」を導入することで、どんなデータも統合できるようになります。PIMは、企業のあらゆる商品情報を統合して一元管理するためのシステムで、画像や動画などさまざまな形式のデータを保管できます。また、PIMは自社ECサイト、ECモールともAPIで簡単に連携することができますし、ファイル連携とデータベース連携にも対応しています。
複数の部門やチャネルで同じ情報を取り扱っていると、データの更新状況にずれが生じ、正しい最新情報がどれかが誰にも分からない状況に陥る可能性があります。PIMでデータを一元管理することで、各部門やチャネルが保持している商品情報、画像、仕様書、マーケティング情報、在庫情報などのすべてのデータは、常に最新かつ正確な状態で管理されるため、データの一貫性を確保・維持できるようになります。
まとめ
データ連携の真の目的は、すぐに成果が得られる自動化や効率化ではなく、データを活用してビジネスの意思決定を加速し、市場競争力を高めることにあると筆者は考えています。つまり、データ連携はビジネスを加速し、企業が市場競争力を確立・維持し続けるための鍵と言えるでしょう。自社に最適なデータ連携の方法とツールをしっかり見極めて、データ連携を成功させましょう。
インターファクトリーが提供している「ebisu PIM(エビス ピム)」は、詳細な設定を行うことができ、高い柔軟性を備えたSaaS型のPIMシステムで、API連携、ファイル連携はもちろん、さまざまなシステムやサービスとの連携にも対応しています。
データ連携をご検討中の方は、ぜひ下記の公式サイトで資料請求をして、詳細をご確認ください。