ECサイトを開設する人のための宅配便大手3社のまとめ


個人事業主や小規模事業者が新たにEC事業を始める際に、商品の企画、プラットフォームの選定と並んで重要なのが、宅配事業者の選定です。

「商取引でどのような宅配サービス、宅配事業者を選べばよいのか」というのは、新規事業ではありがちで、なかなか難しい悩みです。

現在、国内で宅配便大手と言われる企業3社を見ても、小型郵便などを含めた多様なサービスが提供されています配送料金の設定も宅配事業者ごとに異なり、また配送エリアやサイズ、厚さや重量などによって複雑に変動します。

まずは大まかに宅配便大手3社の特徴を押さえていきましょう。

・ヤマト運輸は地域密着の細やかなサービスが豊富
・佐川急便は大型荷物であれば「飛脚ラージサイズ宅配便」が安い
・日本郵便は小型郵便を対象としたサービスが充実

これらの特徴を踏まえた上で、取り扱う商品の特性やサイズに合った、宅配事業者とサービスを検討しましょう。

今回は、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者がおすすめする、EC事業における宅配事業者の選び方について紹介します。

ECサイト開設時に検討すべき宅配事業者は大手3社

ECサイトを開設した直後は受注数も少ないため自社で出荷準備をし、配送を宅配事業者に依頼するというケースが多いでしょう。宅配事業者は、コスト、エリア、配送品質を考慮すると3社に絞られます。いずれも日本を代表する大規模企業です。

◆国内の宅配便大手3社

各社が提供するサービスの中から、取り扱う商品の特性と配送品質との相性を見て、最も合った宅配サービスを選ぶべきですが、小規模事業者の場合には、「送料を安く抑えることができる」という点も極めて重要になります。

特に昨今は、円安や輸送燃料費の高騰により、運送各社の価格改定ラッシュに歯止めがかかっていないのが現状です。今後EC事業者にとっては「送料」こそが売上のボトルネックになってくるため、宅配事業者の選定は慎重に行う必要があります。

そこで、ECサイトで取り扱う商品サイズとして比較的多いのではないかと思われる60サイズに限定し、3社の料金を比較してみましょう。赤字が3社中の最安値を示しています。

◆宅配便大手3社の料金比較:60サイズ(関東(東京)からの配送を依頼した場合)
宅配3社運賃比較(60サイズ)
※佐川急便で沖縄へ配送する場合、一部離島へのお届けをご希望の場合には中継料が別途加算されますので、詳しくは担当営業所へお問い合わせください
※日本郵便の東京都内への配送料は¥820

出典:「宅急便運賃一覧表:関東(ヤマト運輸)」、「関東発 宅配(陸・航空)料金表:通常配達(佐川急便)」、「基本運賃表(東京)(日本郵便)」より筆者作成

上表を見ると、日本郵便は他社と比べて低料金であることが分かります。このため梱包後、60サイズに収まる商品を配送する場合は、日本郵便が有力な選択肢となります。

一方、取り扱う商品が家電や家具などで100サイズ程度となる場合には、配送地域によって佐川急便が他社と比べて低料金となります。北海道・中国地方・九州への配送は佐川急便が最安値となっているため、配送エリアごとに使い分けることも検討してみましょう。

◆宅配便大手3社の料金比較:100サイズ(関東(東京)からの配送を依頼した場合)
宅配3社運賃比較(100サイズ)
※佐川急便で沖縄へ配送する場合、一部離島へのお届けをご希望の場合には中継料が別途加算されますので、詳しくは担当営業所へお問い合わせください
※日本郵便の東京都内への配送料は¥1,450

出典:「宅急便運賃一覧表:関東(ヤマト運輸)」、「関東発 宅配(陸・航空)料金表:通常配達(佐川急便)」、「基本運賃表(東京)(日本郵便)」より筆者作成

上記以外にも、例えば佐川急便の「飛脚ラージサイズ宅配便」など、大きい荷物を送ることができるサービスもあります。大型商品の配送が必要となる場合には各社のサービスを確認しておきましょう。

また、3社中では配送料が高いヤマト便ですが、クロネコメンバーであれば配送料が10〜15%割引になる「クロネコメンバー割」や、指定の発送方法で送り状を作成すると、荷物1個につき60円割引になる「デジタル割」などといった割引サービスを提供しているので、単に一般配送料だけで比較せず、各社のサービスを比較検討してみましょう。

参考:飛脚ラージサイズ宅配便(佐川急便)お得な割引・サービス(ヤマト運輸)

宅配便大手3社の特徴

宅配便大手3社の特徴を詳しく見ていきましょう。

拠点が多く、細やかなサービスを提供するヤマト運輸

「クロネコヤマトの宅急便」で有名なヤマト運輸は、日本全国に3,765の営業拠点(2023年3月31日時点)を擁し、地域に密着した宅配サービスを提供しています。主な特徴は以下となります。

◆ヤマト運輸の特徴

・営業拠点数が多い
・当日、翌日配達のサービスがある(条件あり)
・クール宅急便をはじめ、多彩な配送サービスがある
・送り状サービスなど配送手続きなどでも便利なサービスを用意している
・個人/法人のそれぞれに多様なサービスを展開している
・LINEとクロネコメンバーズを連携することで配送予定や不在連絡の通知を受け取ることができる

拠点を細分化して地域に密着したサービスを展開している点がヤマト運輸の最大の特徴です。一人のドライバーが担当するエリアを限定し、素早く対応できる体制が整備されている印象です。集荷時間も柔軟に対応してくれることが多く、幅広いサービスを提供しています。他社と比べると配送料金は少し高めですが、サービス品質に定評があるためヤマト運輸を選ぶ事業者も多いでしょう。

ヤマト運輸では、2020年に小さいサイズの荷物をポスト投函できるサービス「ネコポス」を開始し、需要が高まっているオンライン個人間取引などにおけるユーザーの利便性向上にも努めています。ビジネス契約をしている法人・個人事業主も利用できるため、EC事業者にとっても魅力的な宅配サービスです。

参考:ネコポス(ヤマト運輸)、「ヤマト運輸『ネコポス』サイズを3.0cm以内に拡大へ」(ECのミカタ)(2020年9月9日掲載)

大型荷物の配送料金がお得な佐川急便

ヤマト運輸に続く宅配便大手の佐川急便の主な特徴は以下となります。

◆佐川急便の特徴

・当日、翌日配達のサービスがある(条件あり)
・大型の荷物の配送には「飛脚ラージサイズ宅配便」が安い
・「佐川急便公式アプリ」で配送状況を確認できる

営業拠点数は427拠点(2024年5月31日時点)で、ヤマト運輸、日本郵便と比べてしまうと多くはありませんが、ヤマト運輸と同様に高品質の配送サービスを提供しています。

これまでは、60サイズの料金は3社中最安値でしたが、ここ数年の度々の価格改定の結果、その座を日本郵便に明け渡すことになり、配送会社を検討し直すことになった小規模EC事業者も多いのではないでしょうか。

しかし、100サイズと大きな荷物になってくると、配送地域によっては佐川急便が最安値であり、さらに140サイズを超えたり、重量のある大型荷物であれば「飛脚ラージサイズ宅配便」が安く、最有力の選択肢になるでしょう。

また佐川急便では、2021年7月より個人宅以外でも非対面・非接触配達を希望できるサービスを開始するなど、コロナ禍以降の法人顧客ニーズにも迅速に対応しています。

参考:「佐川急便/企業あての荷物受取にも非対面・非接触配達拡張」(物流ニュースLNEWS)(2021年7月7日掲載)

小型郵便に強い日本郵便

日本郵便の営業拠点として、日本全国には23,521局(2024年4月30日時点)の郵便局があります。日本郵便の主な特徴は以下になります。

◆日本郵便の特徴

・営業拠点数がダントツで多く、日本全国の郵便局で発送や荷物の受け取りができる
・当日配達のサービスがある(条件あり)
・60サイズの配送料金が比較的安価
・「ゆうメール」「ゆうパック」など、小型郵便を対象としたサービスが充実している
・LINEで配送状況の確認や不在連絡の通知を受け取ることができる

日本郵便は、特に小型郵便サービスの種類が豊富で、「レターパック」など便利なサービスを展開しています。また60サイズの配送料金では、日本郵便が安くなります

持ち込みの場合には料金が安くなる!

集荷サービスは3社とも無料なので、出荷数が多い場合は集荷サービスを利用しましょう。各社いずれも持ち込み割引サービスも提供しているため、ECサイトを立ち上げたばかりで出荷数が少ない場合には、送料を抑えるために持ち込みを検討するとよいでしょう。

◆宅配便大手3社の持ち込み割引料金(全顧客向け、荷物1個あたりの料金)

・ヤマト運輸 100円(クロネコメンバーズは150円)
・佐川急便  100円
・日本郵便  120円

小型郵便を積極的に使う

もし、ECサイトの商品が小型郵便で済む場合には送料を抑えて送ることができます。下記は宅配便大手3社の主な小型郵便サービスをまとめた表です。

◆小型郵便一覧

小型郵便一覧(2024.6)

出典:「第一種郵便物 手紙(日本郵便)」、「クリックポスト(日本郵便)」「ゆうメール(日本郵便)」、「クロネコゆうパケット(ヤマト運輸)」、「宅急便コンパクト(ヤマト運輸)」、「クロネコゆうメール(ヤマト運輸)」、「飛脚メール便(佐川急便)」より筆者作成

上の表からも分かる通り、サービスごとに対応している荷物のサイズや内容物、専用ボックスの使用などの条件があるため、取り扱う商品の特性や営業所が最寄りにあるかどうかなども考慮した上で、利用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

出荷業務は数量によって自社対応か業務委託かを検討

1日に100件以上の出荷がある場合には、自社で梱包等の出荷業務を担うのはとても大変な作業となります。出荷数が増えた際には外部委託するなどの検討が必要ですが、これからECサイトを開設する小規模事業者の方は、最初は自社で対応することになるでしょう。

各社の宅配サービス・料金は適宜更新されるため、検討の際は公式サイトをチェックしたり各営業所に問い合わせたりして、必ず最新情報を確認するようにしましょう。

参考:宅配便大手3社の公式サイト

ヤマト運輸株式会社

佐川急便株式会社(SGホールディングスグループ)

日本郵便株式会社


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。