「産直EC」は「産地直送EC(電子商取引)」の略称で、農産物などの商品を生産者が消費者に直接販売するオンライン取引のビジネスモデルです。
生産者が産直ECを始めるには、主に以下の3つの方法があります。
◆産直ECを始める3つの方法
② 食べチョクなどの産直専門ECモールを利用する
③ 自社ECサイトを開設する
3つすべての方法でEC運営を行うことも可能です。各方法それぞれに異なるメリットがあるので、目的に合った方法で産直ECを始めてみましょう。
産直ECに新規参入するのであれば、「楽天市場」などのユーザー数の多い総合ECモールに出店してランキング上位を目指すことで、全国規模の知名度を得られる可能性があります。また、すでに知名度のあるブランドであれば、自社ECサイトを開設して、運用コストを抑えつつファンマーケティングやブランディングを強化していくのも良いでしょう。
この記事ではインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、「産直EC」について事例を紹介しながら解説します。
産直ECプラットフォームの各社比較
以下は、産直ECの代表的なプラットフォームをまとめた表です。
◆代表的な産直EC(総合ECモール、産直専門ECモール、自社EC)
サービス名称 | 方法 | 初期費用 | 月額費用 | その他手数料等 | 月間訪問者※ |
楽天市場 | 総合ECモール | 60,000円 | 25,000円~ | 2~7% | 1,800万 |
食べチョク | 産直専門ECモール | 無料 | 無料 | 8~18% | 50万 |
ポケットマルシェ | 産直専門ECモール | 無料 | 無料 | 23% | 25万 |
BASE | 自社ECサイト (無料プラン) |
無料 | 無料 | 6.6%+40円 | 自社次第 |
STORES | 自社ECサイト (無料プラン) |
無料 | 無料 | 5.5% | 自社次第 |
※月間訪問者は、SEOツール「Ubersuggest(ウーバーサジェスト)」にて筆者が独自に調査
楽天市場は、日本国内シェアをAmazonと二分する巨大プラットフォームで、米、果物、魚介類など、多くの産直商品が販売されています。
◆楽天市場の商品一覧
引用(画像):楽天市場
楽天市場は出店費用が高い分、集客力が抜群のプラットフォームで、魅力的な商品画像を掲載し、楽天市場の中での露出を高める工夫を施すことで、大きな売上が期待できます。また、楽天市場のランキング上位に入ると、ブランドの知名度が一気に高まります。
当然、ライバルも多く出店しているため、楽天市場内で効果的なマーケティング活動を行わなければ、自社の商品や情報は埋もれてしまうことになります。どんなに集客力が強力なサービスでも出店しただけで商品が売れることはありませんから、楽天市場のECコンサルタント(ECC)に協力してもらいながら、モール内での露出を高める工夫を重ねていく必要があります。
産直専門ECモールの「食べチョク」と「ポケットマルシェ」はシンプルな料金体系も魅力の一つですが、筆者が調べたところでは、「ポケットマルシェ」より「食べチョク」のほうが、集客力が高く手数料も安いため、特にこだわりがなければ、最初は、食べチョクを利用してみると良いかもしれません。
◆「食べチョク」(左)と「ポケットマルシェ」(右)
ポケットマルシェのメリットは、ダイレクトメッセージの送信機能があることで、ダイレクトアプローチなどのリピーター施策を実施しやすい点です。そのため、ユーザーとのコミュニケーションを積極的に図りたい場合には、ポケットマルシェを利用すると良いでしょう。
もし予算や体制に余裕があるようであれば、運用コストは2倍になりますが、両方のサービスを利用して産直ECをマルチチャネルで展開するという方法もあります。
コストを抑えて手軽に産直ECを始めたい場合は、「BASE」や「STORES」のようなECサービスの無料プランを利用して「自社ECサイト」を開設しましょう。新たに自社ECサイトを開設した場合はサイトの集客力はゼロの状態なので、チラシやメルマガ、公式サイト、広告などを活用してECサイトの存在を知ってもらう必要があります。
以下は、産直ECの目的ごとに適したプラットフォームサービスをまとめた表です。プラットフォームサービスを選定する際の参考にしてみてください。
◆産直ECの目的ごとに適したプラットフォームサービス
産直ECの目的 | 適したプラットフォーム |
積極的にマーケティングを実施して、知名度を上げたい | 楽天市場 |
有名なプラットフォームに出店したい | 食べチョク、ポケットマルシェ |
費用を抑えて、リピーターをメインターゲットとする産直ECを運営したい | BASE、STORES |
当然、低予算のプラットフォームの場合には、自分たちで知名度を高める工夫が必要となります。自社の目的を明確にしたうえで、適したプラットフォームを選定するようにしましょう。
産直ECの5つのポイント
産直ECで売上を高めるために押さえておきたいポイントは次の5つです。
◆産直ECの5つのポイント
ポイント② 魅力的な商品ページを作成する
ポイント③ 商品の口コミを広める施策
ポイント④ SNSやメルマガを利用したリピート施策
ポイント⑤ 実店舗とECの連動施策
5つのポイントを一つずつ解説します。
ポイント① 特徴が伝わりやすい商品名を付ける
新規ユーザーにとって、商品の知名度と評価は非常に重要な要素です。そのため、これからECを始めるのであれば、覚えやすい商品名を付けて販売することをおすすめします。
名前を決める際は、ChatGPTなどのAIの提案を参考にするのも良いでしょう。
◆ChatGPTに「千葉産のジュース用ミカン」の商品名を提案してもらった結果
【プロンプト】(ChatGPTへの命令)
弊社は、千葉でミカンを作っています。ジュースにすると新鮮でおいしいミカンです。このミカンをECサイトで販売したいのですが、何か良いブランド名はありませんか?10個ほど考えてほしいです。
【アウトプット】(ChatGPTの出力結果)
もちろんです!千葉の新鮮でおいしいミカンをアピールするブランド名をいくつか考えました。以下の名前はいかがでしょうか?
- 千葉フレッシュミカン
- サンシャイン千葉
- 千葉みかんジュース
- ちばみかんの恵み
- オレンジエクセレンス千葉
- 千葉サンセットミカン
- ちばフレッシュジュース
- 千葉の太陽の実
- ちばみかん農園
- 千葉ゴールドオレンジ
どれか気に入ったものがあれば、さらに詳しいブランディングをお手伝いします!
さらに、「ひらがな(カタカナ)で」「4文字で」「子どもも覚えやすい名前」というような細かい条件やニュアンスをプロンプトで指示することで、回答をよりブラッシュアップしていきましょう。
「名前のアイデアが浮かばない!」という場合でも、AIを使えば多くの選択肢の中から名前を決めることができます。心強い助っ人ですね。
ポイント② 魅力的な商品ページを作成する
ECサイトでは、ユーザーに商品の魅力をいかに伝えられるかが重要になります。以下の3つのステップで魅力的な商品ページを作成しましょう。
◆魅力的な商品ページを作成する3つのステップ
② Webページを外注するWeb制作会社を選定する
③ 自社の魅力や訴求したい項目をまとめた資料と、ステップ①で見つけた商品ページをイメージサンプルとして用意し、ステップ②の制作会社にWebページ(LP)の作成を依頼する
上の3つのステップでWebページを作成することで、ある程度魅力的な商品ページを作成することができます。特に、これから産直ECサイトを開設する場合は、Webやデザインになじみのない方も多いと思います。無理して時間をかけて簡素な商品ページを作るより、費用をかけてでも外注して魅力的な商品ページを作ってECサイトをリリースしたほうが、ブランドイメージを損ねる心配がありません。
ステップ②の外注先選定では、産直ECで利用するプラットフォーム向けのコンテンツの作成実績が豊富な制作会社を選ぶようにしましょう。例えば楽天市場に出店するのであれば、楽天市場のWebコンテンツ作成を得意としている制作会社に依頼すると良いでしょう。また、特にECの食品販売では、写真や文章を魅力的に見せるための独特なコツやノウハウがありますから、食品関連のWebコンテンツ作成実績もある制作会社であればより安心ですね。
ポイント③ 商品の口コミを広める施策
口コミは極めて強力な集客ツールです。当然、商品自体が魅力的であることも大切ですが、以下のような施策を打つことで、自社商品の魅力を口コミと評判を通して拡散していきましょう。
◆口コミ施策
② 実店舗では試飲や試食を積極的に行う
③ ECサイトで、ギフト注文に対応できるようにする
③のギフト注文は、ブランドや商品を知らない人に商品を利用してもらえる絶好の機会となります。ギフトで受け取った商品を気に入った人が、次は自分で購入したり、知り合いに紹介したりしてくれる可能性が生まれます。
ユーザー層を全国に広げるきっかけにもなるギフト注文は、産直ECでもぜひ対応していくべきでしょう。
ポイント④ SNSやメルマガを利用したリピート施策
産直ECで販売する商品には「旬」があり、例えば「サクランボ」は、毎年5月~7月上旬頃に販売されます。産直ECで一度サクランボを購入したユーザーが、翌年も必ずまた購入してくれるかというと、そう簡単にはいきません。
年に一回購入しただけだと、ユーザー自身がいつ、どのお店で購入したかということを忘れてしまう可能性もあるからです。それを防ぐためにも、ユーザーに向けて商品情報を積極的に発信していく必要があります。例えば、旬の商品を紹介する記事や出荷情報などをSNSやメルマガで配信するなどしてリピート購入を促進しましょう。SNSの施策では「バズ」などの華やかな施策に目が行きがちですが、すべてのユーザーにフォローしてもらうだけでも十分に価値を引き出すことができます。
例えば、SNSアカウントのQRコードを掲載したリーフレットやフォローを促すメッセージを商品に同梱するなどしてフォロワーを増やしていきましょう。
以下は、山梨県の果樹農園「クボタフルーツ」のInstagramの公式アカウントの画面で、フォロワー数は1.3万人(2024年8月現在)にのぼっています。
そもそも、画像による視覚への訴求効果が高い食品は、Instagramとの相性が良い商材ですから、画像をメインにした情報を定期的に配信するなど、丁寧なSNS運用を行うことで、フォロワー数を増やしていくことができるでしょう。
◆「クボタフルーツ」のInstagram投稿
ポイント⑤ 実店舗とECの連動施策
産直ECでは、実店舗との連動施策を効果的に行うことができます。
例えば、ECサイトの利用者には商品に店舗のチラシを同梱しておくと、旅行のついでにお店に足を運んでくれるユーザーは、直接顔を合わせて対話することで、より一層エンゲージメントが高まり、熱心なファンとなってくれるでしょう。
また、実店舗のユーザーにもECサイトの存在をアピールし、いつでもどこでも商品を購入できることを知ってもらいましょう。
このように、実店舗とECサイトにおける相互送客の取り組みは、特別な仕組みがなくても工夫次第ですぐに始めることができます。
良質なコミュニケーションこそが最高のマーケティング
規模の小さい事業者にとっては、ユーザーとの良質なコミュニケーションを増やすことが最高のマーケティングになります。「ECサイトは顔が見えない」と言われますが、実はコミュニケーションを図る機会はたくさんあります。
◆ECサイト顧客接点の例
・LINEの公式アカウントでのコミュニケーション
・SNSでのコミュニケーション
・電話問い合わせでのコミュニケーション
自社のすべての顧客接点で、丁寧かつ一貫性のあるコミュニケーションを図っていくことで、ファンを育成・増大していきましょう。
ECモール店舗でランキング上位に入るようになったら、自社ECサイトの開設を検討しよう
もし、楽天市場などのECモール店舗で自社商品がランキング上位に入るようになったら、注文数が急激に増えて業務負荷が一気に高まる可能性があります。
他システム連携などによってバックエンド業務を効率化するためにも、カスタマイズが可能なクラウドECプラットフォームで自社ECサイトを開設することをおすすめします。産直ECの豊富な構築実績をもつ「ebisumart(エビスマート)」は、さまざまな企業のEC運営を支援しています。サポートサービスも充実しているので、これからECを始める方でも安心してECサイトを開設することができるでしょう。
ebisumartの詳細については下記の公式サイトをご覧のうえ、お気軽にご相談ください。
公式サイト:「ebisumart(エビスマート)」